第20話「ベリーショートと少女(後編)」

 冬、



 どんなに仲が良くたってケンカもする。


 どんなに仲が良くたって相手のことは決めれない。


 百合は自分をマガママな女だと思った。



「百合、卓球……しない?」

 瑠璃、教室、百合の机の横に立つ。


「……うん」

 百合、ストーブの熱の乾燥か艶やかな黒髪がくすんで見える。


「ホントはもう少し長めに切るハズだったんだ」

 瑠璃、ベリーショートの黒髪を少し摘まむ。


「次は切る前に言って、ワタシが切ってあげるから」

 百合、相談はしてほしい。



 カコン、 カコン、 カコン、


 卓球台に球の音がこだまする。


 小さな島の木造体育館、そこは小さな島の小さな分校。


 紺色のセーラー服、えんじ色の三角タイ。


 膝下丈のスカートが重く揺れる。



 冬の終わり。


 春の始まり。

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卓球台と少女 山岡咲美 @sakumi

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