第4話マリー
マリー、図書館で話しかけてきた金髪の彼女はそういう名前らしい。あれから少しだけ仲良くなった。
「一緒に映画に行きませんこと?」
といわれて映画を見に行ったり、
「ボーリングしますわよ!」
などと誘われてボーリングもした。悲しいことに、私の体力では一ゲームが限界だったが。
彼女と遊んで気づいたことがいくつかある。まず、彼女は性格がいい。貴族だが、人にやさしくしているし、私にも優しい。偉ぶったりもしない。次に、彼女は恥ずかしがり屋だったりする。同級生と比べて少し彼女は背が大きいが、初対面の人と話すとき、横を向いていたり顔が見えない位置にいたりする。(そういえば、私と話していた時も、横を向いていたような。)
そして、最後に・・・・彼女はこの国の十七番目のお姫様だ。
このことについて、彼女はあまり話をしたがらない。聞こうとしても、うまくはぐらかしてしまう。私が知っているのもチラッと同級生が言っていたのを聞いたからだ。
学校が始まった日の午後はこの学校のただっぴろい校庭に、同じ学年の生徒が集められていた。一際目立っていた大柄な男の先生が、ホイッスルを持って叫んでいる。
「今日は、皆さん実技として訓練に使う武器を選んでもらいます。」
残念ながら、皆さんの中に私は入っていない。保健室で校庭を見回している。体が弱いせいで、実技には参加できないからだ。体が弱いってなんだかんだ不便だと思う。自由に外で遊ぶこともなかなか難しい。こういう時には、魔王の身体が恋しくなるなあ。
「一般的な武器の種類には、剣、刀、楯、弓、槍、エクセトラ、エクセトラ。と、今言ったもの意外にも様々なものがあります。みなさんには、その中から何か好きなものを持ってきてください。武器の適正なんてものはかなり使い込まないと分かりません。とりあえず、自分の第六感にびびっと来たものを選びなさい。」
先生はそういいながら真新しいが小さい倉庫に生徒を連れて行っていた。こちらの角度からは倉庫の中が見えない。魔王の時は珍しい魔法の杖オンリーだったから、どんな武器が強いのか、いまいちわからないな。勇者は確か剣だったんだよな。あの剣は勇者しか抜けないとかいう触れ込みだったはず。
少しすると、同級生たちはそれぞれ好きな武器を引っ提げて校庭に出てきていた。剣と槍が多い気がする。かっこいいよな、凡庸性あるし、使いやすいし。
「マリーはどこだろ。」
人ごみの中から彼女を探していると、なにやら各々の武器をもって試し斬りやら何やらをしていたクラスメイト達が急に静かになって、ある方向を向いていた。ここからでも聞こえるざわめき。
「デカっ!!!!!」
「不思議と似合ってるわね。」
「あの子って、確か第十七王女だったはず、、、呪われてるあの武器を使うなんて。」
「面白い奴だな。」
彼らが見つめている倉庫からは、蛇と鷲のマークが刻まれている楯をもったマリーが重そうにそれを引きずりだしていた。ほー、マリーはそれを選んだのか、いいセンスだ。歴代の所有者は持ってから大体死んでいることをのぞいたらな。
校庭までどうにか息絶え絶えといった感じでたどり着いたマリーはそこで初めて、自分を見つめるクラスメイトの視線に気づくことになる。
「な、なんですの。」
彼女の耳が真っ赤になって、とっさに大楯で体を隠す。楯はかなりおおきかったので、彼女の身長でもすっぽり隠れていた。
「はいはい、じゃあみなさん各自の武器を持ってくださーい。」
大柄な先生の号令で、クラスメイト達は道具を持ち直した。マリーもあわてて持ち直すが、重いので持ち上げるのにも一苦労している。
「ここに薪がありますねー。これは、いくらでも切ってもらっていいので武器を試すのはこれでやってくださーい。じゃあ、あと20分こういう時間でー。」
先生はそう言うと横の木の下で居眠りを始めた。おいおい、怠慢じゃないのか。生徒たちは先生をなじりながらも、薪を剣やら槍やらで砕き始めた。うまく割れないようで、手がしびれたりしている生徒もたくさんいる。のどかだなあ。
マリーの方を見てみると、彼女はまた楯を持って行くのに四苦八苦しているようであた。ポニーテールが大きく左右に揺れている。ぜひ頑張っていただきたい。あの楯が活躍しているのはもう一度見たいからな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――絶対に怯ませたいトゲキッスです。たびたび読んでいただきありがとうございます。
そろそろ、物語の主軸を動かそうと思っています。主人公格は、アナベル(リオネ)と、マリーと、人間側であと一人出す予定です。魔王側は、、、多分まだまだ先ですが、出します。年が明けますが、来年もよろしくお願いいたします。
次回!!!!五学園交流祭!!!
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