第15話

 ファミレスで新聞記者と別れたあとは、携帯電話で妹に送れる旨を連絡する。

 何やら、「都さんの家で両親と会ってくるの?」とか、アホなことを言っていたので、普通に雑誌を買う為にコンビニに寄るからとだけ伝えておいた。

 

 そして――。


「ただいま」

「お兄ちゃん、おそーい!」


 徒歩で千葉駅前のファミレスから帰った事もあり、都を送り迎えする時間の3倍近く掛かってしまった。

 そのおかげで、妹は、かなり御立腹の模様。


「仕方ないだろう」

「もう! な・ん・じ! だと思っているの!」

「そうだな……」


 ぷんぷんとお怒り中の妹の頭を撫でながらリビングに向かうと時刻は、午後11時を指し示していた。

 思ったよりも時間がかかったな。

 1時間近く歩いていたのか……。


「まだ日付は変ってないな」

「もうすぐ変わるから! もうすぐ、明日だから! 胡桃はねっ! 早く寝ないと駄目なの!」

「そうなのか?」

「もー、お兄ちゃんは、女の子のこと分かってなさすぎ! 中学生は、ニキビとか出来やすいんだから! とりあえず、お兄ちゃん、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 妹が自分の部屋に入っていき扉を閉めたので、俺はテレビをつける。

 テレビのニュースには真新しい情報などはない。

 まぁ、怪我人もいないからな。

 ただ車両が爆発炎上したからニュースになるかは微妙のラインだっただけに少しだけ安堵した。


「――さてと……」


 まずは、エレベーターの怪異。

 それを詳しく調べる必要がある。

 都市伝説板などを除けば何かしら出てくるだろう。

 まあ、それが事件の解決に繋がる糸口なら日本の警察は優秀だから、とっくに犯人を捕まえていると思うが、いまはオカルト系を調べるくらいしか、都のために俺に出来ることはないからな。


 ノートパソコンをテーブルの上に置き起動する。

 ファンが回る音と共にノートパソコンのモニター上にメーカー名が表示されOSが立ち上がる。


「エレベーターの怪異と……」


 検索欄に、調べたい内容を打ち込み検索ボタンを押す。

 すると数十万件のサイトがヒットする。


「多いな。まぁ、とりあえずは……」


 オカルト板を表示し内容に目を通す。

 

「異界エレベーター?」


 書かれている内容は、異界に向かう際のエレベーターの使い方。

 到着階を規則正しく選ぶことで異世界に行けるらしい。

 

「ふむ……」


 どうも眉唾にしか俺には思えない。

 そもそも異世界に行く方法なんて、膨大な魔力で世界間の壁を抉じ開けて人間を召喚するのが常識。

 エレベーターの回数を規則正しく押すという、そんな簡単な方法で異世界に行けるなんて、普通に考えてありえない。

 そんな事で異世界に行けるくらいなら、間違えて召喚された時に、元の世界に帰還していた。

 それが出来ないほどの膨大な――、数百人の魔術師の魔力が枯渇するほどの魔力が必要だったからこそ、数十年に一度しか異世界では勇者は召喚できず、都は戦いで殺されて、俺も――。


「まぁ、どちらにしても、こんな単純な方法で異世界に行けるくらいなら、もっと世界的に問題になっているよな……」






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