第12話 天野さんのテスト期間

果たして学生の何人がこのものに対して恨みを抱いているだろうか。

でも果たしてこのものに対して何人もの生徒が感謝を抱いているだろうか。

そう、この愛され恨まれのテストが一週間先まで近づいてきていたのだ。


俺は帰り道、岩田と一緒に地面を見ながら歩いていた。その心と足取りは重たい。

そう、テストが近づいてきて自身が全くないのだ。

中学校の頃は、三日前ぐらいからちょっと本腰入れて勉強したら80点以上は安定して狙えるぐらいだったが、高校に入ってから内容が難しくなり、三日前だったら間に合わないんじゃないのかと思ってきたのだ。

そもそも前日まで遊んで遊んでしてきたので全然勉強ができていない。誰が悪いかと言われたら絶対俺たちなのだが。

俺と岩田がうつむきなが歩いていると背中をぽんぽんと叩かれた。顔を上げると横に天野さんがいた。

「どうかしたの?」

「いやぁ、相談に乗ってほしいんだけどさ」

「まぁいいよ」

「いやぁ、テスト近いのに勉強してないやと思ってさ」

「そんなときは勉強すればいいよ」

予想していた答えが返ってきた。

「いやぁ、数学とか全然わかんなくて」

俺がそういうと天野さんは少し間を置き、そして閃いたように手を叩いた。

「緑川君の家で勉強会しよっか!」

天野さんのその言葉によって俺の家で勉強会が開くことが確定した。


俺の部屋では岩田、俺、天野さんが丸テーブルを囲むようにして座っている。

そしてその丸テーブルにはノートやシャーペンが転がっている。

俺は数学の教科書を開き、必死に見つめている。そして一つの結論にたどり着いた。

「俺が理解するには早すぎたのかもしれない」

「適切な時期だよ?」

俺がそう言うと、横の天野さんから突っ込みが入る。

「もうちょっと粘ってくれ!お前が滅ぶと俺がわかんなくなる」

そう言ったのは俺の前に座っている岩田だ。岩田は歴史の教科書を開いている。

そして天野さんに教えを乞う。

この調子で勉強会を進めていき、そろそろ夕飯の時間になってきた。

「そろそろ私帰るねー」

天野さんがノートなどをリュックに詰めていき、帰る準備をする。

「俺も帰ろうかな」

岩田も帰る準備をする。

そして俺は岩田と天野さんを見送り、そしてそのまま夕飯を食べた。


俺は天野さんの家のインターフォンを押し、少し待つ。

今日も天野さんと勉強会の約束をしているからだ。

天野さんが目の前のドアから出てきて、俺を家の中へと招く。

俺はお邪魔しますと言い、家の中に入っていく。

そしてそのまま天野さんに続くように階段をのぼり、天野さんの部屋のドアを開けて中に入った。

何回も入ったことのある部屋だが、なんだが落ち着かなった。

「さぁどうぞどうぞ」

と言い天野さんは机の前を薦めてくる。

俺は座り、そしてリュックからノートなどを取り出す。

そして周りを見てみるとピンクのカーテンや花柄の掛布団など、女の子らしい部屋だ。

何回も来たことがあったが、何も考えたことがなかった。

でも無性に考えてしまう。これが恋というものなのか。

恐ろしいと思いながらノートを開き、筆箱からシャーペンを取り出そうとした瞬間あることに気づく。

「あっ、筆箱忘れたわ」

「何しにってあれだろ...?ゲームだろ?」

「勉強だわばか!」

天野さんはため息をつきながら自分の筆箱を漁るとピンク色のシャーペンを俺に差し出す。

「ほら」

「おっありがとう」

俺はそのシャーペンを受け取り、ノートに向き合う。

たまにちらりと隣を見て天野さんを見ると、天野さんは真剣な表情でノートを見つめている。

そしてもう一回隣を見ると天野さんと目が合った。

そして一つのことを思う。

「ゲームしようぜ!」

俺のその言葉に天野さんは少し迷ったが

「ぼっこぼこにしてやるわよ」

天野さんは袖を肩まで捲り、意気込んだ。

そして前にもやった格闘ゲームを起動しプレイする。

結果は、三時間俺がぼこぼこにされて終わりを告げた。


俺はテスト当日、テスト用紙に向かい合いながら思う。

「ゲームしなかったらよかった」

と。






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