第15話 天野さんとショッピングモール
前にはおしゃれに黒の服とブラウンのズボンを着こなした天野さんが立っている。そしてもちろんマスクはつけている。
「混んでるねぇ」
「そうだな」俺と天野さんはお互いを見失わないようにしながら歩いていく。
今日天野さんとショッピングモールに足を運んだのには理由がある。
そもそも俺はあまり買い物とかするタイプではないので誰かについてきたとかしかショッピングモールに来たことはない。
そして今日このものすごく混んでいるショッピングモールに来たのには理由がある。
そう、俺が欲しい服がここに売っている...とかではなく普通に天野さんが買い物に付き合ってほしいと言ってたからついてきたのだ。
「天野さん、そのお目当ての物ってどこにあるの?」
俺はもう若干足に疲労感を覚えながら聞く。
「そうだねぇ、あっあそこ」
天野さんは右手の人差し指を目的地に指さした。
そこは洋服店で張り紙には今日限定発売!と書かれている。
そしてそこには、大量の行列ができていた。
「ねぇ、天野さんあそこに本当に並ぶの?」
「うん並ぶよ?」
天野さんは首を首をが重て聞き返す。
「ちょっと俺は用事があったということで」
俺は行き先と逆の道に足を踏み出し、出口に向買おうとするが、それは無情にも天野さんに手を引かれ達成することはなかった。
俺は天野さんに引っ張らっれる形で連れていかれる。その天野さんの顔は笑顔だ。
そして俺たちはその行列の一員となった。
「ねぇ天野さんこれって俺いる?」
「うん、いるよ。私の話し相手として」
「だとしても俺である必要はなくない?」
「いやぁ、ほかに岩田君とか友達誘ったけど全員用事あったんだもん」
全員用事ってそんな運命のいたずらあるか?あとワンチャン天野さんがデートとして誘ってくれたという俺の淡い期待を返せ。
十分ほどが経ち、列は少々進んでいて、俺たちの後ろにも人が大量に並んでいた。
「ねぇ、天野さん。俺やばいかも?」
「何?トイレでも行きたい?」
「いや違う」
俺は一度自分の足をたたき、言う。
「足がそろそろ限界に近い 」
そういうと天野さんは少しびっくりし、そしていつも通りの顔に戻った。
「まだ並んで十分ぐらいだよ?流石に冗談でしょ?」
その天野さんの問いの後に十秒ほどの静寂が流れ。
「本当に限界なの?」
俺はこくりと頷く。
それを見て、天野さんは一度大きなため息を吐き
「体力なさすぎでしょ緑川君」
「ということで俺はベンチに」
と去ろうとしたところ手が掴まれ
「いや、だめ」
と食い止めてきた。
「私が暇だから」
「でも俺もう足がだめだぁ」
「まっいっか、違うところいこ?」
「え?いいの?天野さん欲しかったんじゃないの?」
「でも緑川君限界みたいだし」
そういわれると罪悪感を覚える。
「よしっ、あと十時間は持つ」
俺は虚勢を張る。
「そんなに待たなくていいと思うけどね」
天野さんは笑顔で告げた。そして
「予想通り」
行動はすべて読まれていたようだ。
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