第6話 ファッション対決②

 「「か、かわいい!」」


 白鳥さんが試着室に入って数分が経ち、レースのカーテンが開いた。中には白いワンピースを着た可愛らしい格好の白鳥さんがいる。


 彼女は「ふんす」とでも言うように両腕を腰に当てて僕とハルの感想を待っているようだ。


 ワンピースだからこそ強調される白いうなじ、キメの細かい肌を存分に見せつけるように伸びている腕も相まってモデルのように見えてしまう。


「かわいいじゃねーか」


「本当に似合ってるね」


 僕は内心ドキドキしながらも平静を装って感想を言った。おそらくハルにはバレているだろうが、似合っていると言ったし見逃してくれるだろう。


 しかし本当に可愛いな。


「せんぱいが褒めてくれたのでこのワンピース買います!」


「え!? 買うの!?」


「だってせんぱいが褒めてくれたんですよ? それに、服を買うために来たんですから当然です」


 そういえばそうだったな……いや、それでも僕ごときがいいと言った服でいいのか……?


「じゃあ買ってきます!」


 そう言って試着室に戻ると、すぐに着替えて白のワンピースをレジに持って行ってしまった。


「なンか、司にゾッコンって感じだな」


「昨日会ったばかりのはずなのにね。なんか距離感近いんだよなぁ」


 少なくとも僕と白鳥さんの距離感は会って一日のものではないだろう。ひとつ屋根の下ではあるけれど……あまりにも近すぎる。


「とりあえず大事にしろよ」


「おう」


「ンじゃ、アタシも服を探しに行こうかな」


 そう言って、ハルも店の中を物色しに行った。


 暇なのでボーッと距離感について考えていると、


「せんぱーい! 買ってきましたー!」


 と、白鳥さんは少し大きめな紙袋を持って帰ってきた。


「意外と安くて助かりましたよー」


「普段はそういう服は買わないの?」


「せんぱい、田舎を舐めないほうがいいですよ」


 それだけ田舎から東京に来たのか……? それなら納得なんだけど……


「ウーバーは対応してませんし、服屋どころか遊べる場所なんてないですから」


「なるほど」


 だから昨日、スーパーに行っただけであんなにはしゃいでいたのか。そして田舎事情は深刻みたいだな。


「ところでハルせんぱいはどこです?」


「ああ、ハルなら服を探しに行ったよ」


「ハルせんぱいなら何着ても似合いそうなんですけどね」


 それに関しては僕も同感だ。ハルは口調以外完璧美人なんだけどな。どうしても口調のせいで人から避けられるから友達がそこまで多くはない。


 なので道を歩けばナンパされることはしばしばあるそうだ。本人曰く、全員蹴り飛ばしているそうだが。


「白鳥さん、覚悟したほうがいいよ」


「……というと?」


 これは先に伝えておいた方がいいだろう。


 実はハルはーー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る