第11話 天野さんと文芸部

俺と天野さんは一緒に雑談しながら帰っているとなんとなく花屋を通った。

その花屋には様々な種類の花があり、ドラマとかで見るような赤いバラの花束や、ひまわり、赤い菊の花など様々な花がある。

そしてその隣にコンビニがある。

「コンビニでアイス買ってよね~」

と天野さんがコンビニを指さしながら言う。

「わかってるよ」

俺は手元の財布の中身を見ながら言う。そこには1000円札が三枚と五百円玉が二枚ある。

「コンビニのアイス全部買ってくれるってホント?」

「どこ情報だよ俺の財布の中身100個用意してくれ」

「緑川君が用意してくれるならいいよ」

「いやだよ」

さすがにそれは無理だし、天野さんの願いでも聞けない。

天野さんはちぇーと小さく呟きながらコンビニのほうを向く。

「まっそんなにアイス食べないからいいけどね」

「じゃあ最初から言うなよ」

俺が突っ込むと天野さんは少し笑った。


俺たちは定員さんのまたのご来店をお待ちしております

という言葉を背に受けながら歩いていく。

天野さんは早速アイスの袋を開けて早速かぶりついている。

天野さんの選んだのはバニラのアイスにチョコのコーティングがついた、大人気のアイスである。

「天野さんならこのアイス選んでくれると思ったんだけどなぁ」

俺が持っているアイスは唐辛子バナナアイスというものだ。

パッケージには唐辛子の辛いのとバナナの甘いのが絶妙にマッチしたアイス!と書かれている。

「私辛い物苦手だから。ていうかそれっておいしいの?」

「からっ」

天野さんが聞き終わるのとほぼ同時ぐらいに俺の舌を唐辛子が刺激する。

人生で一番辛いと言っても過言じゃないぐらい辛い。

そしてその舌を癒すために無性に甘いものか冷たいものが欲しくなる。

そしてその二つを満たすものは、俺の右にいる人物が持っていた。

俺がその人物が持っているアイスをじっと見つめていると

「ほしい?」

「うん滅茶苦茶欲しい」

そう言うと天野さんは、悩みながらアイスを持ち替える。

そして天野さんはまだ少し悩んでいる。俺の舌は癒えず俺は限界を迎え、天野さんが左手で握っているアイスを拝借し、一口だけ噛んだ。

その瞬間俺の舌はバニラとチョコの甘い味によって癒される。

俺は「あっごめん」と言い、天野さんにアイスを返す。

天野さんは少しぽかーんとして(マスクで口は見えないがたぶんぽかーんとしている)そして我に返ったように、アイスを見つめてそして何事もなかったようにアイスを食べる。そして「んっおいしい」と感想をこぼす。その顔と耳は少し赤い気がした。

「ところで緑川君そのアイスどうするの?」

「どうしようかな...」

俺はアイスを見つめながらそう呟く。

そして

「お母さんに誕生日プレゼントとしてあげよう」

「さいてー」

天野さんは小さくそう言った気がする。


俺は家に帰り、浴槽に浸りながら今日のことを思い出して考える。

思い出したのは今日勝手に天野さんのアイスを食べたことだった。

さすがに俺の食べた後のやつはいやだったかな、とか考える。嫌われてないかなとか。

でも結局最後は気にして内容だったしいっか。という楽観的な気持ちで終えることにした。


キーンコーンカーンコーンと何回聞いたかわからない音を聞くと俺はリュックをもって立ち上がり、ある場所へと向かっていく。

そこは昨日も訪れた文芸部の部室だ。

俺は「お邪魔しまーす」と言いながら部室に入っていく。

そしてその部室には一人の人物、羽柴さんがいた。

「やぁやぁ、早いねぇ」

と天野さんはノートパソコンの画面から目を離しそう言う。

「まぁ羽柴先輩のほうが早いですけどね」

俺はそう返すと、羽柴さんは確かにと言い、また画面へと視線を戻す。

そして俺は昨日言われた席に着席し、パソコンを起動すると後ろから声をかけられる。それは羽柴さんからで

「今日から小説書いてってもいいよ~」

というものだった。

俺は羽柴さんのほうへと振り向くと羽柴さんの画面にはびっしりと文字が並んでいる。

OSが起動すると、そのまま執筆ソフトを開き、書いていく。

俺は一昨昨日の内に決めて置いたおおまかなストーリーに昨日のうちに決めておいた、細かいことなどを文章にして打ち込んでいく。

その小説のタイトルは 赤い菊を届ける日 だ。

内容は小さいころに追った頬についた大きな切り傷を隠すためにずっとマスクをしている少女を家が花を育てる農家の主人公が好きになり、

そして主人公はその少女に告白するとき、自分の一番好きな花、赤い菊をプレゼントして付き合うという恋愛系の小説だ。

俺がカタカタとキーボードを打っていると部室のドアが開き、そこからは天野さんが入ってくる。そして俺の隣に座ると、俺の画面を覗き込むようにして見ようとして俺は慌てて執筆ソフトを閉じる。ちなみにバックアップを取ってあるので大丈夫だ。

「なんで閉じるのよ~」

「いや、恥ずかしいから」

天野さんは少し不満そうな顔をしながら天野さんもパソコンを起動する。

そしてOSが起動すると執筆ソフトを起動し、天野さんもキーボードを打っていく。

そしてその後も顧問の先生が入ってきたり、ほかの部員が入ってきたりしても特に何もなく今日の部活は終わった。




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