第8話天野さんとゲーセン

「じゃあちょっと行ってくるね」

そう言って天野さんは立ち上がって歩いていく。そして角を曲がり姿が見えなくなる。

そして俺は隣をみると、ピンクの弁当箱が置かれていた。

「忘れていったな」

と小さく呟いた。


自分の分の弁当を食べ終わり、自分の席に戻ってぼーとスマホを眺めていると後ろから足音が聞こえて振りむくと天野さんが居た。

「なんか言われたのか?」

「授業中に寝すぎって言われた」

「当たり前なんだよなぁ」

とツッコみを入れる

「早く寝ればいいのに」

「私友達多いんだってだから交流とかも多いのよ」

「まじかよ友達少ないブラザーズだと信じていたのに」

「まぁ違うというわけですよ」

天野さんはどや顔をしながらこちらを見てくる。

どう言い返そうかと思っていると

「天野ちょっとこっち来てくれない?」

と聞き覚えのあるクラスの女子が天野さんを呼ぶ。そして天野さんはその女子に駆け寄っていった。

「本当に友達多いんだなぁ」

とぼそりと呟いた。

そして弁当箱を渡すのを忘れていたのを思い出した。


放課後いつもと同じ歩道を通っていると背中まで黒髪を伸ばしている少女を見つけた。

「天野さん」

と声をかけながら近づいていくとその少女、天野さんは振り返った。

「あっ緑川君、やっぱりストーカー?」

「違うわ!!」

なんて理不尽なのだろうか。

「それは置いといて、ほいこれ」

俺はそう言って弁当箱を差し出す。それを「ありがと」と言い天野さんは受け取る。

「そういえば私最近料理の勉強してるんだよね」

「天野さんって料理できなさそうだよね」

「その言葉そっくりそのまま返すわ」

「いや、遠慮しときます」

「遠慮しとかないで」

中学校の時のことを思い出す。

天野さんが調理実習で肉野菜炒めを作るとき、家庭の先生に教えてもらいながらやっていたなのに肉野菜炒め焦がしてたなぁと思い出す。果たしてあれは先生が悪いのかまだよくわからない。

俺がそんなことを思い出していると

「ねぇ緑川君、ゲーセンいかない?」

とそう天野さんが提案してきた。


店内はいろいろな音が混ざり合っている。ゲーム音人たちの話し声、店内アナウンスなど様々な音だ。

そんな店内の中で俺たちはクレーンゲームの前で格闘していた。

「緑川君絶対もうちょっと後ろだったって」

「いや絶対この位置で正解だって」

俺たちが言い争っていると、クレーンがアニメキャラのぬいぐるみに向かって下降を始める。

そして四本のクレーンでそのぬいぐるみを掴むと、そのぬいぐるみは上昇していきそしてそのまま商品出口まで持っていかれそして、商品出口に落ちる。

「俺のほうが正しかった~」

「緑川君のあおり言葉って妙に腹が立つわね」

と天野さんが悔しそうに言葉を放つ。

そして俺は場所を天野さんと交換する。

「一回で取ってやるわよ」

天野さんはそう威勢よく言い放ち、クレーンゲーム台に向かった。

結果。天野さんは何十回と挑むことになった。

俺が千円札を通し、画面をタップするとじゃらじゃらとコインが出てくる。

そして出てきたコインの半分を渡す。

「じゃあ制限時間までにより多く増やしたほうが勝ちね」

「まぁ余裕ですよ」

俺は余裕の表情でそう返す。

俺はコインを大量にとれる可能性があるが大量に失う可能性のあるものにはいかず、こつこつコインを貯めていく戦法にする。

そして俺がこつこつコインを貯めていて、そろそろ移動するかと移動しているとき、天野さんとすれ違い、天野さんの手元には大量のコインが入った箱を抱えている。

そして俺は少し願うのだった。

「大負けしないかなぁ」と

結果は一目瞭然だった。

天野さんが俺の五倍ほどのコインを集め、大勝していた。

「ふっふっふ、まだまだね緑川君」

天野さんはどや顔でそう言い放つ。

一方その向かい側にいる俺は悔しそうな顔をしていた。

「いやぁそんな大差つけられるとは思ってなかったなぁ」

と天野さんのコインを見ながらそう言う。

「これから私のこと天才かわいい眉目秀麗の天野さんって呼んでもいいわよ」

「あっ別にいいです」

「じゃあ呼びなさい」

「ノーでお願いします」

そんな会話を繰り広げていると、ゲーセンの閉店時間十五位分前を知らせる店内アナウンスが鳴り響き、「そろそろ帰るか」と言い、コインを預けて店内を出ることにした。


ゲーセンを出ると外は月が明るく、街灯が道路を照らしていた。

そして俺と天野さんは道路を照らす街灯を頼りに一緒に歩いていく。

「緑川君って幽霊とか信じるタイプ?」

「信じない信じないとか言いながら暗いところとか怖いタイプ」

「私は信じて、暗いところとか一人絶対無理なタイプ」

俺たちはいつもより少し遅めのスピードで歩いていく。

歩道を歩いていると新たに舗装されたところとまだ古い舗装のままの場所の段差でつまづき、そうになったとき俺の手はぎゅっと握られてこけずにすんだ。

「あっありがとう」

「こういうのって私が助けられる側だと思うんだけど」

「残念ながら私にそんな瞬発力なんてないんですよねぇ、残念」

「後ろから突き飛ばしていい?」

「やめてくれ」

そのあとは特になにもなく雑談をしながら進んでいく。

その途中、「背中誰かに触られた!」

と嘘をつくと天野さんは「え?え」と言いながら座り込んでしまった。

そして俺が種明かしをするとひどく怒られた。

そしてそのまま俺の家についた。

「じゃ、そういうことで」

俺が玄関に向かおうとすると、左手が強く握られた。

「緑川君のせいで怖くなったから、家までついてきて」

と言われた。その顔は少し赤かった。

俺は少し悩んでから

「まっいっか、帰ってもなにもすることないし」

俺は玄関に向いていた足をもう一回前の進行方向に戻した。


俺と天野さんは天野さんの家までゆっくり歩く。

天野さんはそのままずっと左手を握っている。

その左手は少し汗が出ていて拭きたくなるがまぁいいかということで放置している。

そして天野さんの家につき、別れる。

そして俺は来た道を変えることにした。


俺は部屋のベッドでゴロゴロしながら天野さんについて考えていた。

そして俺は一つの結論にたどり着いた。


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