第25話 Hello World

「ここは・・・・」



激しい光に目を開けていられず、二人は目を瞑った。

光が収まった事を感じ目を開ける、、、 目の前に見えるのは

元の世界でもよく見た樹木と同じように見える木々。

ここは森の中だろうか、、、? だが、、、



「霊界の壁を越えて、まったく別の世界に来れたみたいね、、、。」



だって



「「さむ~~~~~い!!!」」



周りは一面の銀世界、樹木にも雪が積もっている!



「「身体強化!!」」



思わず叫ぶ。身体強化を発動させ、冷気に対する耐性を得る。

目に入るものからは、元の世界と大きな違いは無い様に見える、、、

だってほら、アイツ! さっきから目が合ってるアイツ!!



「アームベア、、、」



魔物じゃない。魔物じゃないけど熊ですよ熊!!

ギルドの資料で見たことがある。魔物じゃないけど危険な生物には違いない。

魔物じゃないから倒したくは無いんだけどなぁ。どっか行ってくれないかな?


うん、こっちをガン見してるね、、、

そりゃそうだ。突然謎の生物が目の前に現れる。どこからかやって来た

わけでもなく、急に出現する、、、 警戒するよね?


うわ、吠えながらこっちに突っ込んできた!!



「よっっと!」



四つ足で突進してきたのを避けて、逃げてくれないかなぁと思いつつ

軽く腕を狙って傷をつけた。 が、逃げないか、、、仕方ない。



今度はジリジリと距離を詰めてくるアームベア。

体高は2メルを超えるか、腕を上げると更に大きく感じる。

間合いに入ると、迷いなく鋭い爪を武器として振り下ろしてくる。


雪のせいで動きにくいが、振り下ろされた腕をバックラーでいなし、

体勢が崩れたアームベアの背後に回り、背中側から心臓の位置を狙い

剣を根元まで埋める、、、

返り血を浴びない様に、アームベアの背中を蹴ってジャンプし、距離を取る。

蹴った反動で、アームベアは前のめりに倒れ動かなくなった。


白い世界に赤が染みる、、、

無駄な殺生はしたくないけど、今回はどうにもならなかった。

心の中でゴメンとつぶやき、倒したからには食料として活用させて貰おう。



「にしても、ちょっと大きすぎるね、、、」


「こんな一面雪の森の中で解体するのもあれね、、、血抜きだけしておくわ。」


「仕方ない、引きずっていくか、、、」



カレンに魔法で血抜きを手伝ってもらって、終わり次第移動する事には

なったけど、、、 どこに行けばいいんだ??


魔力を展開して周囲の気配を探ってみる、、、何もいないな、、、

ま、熊がいる様な所に、普通の動物や人間は近寄ってこないよね。

下手すりゃ弱い魔物も寄ってこないよな、、、



「う~ん、何処へ向かうのが正解なんだろうね、、、周りを探っても

 何も分からないや。」


「考えても仕方ないかもね。万が一間違った方向に進んでも、夜営の道具も

 あるし、私が結界を張るから凍死することも無いわ。たぶん、、、」


「考えても仕方ないか、、、 よし、あっちの方に行ってみよう。

 一応、ローブを羽織っていこうか。この世界の人々が、友好的とは

 限らないもんね。」



カレンがちょっと驚いた表情でこっちをみているが、何も言わずにローブを

羽織り始めた。 失礼だな、俺だって考えてるんだからね!



ずりずり熊を引きずりながら歩く、、、

下が雪だから、引きずるのは楽なんだけど、そもそも歩きにくいな。



「「ん??」」



遠くの方から何か音が聞こえた気がした。

周囲を探ってみるが、探知範囲には何も反応は無い、、、

静かな森の中だから、遠くの音が聞こえたんだろうか?



「いま、何か聞こえたよね?」


「うん、たぶんあっちの方から聞こえたと思う、、、」


「行こう!」



気配探知を使ったまま、声がしたであろう方角へ歩みを進める。

相変わらず周囲に何の気配もないけど、程無くして誰かが移動した

足跡が続く場所までたどり着いた。



「カレン、これ見て! 誰かが歩いた足跡があるよ!」


「・・・良かったぁ、、、これで何とかこっちの世界の人達と接触出来そうね。

 あとは、、、言葉が通じると良いんだけど、、、」


「あとは、お金の問題もあるけど、、、ま、最悪はこの〈熊〉で!」


「とにかく、慎重に行きましょう。」



俺とカレンは頷きあい、足跡が向かう先とは反対側に歩いていく。

熊をズリズリ引きずりながら、、、

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