第101話
思考していると、ドアが開く音がする共に都が家から出てくると、階段を降りてきた。
「優斗、お待たせ!」
「別に待ってないが、妹は、まだ寝ているのか?」
「うん。熟睡しているみたい」
「そっか」
「それで、どうやって業務用スーパーまで行くの?」
「決まっているだろ? 公共交通機関を使うんだよ」
「車を出そうか?」
「別にいいだろ」
「そうだね」
公団の敷地から出たあと、旧東金街道から千葉駅行きのバスに乗る。
「今日は空いているね」
「空いているというか、夕方前に駅に向かう社会人とか学生はいないからな」
「だよね」
都と、バスの中で会話しているとバスは、千葉都市モノレール沿いの千葉市中央公園前に停まる。
俺達は料金を支払いバスから降りたあと、業務用スーパーへと向かう。
「ねえ。優斗」
「どうした?」
「そういえば、業務用スーパーの上の階には猫カフェが入っているんだって!」
「猫かー」
「猫って苦手だったけ?」
「苦手というか、猫が俺を苦手としているというか」
「何それ?」
「優斗って、どっちかと言うと、動物に好かれる感じだったよね?」
「そうだな……」
まぁ、だからこそ、今の俺には動物は寄ってこないと思うのがな……。
「なんだか気乗りしない感じ?」
「気乗りしないというか、まぁ、猫カフェに行くのは今度でいいんじゃないのか?」
「……そうね。わかった」
少しだけ落胆させてしまったのは、都から感じる雰囲気で何となくだが察しがついた。
ただ、犬猫のような気配に敏感な動物は俺みたいな『化け物』の気配を強く感じるからなのかパニックになることが異世界でもあった。
だから、あまりそういう所には関わるような事はしない。
業務用スーパーに到着したあとは、安物の冷凍野菜やうどんに、卵に肉などを買い込んでいく。
もちろんカートに載せているから問題ないが……。
「優斗、こんなに載せて大丈夫なの?」
「ああ。問題ない」
「そうじゃなくて、二人で持てるかなって……」
「大丈夫だ。問題ない」
さらに10キロのお米を二つ、カートに載せる。
おそらく総重量は30キロを優に超えているだろう。
だが、俺にしてみれば、その程度は重さの内には入らない。
「えっと、それでは8244円になります」
「1万円で」
「――それでは、お釣りは1756円になります」
支払いが済んだあと、『ご自由にお使いください』と置いてあった段ボール箱に食材を詰めていき、10キロのお米を二つ片手で持ちあげたあと、もう片方の手で段ボール箱を持ち上げて、それぞれ肩の上に担ぐ。
「――あれ? 私の分は?」
「大丈夫だ。何の問題もない。この程度なら一人で持てる」
「ええっ!? 私の来た意味は!?」
「まぁ、別にいいんじゃないのか?」
「優斗、お米の袋一個くらいは持てるよ?」
「まぁ力仕事は男に任せておけ」
異世界でも、討伐した総重量10トン以上のドラゴンを引き摺って町のギルドまで運んだ実績があるからな。
30キロ程度の重さなぞ、無いのと同じ。
業務用スーパーの入り口から出たあとは、東千葉の方へ向けて歩く。
「あれ? 優斗。バスは使わないの?」
「ああ。これだけの荷物だと迷惑が掛かるからな」
ただでさえ社会人や学生が帰宅する時間。
バスの中は、ラッシュ状況だろう。
「そういえば、そうだったね……」
虚ろな目をした都。
どうやら都も帰りのバスの激込みレベルの地獄を思い出したようだ。
業務用スーパーを出て歩くこと10分ほど。
ようやく大手スーパーの前を通り過ぎたところで――、
「ねえ、優斗」
「どうした?」
「優斗って、そんなに力あったけ? 昔からスポーツ苦手だったよね?」
「そうだったか?」
惚け乍ら考えるが、昔の記憶は、もう殆ど残ってない。
だからスポーツが苦手と言われてもピンとこないものがある。
そして力があるよね? と、言われても常識の範囲で肉体を強化しているから、持てているに過ぎない。
「うん。そうだよ!」
「そうだったか。俺は、昔からこんな感じだったと思うがな」
「ううん。全然違うよ! 優斗って、昔は身体測定の時は女子と同じくらいって揶揄われていたよね?」
そんなことがあったのか……。
「俺は昔を振り返らない主義だからな」
とりあえず適当に返しておくとしよう。
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