3章 壁を越えて
第24話 旅立ち
「「行ってきます。」」
俺、アレン・ブラットフォート、15歳。 昨日、誕生日を迎えました。
ここは王都、女神神殿儀式の間。
春の穏やかな日差しがステンドグラス越しに降り注ぐ。
アドミニス様から神託を下された高位神官達や、父さん母さんが
俺達と女神岩を囲んでいる。
並行世界が消滅してしまった後、俺達が抱える秘密を両親には話してある。
あまりにも荒唐無稽な話に、最初は二人とも信じてくれなかったが、
俺達の能力表示を見てもらい、最後は半信半疑ながらも信じてくれたんだと
思う。 ここまで愛を注いでくれた二人の元を、何も言わずに去るなんて
事は出来ないからね、、、
「アレン、カレン。 いまだに信じたくないんだけど、二人は行かなければ
ならないんだな、、、 問題を解決して、1日でも早く帰ってくる事を、
俺もナタリアも願い、待っているからな。」
「・・・・・気を付けるのよ、、、?」
母さんはずっと涙を流している、、、
両親は出来る限りの事をしてくれた。 お店が所有していた、大きな荷物を
入れる事が出来るマジックバッグを1つ、常時身に着ける事が出来る形の物を
2つ、俺とカレンの為に用意してくれた。 母さんが作ったポーションも
沢山入ってる。
俺達も何も用意しなかった訳では無い。
ギルドの依頼をこなしそれなりのお金を貯めたので、そのお金で武器・防具・
装備類など、色々揃えたよ。 移動した先の世界では、どんなお金が使えるか
分からないから、お金の代わりになるであろう、金と銀も素材のまま準備してる。
俺が選んだのは黒鉄の剣。黒鉄は若干重いけど、硬さと粘りを両方出す事が出来る
優れた素材だ。切れ味が落ちにくいので、接近戦を多くこなす俺向きな素材。
重さは、身体強化を掛けてしまえば全然気にならないしね。ただ、扱いやすい様に
通常のロングソードと比べて若干短めに作ってもらっている。
それに、軽い白鉄と一部黒鉄を用いたバックラー、ブルーリザードの革を使った
レザーアーマーを装備してる。 どっちも動きを邪魔しない、軽さとフィット感を
優先した装備。
カレンは、魔法が主体ではあるけれど、もちろん刀剣術も持っているので、
白鉄の短剣を二振り。それに、俺と同じくブルーリザードのレザーアーマーを
準備したみたい。
それら以外だと、あると便利な体をすっぽり隠すローブや、夜営の為のテント類、
その他色んな物をマジックバッグに詰め込んでいる。 事情を話せなかったのに、
何かある事を察したピエールさんが、だいぶお安く融通してくれたのだ。
そして、ギルドが貸し出してくれた認識阻害の指輪。
アドミニス様から託されたブレスレットには、中央にアドミニス様の加護が
込められた【女神岩】と同じ白色の美しい石が填められ、その周囲の4つの穴の
1つには、ソウルオーブが填められている。あの時以来、ずっと二人で魔力を
込め続けた物だ。どうしても目立ってしまうので、普段は腕に布を巻いて隠して
いる。
カレンの胸元にも、こちらもアドミニス様の加護が込められた白色の石が美しい
ペンダントが輝いている。 こちらも、普段は服の中へ、、、
準備は整い、15歳を迎えたのだ。
カレンを見つめる。カレンも俺を見つめて頷く。
俺とカレンは手をつなぎ、もう片方の手で【女神岩】に触れる、、、
「プロキシー展開。」
『カンリシャ ニ ヨル アクセス ヲ カクニン。
カンリシャメニュー テンカイ。』
「【女神岩】の周囲50メルの空間内魔素濃度を50%上昇。解除は1時間後。
貯蔵魔素の10%を魔力へと変換。トラベラー能力者アレン・ブラットフォートへ
注入開始!」
「トラベラー発動。」
「Begin the MagicalPower convert…
Search out the 2nd spiritualworld "רפאל"…
Open the DimensionalGate…」
周囲の魔素を取り込みながら、膨大な魔力がブレスレットに集まってくる。
ああ、感じる、、、俺達が向かわなければならない世界を感じる、、、
父さん、母さん、行ってきます。 二人を見つめて頷く。
「 Start transference! 」
真っ白な光が溢れ、儀式の間を光の奔流が埋め尽くす。
光が収まった時、そこに二人の姿は無かった。
そこには、変わらず【女神岩】が鎮座するのみで、この世界から
二人の存在が消えた。
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