第68話
「はい。優斗殿は、土地神というのはご存知ですか?」
「まぁ、大体は……、その土地を守護している神様ってことくらいは知っている」
「概ね、間違ってはいません」
「それと優斗殿」
「何か?」
「優斗殿は、神社庁に就職を考えたりはしていませんか? 神域を、僅かな時間でも展開できるほどの……、あれだけの霊力があるのでしたら優秀な霊能力者になれること間違いないと思いますが?」
「そういうのには興味はないからな」
「ちなみに、今回、優斗殿の近辺に配していた特Aクラスの霊能者達の年収は1300万円くらいです」
「かなり高い……のか? とりあえず公務員なんだよな?」
「はい。神社庁の実働関係は、給料は実力に応じてという出来高制のようなモノがありますから」
「なるほど……。ちなみに、住良木の給料は如何ほどに?」
「私ですと、Sランクですので、年収は2000万円くらいです」
「……ち、ちなみに年齢は?」
「21歳ですが?」
その返答に思わず無言になる。
21歳で、年収2000万円の公務員。
「な、なるほど……。それだと退職金とかは……」
「退職という概念はありませんが、力が無くなり引退する事になった時には、年収の10倍は支給される事になっています」
「お金って、あるところにはあるんだな……」
「死と隣り合わせの仕事ですから」
「まぁ、そうだな……」
「優斗殿も、将来は神社庁に就職とかはどうですか? 若い内でしたら、覚えもいいですから。運動が苦手な人でも、荒事に向いていなくても、鍛えてくれますから!」
「俺はいいかな……。ほら、俺って一般人だし。そういう危険な世界というか、今でも、こんな状況で、困惑しているからな」
「そうですか……。残念です」
落ち込んだ表情をしたまま、神社庁のパンフレットを差し出してくる住良木。
こいつ、俺が無理だって言ったのに、まったく諦めていないな?
押し付けられるようにして手渡されるパンフレット。
「優斗殿。と、とりあえず、考えてみてください。それだけの霊力を遊ばせておくのは、人類の損失ですので。それと、何かあったら連絡をください」
「これは?」
「神社庁から支給している衛星の電波を利用した通信機です」
「携帯電話と殆ど変わらないんだな」
「はい。そのへんは独自規格を作るとお金がかかりますから」
「世知辛いな」
「税金ですから」
見も蓋もない言い方に、俺は携帯を受け取る。
「そういえば、あとは――」
「特にありません。今日は時間を取らせてしまい申し訳ありません」
「――いや。こちらこそ、守ってもらっている身だからな。贅沢はいえない」
「そう言って頂けると助かります」
住良木と別れて家に戻る。
玄関のドアを開けると、まだ夜は冷え込むというのに、山城綾子が床で座って俺の方を見上げてきていた。
「ずいぶんと時間がかかったのね?」
「まぁ。色々とあってな」
「そう、話し合いはすんだの?」
「一応、情報交換は済んだ」
「そう、――なら、優斗君」
「ん?」
「少し時間いいかしら?」
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