第5話魔法と五大学校交流祭
「アナベルさん、聞いていますの?」
マリーの不安そうな声で私の意識は覚醒した。どうやら、ぼんやりとしていたみたいだ。
「ええっと、何の話だっけ。」
「もう、ちゃんと聞いてくださいな。」
ちょっと頬を膨らませてるの、可愛い。
「五大学校交流祭ですわ。」
「ごだいがっこうこうりゅうさい?」
聞きおぼえのない言葉だ。魔王時代も、現代でも。
「ここ、ブランブルク王国で行われる国立学校の祭りですわ!!私たちも出ますのよ!!!」
「へー。」
平和な世界だ。
「で、どこの部門に出場いたしますか?」
「え、部門なんてあんの。」
「もちろんですわ!!魔法部門、実技部門、勉学部門。以上の三つがございます!!!」
思ったよりガチなのかもしれない。
「わたくしは、あの大楯で実技部門に出ることが決定しておりますわ!!!」
「そ、そうなんだ。」
楽しそうだからいいけど、、、あれでどうやって攻撃するんだろ。
「うーーん、じゃあ私は魔法部門かなあ。魔法得意だし。」
前世からがちってるしな。
「お互い頑張りましょう!!」
さて、ここらへんで現世での私の魔法能力について説明をしておこう。
「出でよ、炎よ。」
私の手に小さい炎が現れる。少し手のひらが熱い。ちなみにこのセリフはなんでもいい。「ファイアーボール」でも、「天焦がす絶望の炎」でも、最悪、「火」でもいい。また、唱えなくてもいい。ただ、言葉とイメージを紐づけることで、より想像通りの炎を出すことができる。コントロールできる。
「水よ、わが手元に顕現せよ。」
ちょろちょろと、足から水がわいてきた。
「うーん、やっぱり水はまだ完全にコントロールできないな。難しい。」
もちろん、魔法にも得手、不得手がある。私は魔法の中で水が特に苦手だ。一番といってもいい。
「母なる大地を構成する土よ、現れろ。」
土がわたしをちょうど覆うように壁を作る。土魔法一番得意かもしんないな。緻密なコントロールがしやすい。
「すべての生物の根源たる草よ、世界に再び安定をもたらせ。」
壁の上にたくさんの木が生えた。う、うーん。育った木かー。相変わらずコントロールが難しすぎるな。
ふー。ここまではまだ序の口だ。そこまで危険性はない。本番はここから。まずは、今日初めて使う光魔法だ。
「世界を統べる魔法の一対よ、私にその力の一端をかしたまえ。」
慎重にイメージを重ね、私の目の前にその力を表す。まばゆい光がわたしの前に現れた。魔王の時の苦い記憶がよみがえる。
「――――――――――――――――――――――――私を呼び出したのは、あなた様でしょうか。――――――――――――――――――――――――」
長い眉毛と、真っ白い肌。この世のものとは思えないほどきれいな女性。
天使がわたしの目の前に現れた。
「ええ。私よ。」
この美しさに惑わされてはいけない。慎重に言葉を選び、会話をしなければこの天使という存在は私たちの存在を希薄にし、心を廃人にする。
「おお、久しぶりにこの世に呼び出されたかと思いましたが、わずか16歳の女の子・・・食べちゃいたいほどかわいいわね。」
見るもの全員を安心させるような笑みで私に微笑みかけた。
「じゃあ、戻ってくれる?元の居場所に。」
「あれ?これで終わりですか?」
名残惜しいが、かなり疲れたので帰ってほしい。この状態はかなり危険だ。
「早く!!!!」
「あらあら、残念ですね。それでは、また会えることを楽しみに。さよならー。」
「ハアハアハア。」
この体で、天使を召喚するのはやはり無謀だったか。かなり魔力量も削られた。いや、それでも成功したのは大きな成果だ。魔族の時は光魔法は使えないからな。初めてだったからかなり不安だった。今日は、これまでにしよう。疲れた。すぐに休みたい。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
絶対に怯ませたいトゲキッスです。年内更新はこれまでです。紅白を見ながら、今これを書いてました。これからは、五大学校交流祭で起こる出来事を物語の軸として描いていく予定です。読んでいただきありがとうございます。では、これまで。
人の魔王と魔族の勇者 絶対に怯ませたいトゲキッス @yukat0703
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