第3話天野さんの怪我
昼休み、天野さんはどこかに行く。一回どこに行くのか聞いてみたが「教えない」という返答が返ってきたのでそれ以上は聞いてない。
ただ昼休みで一つ確定していることは、天野さんは弁当だということだ。
四時間目の古文の授業が終わると頭が禿げかけている先生が教室を退室し、昼休みが始まる。
窓際の席の天野さんはピンク色の弁当を包む布を持ち、教室を出ていく。
俺は特にどこに行くでもなく、自分の席で弁当を出し、食べだす。
食べ終わると友達と話し、そして昼休みが終わる。それが俺の昼休みのルーティーンだ。
だがこの日は少し違った。
弁当を食べ終わり、ぼーとスマホを眺めているとスマホからバイブ音がなる。
電話が鳴っていた。誰からだと思ってみると天野さんだった。
俺は緑色のマークを押し、通話に出る。
「はいもしもし」
「緑川くん、ちょっと体育館裏に来てくれない?」
スマホからは天野さんの透き通った声が聞こえる。
俺はとりあえず「おけ」と2文字で返し、通話を切る。
体育館裏に行くために教室を出て廊下を歩きながら考える。
体育館裏に来てほしい?それってもしかして...
そんなことを少しでも考えた俺が居たがあるわけないかと思い、違うことを考える。
そして実際に違った。
体育館裏にたどり着き、あたりを見回すが一見いない。
あれ、と思いながらもう一回見回すと声が聞こえた
「緑川くーん、助けてー」
と結構大きめの声の天野さんの声が聞こえる。
声の聞こえたほうを向くと用水路に右足だけを突っ込んだ天野さんが居た。
俺は天野さんの方へ行き、尋ねる。
「なんでそんなことに...?」
「踏み外した」
と即答で、声の起伏は一切なかった。
でもなぜそんなことで?と思っていると
「踏み外して用水路に足をついたら足を挫いて出れなくなって」
俺は用水路の中を見てみると天野さんのはいている白の靴下の上が赤く腫れていた。
そして膝には真っ赤な血が流れている。
「そして俺はどうしたらいいんだ?」
「ちょっと引き上げてくれない?」
そう天野さんは言うと、左手を俺に差し出す。俺はその左手を右手でつかみ、グッと引き上げる。天野さんは左膝を地面に付きながら用水路から右足を出す。
そしてもういいかと思って手を離すと、天野さんは勢いよくうつ伏せに寝転がることになった。
「イッタァ」
うつ伏せの状況の天野さんの悲鳴から地面から聞こえてくる。
「ごめん、もういいかなぁって思って」
「その結果思いっきり地面とキスすることになったけどね」
天野さんはちょっと恨めしそうに言いながら助けを求めてくる。
俺はもう一回天野さんに手を貸し、天野さんを立たせる。
天野さんの服は土で汚れ、顔もところどころ土で汚れている。
「保健室まで行く?」
「行きたいけど、足が痛くて一人で立てないかも...」
天野さんの足を見てみると両足の膝からは真っ赤な血が流れ、右足首は赤く腫れている。
どうすればいいかと少し考えた結果。答えを閃いた。
「そうだ。背負いますよ」
天野さんに腕を貸しながらそう提案する。
「恥ずかしいから却下でお願いします」
「もしかして天野さんって欲張り?」
「いや結構な人が恥ずかしいと思うと思うけど?」
天野さんに提案を却下されたので新しい案を模索する。
「天野さんを置いて行くっていうのは」
「学校中にあることないこと振り撒かれていいなら」
「ひどい!」
「そっちの行動も酷いでしょ!」
俺と天野さんは解決策を思いつかないので取りえずゆっくりと座ってのんびりと考えることにした。
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