第11話
「それが答えって……」
そう俺に疑問を投げつけてきたのは、純也。
「どうかしたのか?」
「――いや、以前の優斗なら、そうキッパリと割り切ったような言い方はしなかったと思ってな」
「そうか?」
以前の俺か……。
もう覚えてないんだよな。
「ああ。もっと昔の優斗はオカルトみたいなモノに興味があっただろう?」
「そう言われてみれば……」
以前は、色々と妄想したりしたな。
まぁ全て異世界に間違えて召喚されたことで根本から色々と破壊されたが。
「そうだよ! だから都さんは、お兄ちゃんに話しかけたのに!」
何故かお怒り気味の妹。
ただし、そんなことを言われても困る。
俺は異世界で30年以上暮らしてきたんだぞ?
昔の俺みたいに完璧な対応をしろと望まれる方が酷ってものだ。
「すまない。最近、寝不足で……余計なことを考えるのが……」
「ふーん。優斗って、そういう言い訳しちゃうんだ~」
挑戦的な眼差しを都は向けてくる。
もうー! 俺に、どうしろっていうんだ!
「でも、エレベーターの怪異って純也さんはどう思うの?」
「どう思うって言われてもなー」
俺だと埒が明かないと悟ったのか、妹が会話のボールを純也に投げつける。
「よく分からないってのが普通じゃないのか? だって考えてみろよ、エレベーターの怪異が本当なら、日本でどれだけのエレベーターがあると思っているんだ?」
「――うっ! たしかに……」
残念だな! 我が妹よ! 純也は、俺以上にリアリストなのだ!
「優斗も言ってたけど、いつものマスコミ関係者の捏造ってやつだろ。数字さえ取れれば何してもいいみたいな」
「そうなのかな……」
「そうじゃなかったら、パニックになっているって!」
「……うん。そう言われると、そんな気がしてきた……」
しばらく俺が受けた交通事故の見舞いというか食事が終わったあと、洗い物をする。
「おっと、そろそろ時間だな」
「――ん?」
コタツに入っていた純也が立ち上がると学生カバンを手に取った。
「それじゃ、俺は、そろそろ帰るわ」
「――あ、それじゃ! 私も!」
時刻は、そろそろ午後20時過ぎ。
「そういえば二人ともおじさんやおばさんには許可はとったのか?」
「あ――! わ、私!? 電話するの忘れてた!」
「その辺は大丈夫だ。都の両親には、電車の中で俺の方から電話しておいたから」
「――え? そ、そうなの!? ごめんね」
「気にすんな」
玄関に向かう二人。
俺はエプロンを外し、一緒に外に出た。
「優斗、今日は何ごともなくて良かった」
「まぁな。それより純也、気を付けて帰れよ」
「分かっているって!」
「そ、それじゃ私も帰るね」
「都は俺が家まで送っていくから」
「――ふぇっ!? ――い、いいの?」
「ああ、さすがに女の子を一人夜に帰らせる訳にはいかないからな」
「お、俺は!?」
「純也は、一人で帰れるだろうに」
「ちっぇー。んじゃ、また明日な!」
階段を勢いよく降りていく純也。
「本当にいいの?」
「言ったろう? 都を家まで送るって」
「うん! それじゃ送ってもらおうかな!」
そこで、ようやく都が笑顔を俺に向けてきた。
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