第4話 件の公園で

歩き慣れた道をペロと進む。今まで犬を飼ったことはなかったけれど、犬が人間の一番の友人だと言われるのもうなずける。本当に心優しい動物だと思う。

壁を辿りあの公園への曲がり角を右に曲がる。冷たい空気の中をしばらく進むと開けたところに出た感じがした。

「ついた・・かな」

きっとあの時と何も変わっていないはずだ。ブランコと滑り台だけの簡素な公園。

僕はブランコがあるはずの方向へ進む。ペロが立ち止まったのを感じ、手で確認しながらゆっくりとブランコに腰かけた。

あの時もこんなだった。僕はしばらく空を見上げて感慨に浸っていた。父のこと、別の中学に進んだ友達のこと。あの当時悩みといえるほどのことはなかったけれど、それでも小さな心配事を心に浮かべては『ああ、辛いな』なんて考えていた。きっとこんな風になることを三年前の僕が知っていたなら、あんな小さなことで悩まなかったはずだ。僕が思わず苦笑を浮かべたその時。

ウー、ワン!

突然の低いうなり声と吠え声。

「え?ペロ・・・?」

ペロは盲導犬で穏やかな犬。今まで吠え声なんてほとんど聞いたことがない。それもこんな警戒心をむき出しにした声なんて。

「どうしたんだ?誰かいるの?」

ウー。

低いうなり声は続く。これほど自分の目が見えないことに焦りを感じたことはなかった。何か危険が近づいているかもしれないのに、僕にはわからない。闇雲に逃げることもできない。

「ペロ、どこにいるの?そばにいて」

ペロの身体に触れようとしたが、すぐそばにいたはずの彼はいない。

「ペロ!ペロ!」

その瞬間。

「――見つけた」

「・・・え?」

すぐ耳元で聞こえた声に思わず身を引く。

「あ」

僕は思わずバランスを崩し、ブランコの上から転げ落ちた。

頭を強く打ち、目の前が真っ暗になる。

「――探したよ」

それが意識を失う前に僕が聞いた最後の言葉だった。

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