第19話 護衛任務

俺達は今、北街道を北へ向かって歩いてます。

今日はギルドで請け負った護衛任務を遂行中。

と言っても、、、護衛対象は母さんなんだけどね。

ポーション作成用の材料を求めて、商業都市【ウェル】に向かってる所。


俺達の住む街【リンツ】から北街道を半日歩き続ければ【ウェル】に至る。

王都【エーデ】から南方面にある都市への中継地点が【ウェル】なので、

色々な物資が集まり商業が発展していった歴史を持つみたい。


質の良いポーションを作るには質の良い材料が必要という事で、

月に1回母さんは【ウェル】に出向く事になる。材料の1つである薬草は

【静寂の森】で沢山採れるんだけどね。

特に、ポーション作成用等に使う魔石なんかは、魔法道具用に使う様な

低品質の物とは違い、質の高い物を使う事が求められる。

魔石の様な重要資源は国が管理しているので、質の低い物なら何処にでも

流通してるけど、質の高い物が欲しいとなると、【ウェル】の様な

大きな都市を訪ねないと中々手に入らないみたい。


ちなみに、魔石を生み出してくれるのはスライム!

スライムは、世界各地にある特定の属性値だけが高いような土地に

生まれ、死んだ時に魔石を残す。生まれてから死ぬまでに何回か分裂して

子孫を残すみたい。そういった土地の魔素を吸収する為か、スライムの

核はその土地の属性に染まり、死んだ時に残す核がつまりその属性の

魔石と呼ばれる物なんだ。 その土地の属性値が高いほど、そして

長く生きたスライムほど質の良い魔石を残す為、スライムがいる土地は

それはもう手厚く保護されてる。

あいつら。魔素を吸収して生きてるから、人や動物を襲う事は無いし、

植物を食べるわけでもない。ただただポヨポヨしてて可愛い奴らだ!


と、そんな魔石や他の色々な素材を求めて、俺達は【ウェル】に

向かってる所なんだ。



「まさか、自分の子供たちに護衛してもらう日が来るなんてねぇ。」


「私もお母さんを護衛する事なんて想像すらしなかったわ。ふふふ。」



後ろを歩く母さんとカレンがそんな会話をしている。

俺達が今歩いている北街道は、東側には【静寂の森】が広がり、

西側には草原が広がる。


【静寂の森】は、多少の魔物は出るものの、豊かな森の恵みを【リンツ】の

街にもたらしてくれる、街にとっては無くてはならない大事な場所だ。

なので、街道の為に伐採等はされず、【リンツ】と【ウェル】を最短距離で

結んだ結果、街道が森の西側外苑に沿って作られていた。


今は【静寂の森】の北西端辺りを歩いてます。緩やかに西にカーブを描く

これまた緩やかな坂を上った丘の先は、今度は東側にカーブを描きながら

緩やかな下り坂が続いているはずだ。【発現の儀】に向かうときに、1回

通っているからね。

そんな場所を、のんびりでもなく急ぐでもなく歩いている。

もう少しで高くも無い丘の頂上付近にたどり着こうとしたその時、



「「!!?」」



道の先の方で馬の嘶きが聞こえた!

先行して丘の上から街道の先を見ると、馬車が多数の魔物に襲われてる!!

あれは、ゴブリンの群れ???

護衛の人だろうか、後ろに人を庇いながら複数のゴブリンをけん制している!



「カレン! 俺が行くから、母さんを守りながら魔法で援護頼む!!」


「わかった!! あの人たちとゴブリンを分断する!」



身体強化を掛けてゴブリンを目指して駆け出す。敵は、、、8匹。

森側に1匹大きいのがいる。あいつが群れのリーダーか?

護衛の人に3匹のゴブリンが攻撃していて、更に2匹が左右から囲もうと

近づいてる!


ドンッ!!!


カレンのアースウォールが発動した!

2メル程の高さの土の壁が突然出現した。

護衛の人に一番近かったゴブリンを除き、戦っていた3匹のうちの2匹が

壁の出現と共に上空にぶっ飛ばされ、囲もうとしていた2匹のゴブリンは

行く手を阻まれている。


回り込もうとしていたゴブリンのうち、手前の1匹を逆袈裟に切り上げ

一刀のもとに切り捨てる!

勢いを殺さずに、アースウォールに飛ばされ落ちてきたゴブリンに駆け寄り

トドメを刺していく。 それを見たゴブリンが怒りの声を上げ突撃してくるが、

軽くフェイント入れ右側にステップでかわし、体勢を崩したゴブリンの首を

後ろから刎ねた。



「そっちの1匹はまかせました!!」


「助かる!」



残るは森側にいる3匹! 速攻でリーダーを落としてやる!!

近寄ろうとそちらに向かおうとした時



「あれ?」



ゴブリンのリーダーの首が舞っていた、、、

カレンがウィンドカッターで倒してくれたみたい、、、

それを見た残りの2匹は驚き、森の奥へ逃げて行った。

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