第27話

「それにしても、桂木さんが使うとトンデモない威力になりますね」

「そうか?」


 しばらく歩いたあと、壁に背中を預けながら銃弾をマガジンに詰めていく。


「ちょっと銃を見せてもらっても?」

「構わないが?」

「あー、これは……。ずいぶんと劣化してますね」

「だろうな」


 最初の数発は、力の伝導は上手く出来ていたが、今は辛うじて『レールガン』としての機能を有しているに過ぎない。

 あまりにも強い電磁加速に砲身が耐えられなくなっているのだろう。


「――で、あと何発打てる?」

「いつ暴発するか分からないモノを渡しておけませんよ。これを使ってください」


 ボストンバックから山崎が取りだしたのは拳銃。

 俺には拳銃の種類は分からないが――。


「グロッグという拳銃です」

「グロッグね……」


 先ほどまで使っていたデザートイーグルよりも遥かに軽い。

 それに何より銃弾の口径も小さい。

 

「ふむ……。山崎」

「何か問題でもありましたか?」

「小銭はあるか?」

「小銭?」

「ああ、5円以上の効果はあるかなと」

「ありますが?」

「ちょっと貸してくれないか?」


 山崎が懐から財布を取り出す。

 硬貨の枚数は、20枚ほど。

 俺が持っていた硬貨が30枚近くあることから、弾数としては50発少しと言ったところか。

 それにしても飛び道具しかない現状では、これからの事を考えると少しきついな。


「やっぱり近接武器か何か欲しいな」

「一応持ってきていますが……、化け物相手に近接武器は自殺行為では?」

「――いや、近接武器の方がいい」

「それならお渡ししますが……」


 渋々と言った様子で、差し出してきたのは全部で4本。

 しかも全てのナイフの刀身の背にはソードブレイカーのような切れ込みが入っている。


「サバイバルナイフか」

「いえ。軍用(コンバット)ナイフです。刃渡りは、30センチほど。持ち運ぶのは違法ですが……」

「拳銃を持ち込んでいる時点で合法からはかけ離れているからな。だが、助かった」


 刃の部分は30センチと短いがキチンとした戦闘用のナイフ。

 一応、体内で増幅した生体電流をナイフに流してみたが、しばらくは持つだろう。

 腰に2本、腕に2本括りつける。


「拳銃は?」

「数発しか打てなくてもデザートイーグルの方でいい」

「暴発すれば腕が吹き飛ぶ可能性もあるんですよ?」

「覚悟の上だ」

「……わかりました」


 肩を落とした山崎にグロッグを返し、デザートイーグルを返してもらう。


「――さて、いくか」

「そうですね」


 用意も済んだことだし。

 俺と山崎は、地下へと通じる階段を降りていく。

 地下へと通じる階段は、どこまでも続いているように見える。

 

「――さて、ここが本当に黄泉平坂なら地獄へと通じているのかね」

「ちょっと――、それは洒落にならないですよ」



 

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