第17話 試行錯誤
【静寂の森】の南側、樹木が疎らに生えるその場所に、少し切り開かれた
様な空間が広がっている。薬草も生えておらぬその近辺には、呆然と佇む
二人以外に人影は見当たらない。
街の東に広がる【静寂の森】は、街の北側には王都に至る街道がある為、
森の北側には比較的入る人がいるが、森の南側に関しては、薬草もあまり
取れない為に人の影はほぼ無い。 そんな場所にも関わらず、森に入って
すぐのその場所には樹木が伐採されたような空間が広がっていたのだ。
いつ頃出来たのだろうか?
たった今である、、、
呆然と佇むのはアレンとカレンの二人。今日はこっそり【静寂の森】に
まだ使った事の無い能力を確認に来たのだ。
「「・・・・・・・・・・・・」」
持ってきたのは家にあったナイフ。冒険者が解体などに使う汎用的な
物で、武器と呼べるほどの物では無いし、ましてや魔剣などでは無い。
そんな普通の刃物で、1本の木を目掛けてスキルを使ってみたのだ。
~~~~~~~~・~~~~~~~~・~~~~~~~~・~~~~~~~~
「カレン、この辺で色々試してみようよ! 人はこなそうだし、
あんまり奥にも行けないから。」
「ん、分かった。 何から確認する? 攻撃魔法使ってみる??」
「ん~、まずは良く分からないスキルを使ってみない?
正直分からな過ぎる。 どんな物なのか見てみたくない??」
「確かにそうね。ギルドでは結局誰も使ってなかったから、聞くに
聞けなかったわね、、、」
「じゃぁ、スキルの何かを使うって事で! ま、ナイフしか持ってきてない
から、どの程度の強さか分からないかもだけど。」
「アレンは回復の魔法や身体強化を使ってるでしょ? 私はまだ普通の
魔法くらいしか使ってないから、スキルは私が使ってみたいんだけど、
それでもいい?」
「いいよ! はい、ナイフ。気を付けてね。」
「ん、ありがと。」
カレンがナイフの鞘を外し、木に向かってナイフを構える
「じゃぁ、使ってみるね!!」
カレンがスキルを使おうとした刹那、そのスキルに関する全ての知識が
脳内に展開される。 カレンは意識もせず身体強化を剣ごと発動。
剣と体の圧倒的な一体感。まるで体の一部の様に剣にも魔力が巡る!
「スキル ショックウェーブ!!」
~~~~~~~~・~~~~~~~~・~~~~~~~~・~~~~~~~~
そして、スキルを発動した結果が冒頭の状況につながる、、、
カレンがナイフを横に一閃すると、目の前の木どころか、前方120度
位の範囲で10メル程先までの木が切断された。
「「・・・・・・・・・・・・」」
齎された結果に声も出ない。30秒ほど無言で目の前の空間を呆然と見つめる。
その後、ようやく現実に戻ってくる。 カレンはナイフを必死に確認してる!
「は??? えっ、、、????」
これは分かる。使っちゃダメな奴!!!
アドミニス様、俺達は何と戦うんですか!?
「ア、ア、ア、アレン、どどどど、どうしよう!?!!?」
「オ、オーケーオーケー、カレン、落ち着こう落ち着こう。大丈夫、大丈夫。」
カレンは腰を抜かしたようにへたり込んだ。
「お、お、おおお、カレン、大丈夫!?」
「だ、大丈夫、、、、だと思う、、、 ちょっと驚いたのと疲れただけ、、、」
「スキル、使わない方が良さそうだよね、、、、」
「そうね、、、、」
「「・・・・・・・・・・・・」」
気持ちが落ち着いたのは30分後だった、、、
「お、俺も確認してみようかな。トラベラーとプロキシーは分かったけど、
クリエイトって何だろう?」
「能力を生み出す力、、、って言われたけど、、、」
「使ってみれば分かるのかな?? ちょ、ちょっとやってみよう、、、」
「発動 クリエイト!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
「ど、どう?? 何か分かった? 何か生み出せた??」
「いや、、、何も、、、」
「え??」
その後、攻撃魔法やスキルをイメージしてみたり、色々工夫してみたけど、
な~んにも生み出す事は出来ませんでした、、、 何だこれ?
「??? どういう事??? 全然何にも作れないんだけど、、、?」
「ごめん、私にも分からないわ、、、 ま、魔法使ってみようかな、、、」
「う、うん、そうしようか、、、 クリエイトは自分で研究?してみるよ、、、」
「じゃ、じゃぁ攻撃魔法使ってみるね! 森で火はやめた方が良いだろうから、
風辺りで、、、 心を落ち着けて、、、 威力も小さく、、、よし!」
「ウィンドカッター!」
ガッ!! 15メル程先の木に当たり大きな傷を付けた!
「「おおおおお!!!」」
なんかようやくイメージ通りの事が出来たんじゃない?
こういうのでいいんだよ!こういうので!!
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