第63話

「ぉおおおお!!」


紅く轟々か燃える拳を振るい、空気が焼き切れる音が響く。

同時に落雷のような音も同時に響くが敵に当たる手応えは感じられないでいた。


ッ!当たらない!!


俺は炎での推進力を得ている。

地面を蹴って動いている目の前の男よりはるかに機動力が上のはずだ。

それに、圧倒的な速度で剣を振るう高城さんの攻撃も少しも掠めたりしない。


「心君。私がこの武器で隙を作るわ。」


「頼む。」


高城さんは立ち止まり、俺は一人で敵の下へ地を蹴った。

そして、すぐに後ろからガチャガチャとした機械音が聞こえてくる。

銃口に青い光と電流が走る。


(いくら、奴が早くてもコレなら!)


すぐに発射スタンバイが整う。

しかし、敵の視線が私を捉える。

潰しに来ると一瞬身構えた。

だが、奴の顔は不敵な笑みを浮かべている。

それを見て、何かあると避けられるのではないかと不安が思考をよぎる。


「……ッ!」


打つしかない。

それ以外にこの場を打開する手はないのだから。引き金を引いた。

甲高い音ともに放電した電気をなびかせて弾丸が放たれる。

この弾丸を受けて、隙ができない相手はいない。


「ほう、面白い武器だ。」


私の手をなにかが掴んだ。

思考が止まる。

今起きた事象に脳が情報を処理しきれない。


「もらうぞ。」


腹に強い衝撃が走る。

風穴が空いたのかと錯覚するほどの衝撃。

時間が集約され、目の前に自分の吐いた血と唾液、胃酸が舞うのを視界が捉えたと思った時にはビルの上から下の地面に叩きつけられていた。

ビチャビチャと汚らしくも嘔吐する。

腹の中の全てのものが潰されたような感覚。

実際に本当に潰れているのだろう。

嘔吐物と一緒に血が混じっている。


「クソッ!」


目の前から奴は消えた。

すぐに攻撃するために足と手から炎を噴射して、加速する。


「どれ、使ってみようか。」


高城さんから奪った剣からでる銃口わ向けられる。しかし、アレは即時に発射できなかったはずだ。


……違う!


真っ直ぐ突っ込もうとした。

しかし、本能がそう叫ぶと同時に銃口の先から身を外す。

その後、後ろから盛大にビルが崩れていく音が響いた。


「よくかわした。

完全な不意をついたと思ったのだがな。」


「……どう言う事だ。」


「さてな、見ていればわかることもあるかもしれんぞ。」


再び、銃口を向けられる。

その瞬間にオレンジ色の光を伴った魔力の壁を展開させた瞬間、青い光が2度光った。


ガンッ!!


衝突音が響く。

音は一度だが、壁には2度の弾痕。


「やはり、その壁は破れぬか。」


どういうわけか奴は何かしらの方法でクールタイム無しでアレを撃てる。

これでは、近づく事もままならない。


「では、その壁はそのまま展開しておけ。

実験の時間だ。」


「何を言ってる?」


再び、奴は銃口を向ける。

しかし、さっきは即時に撃っていたが今度は俺の目ではっきりわかるほどの魔力を込めている。


「さあ、受け止めろよ。

でないと、ここまで出向いた意味がないからな。」


引き金が弾かれる。

目の前が青い光に包まれる。

周りにいくつも落雷が落ちたかのような衝撃と鼓膜が破れたかのうような轟音。

魔力を全開にし、その一撃を迎え撃った。


「……ッ!」


パラパラと音がなる。

足をついていたビルのがなくなっていた。

それだけじゃなく、周囲からもかなりの広範囲で物がない。

大きなクレーターが出来上がっていた。


「高城さんは!!」


高城さんがいたところに視線を向ける。

地面から木の根がドーム状に生え、高城さんを覆っている。

すぐ近くにももう一つ同じような物があり、その中から上代さんが姿を現す。

一瞬、安堵の息を吐きかけるがすぐに手を叩く音で気が引き締まった。


パチパチと土煙の中から奴は現れた。

アレほどの爆発。自分もダメージを負うほどよ物であったはずだが奴には傷一つなく、服にも汚れひとつ存在しなかった。


「よく受け止めた。

やはり、その壁の力は素晴らしい。」


太々しい笑み。

俺の事を敵とすら見ていない。

コイツに敵視させるそのレベルにすら、達していないのだ。

まるで、ここまで努力を奴を倒すために努力わ全て否定されているような気分。

しかし、そのおかげか奴は高城さんの武器をどこかに手放した。


「ふぅーー……。」


やるしかない。

そう思った。

奴の僅かな油断。

そこを狙うしかない。

拳に全ての魔力を集めた。

そして、赤い炎が一気に燃え上がり、オレンジ色の魔力の膜が炎を圧縮していく。


ここで終わらせる!!


地面を蹴った。

自分の身すらも焦がす白い炎の光。


「おおおおお!!!」


奴に目掛けて拳を振り抜くと同時に一点に圧縮された炎を解き放った。

右腕が焼けていく感覚。

この服ですらも、耐えられない熱。

視界が真っ白に染まり、奴を捉えた手応え。


「はぁ、はぁ、はぁ。」


……倒した。


周りの酸素も焼き払ってしまったのか

いくら、呼吸をしても肺は空気を欲していた。

右腕は感覚が麻痺している。

でも、それに似合った成果はあった。


……そう思った。


パチパチと再びあの不快な音が鼓膜を揺らす。


「面白い使い方だ。

良いものを見せてもらったぞ。少年。」


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