第5話 ファッション対決①
二人は決断してから早かった。持ち時間は一人三十分で、その時間内ならいくらでも着替えていいというルールだそうだ。
初めは二人とも店探しをするようで、僕はモール内のベンチに腰掛けて二人を待つ事になった。
「二人とも張り切ってるなぁ」
服屋が多いフロアを右往左往する二人を見て、ふとつぶやいていた。
僕もすごい立場になったもんだ。昨日までは女友達なんてハルくらいしかいなかったのに、いきなり後輩ができて遊びに来てるんだもんなぁ。
そんなことを考えていると、白鳥さんが目を輝かせながら僕が座っているベンチまで走ってきた。
「せんぱいっ! こんなところ始めて来ましたよ!」
「楽しそうでなによりだよ。それで、いいと思った服屋さんは決まったの?」
「はいっ! ハルせんぱいには負けませんよー!」
ハルに負けないと豪語する白鳥さん。だが甘いな、僕にはどっちが勝つか分かっているのだ。
まぁ、ハルにせいぜい頑張ってとでも言っておくか。
「なンか失礼なこと考えたろ」
座っている僕の後ろにハルが立っていた。あまりにも気配がないためビクッと体が震える。
「ななな、何のことかな?」
「やっぱり思ってンじゃねえか」
僕は嘘をつくのが下手らしい。それか幼馴染のハルだから見抜けたのかな。どちらにせよ口に出した瞬間ボコボコにされることは目に見えている。
二人が揃ったことで、ようやくファッション対決が始まるみたいだ。僕は後についていくだけだが、二人とも気合が入っているようだし、少しばかり楽しみに思っている自分がいる。
「最初は私からでいいですか?」
僕には決められないし、ハルに視線を向ける。
「おう、いいぞ」
ハルは自信満々のようで即答だった。
多分ハルは対決よりも、可愛い格好をしている白鳥さんを見たいだけなのかもしれない。
正直言うと僕もそうなのだが、顔には出さないでおく。あくまで審査員として振る舞わなくては。
「じゃあカモせんぱい、少し待ってて下さいね」
そう言って白鳥さんは服屋に向かってトコトコと走っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます