第28話

 下へと降りる階段、それは途中から色合いが変化するが、俺は気にせず白く変化した階段を降りていく。

 その際に、ミシッという音が聞こえてくるが、幸い、俺の体重で砕けるような脆い強度ではないようだ。


「おわっと――」

「気をつけろ」


 後ろを付いてきていた山崎の体が、階段の外側へと引っ張られるようにして倒れかけたところで、腕を掴み引っ張る。

 

「す、すいません。さっきまであった壁が――」

「ああ。どうやら、この場の形がさっきまでとはまったく異なっているみたいだな」


 

 足元から響いてくる反響音のソレは人体で言う所の骨のようなモノ。

 そして、降りてくる時には存在していた真っ黒い壁は何時の間にか消失しており、階段は、時計上に一本の白い柱を中心に渦巻いており、それが下層へと続いている。


「なんだか嫌な雰囲気ですね」

「ああ、そうだな。それと少しずつ分かってきた事ある」

「分かってきたこと?」

「ああ」


 俺は白い階段が生えている直径10メートルはあろうかという柱に手を当てる。

 すると手の平には何かしらの脈動が伝わってくる。


「どうやら、この場所は人体を意識して作られているように思えてならない」

「人体を? それって最初の血管が浮き出ていた場所にも関係が?」

「ああ、おそらくな。こっちの世界は、どうかは知らないがダンジョンが生まれる――、もしくは、ダンジョンを作る場合には何かしらの思想というのがあるからな」

「こっちの世界って……、まるで桂木さんは別の世界に居たみたいな言い方をするんですね」

「いまは、それよりも問題は、この場所が人体を模して造られたと過程するとして、そこにどんな意図があるのか? というところだな」

「……そういえばインドでは、人体を見立てた迷宮を作る神が居たと以前に従軍していた時に聞いたことがありますが?」

「ふむ……」


 そうなると、やはり何かしらの高位の存在が関わっていると見ておいた方がいいか――、もしくは……。


「やはり一度、戻ったほうが……」

「戻り方は知らないし、そんな情報はネットにはなかったな」

「――え?」

「だから戻り方は知らない。だから解決させる方向に行動するしかない」

「……そ、そうですか。桂木さんは、何かプランがあって来たとばかりに……」


 項垂れる山崎。


「まぁ、何とかなる。今までも何とかなったからな」

「――でも、どうするんですか?」


 そう聞かれると俺としては何も考えていなかったとは答えずらいな。

 そもそもいつも出たとこ勝負が多いからな。


「とりあえず、ここの迷宮を作った主と話をするしかないな」

「そうですよね……」

「じゃ、とりあえず最短ルートをとるか」

「最短ルート?」


 俺は、山崎の腕を掴んだまま、階段から飛び降りる。

 

「うええええええええ。――っ!?」


 声にならない声を上げながら、俺と共に落下する山崎。

 数十秒、落下が続いたところで落下地点には巨大で透明な湖が見えてくる。


「山崎! 真下に湖が見えるから息を止めておけ!」

「それって大丈夫なんですか!」

「知らん!」


 落下中に、俺はダガーを腰からグロッグを取り出し銃口を湖へと向け磁界により加速したレールガンを放つ。

 レールガンは、湖に着弾し巨大な爆発音と共に水柱を作り出す。

 俺と山崎は、水柱に体を預けると共に落下速度による衝撃を緩和させ湖の中へと沈み込む。

 そして、すぐに岸部に向かって泳ぐ。

 

「はぁはぁはぁ……。桂木さん、無茶しすぎですよ」

「時間が勿体ないからな」


 少なくとも、朝までにはエレベーターの怪異なる問題は解決しておきたい。


「時間がって……」

「まぁ、騒がしくしていた甲斐があったようだし、結果オーライだろ」

「それって……」


 俺は、近づいてくる魔物へと視線を向ける。

 俺達の方へと近づいてくるのは、3メートルを優に超える頭に角を生やした魔物であった。

 



 

 

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