第53話

モニター画面に映し出される街並み。

人は誰も住んでいない、形だけの街だ。


「全員待機場所に着いたな。」


今回の参加者である8人がモニターに。

それぞれの位置情報がこの街全体のマップに表示される。

参加者に伝えてあるのは敵の魔石の位置のみ。

チーム間で無線通話用機器を耳につけている。合図が出ればすぐに始まる。


「ゲート・カーはいつもの面々だが、クローズワークスの奴らは誰だ?」

「最近S級に上がったあの子は知ってる。

でも、他の3人は一体誰だ?」


周りのギャラリー達からは戸惑いの声。

この戦いでギャンブルしている人達も戸惑っているだろう。

パソコンでレートを見てもやはり、クローズワークスが勝った方の倍率が高い。

皆んな、僕達が負けると思っているようだ。


「修司。お前、勝つ気あるのか?

心君以外の奴らはC級以下じゃないか!

これじゃあ、訓練にも--」


「まあ、落ち着きなよ。

こういうのは始まってからが面白いんじゃないか。早く始まるの合図だしなよ。」


パソコンに表示される入札確認。

始まる前にそれをクリックし、入札完了と表示された。倍率は20倍か。

そして、始まる1分前になり、受付が停止し、カウントが動き出す。



「作戦通りに行くぞ。

気をつけろよ、霜崎。」


「ああ!」


『3……2……1。開始!』


耳からその音が聞こえらのと同時に駆け出す。

俺がやるべき事、上代さんのセンサーを壊す事だ。

目印は魔力を帯びた花と分かりにくいが空気中に僅かに漂う魔力が位置を知らせてくれる。


「あった!」


咲き始めの青い蕾の花。

その魔力を吸収する。

敵の魔石から少し離れた場所に一つ。

恐らくセンサーの感知内に入った時点で俺の位置は知られている。

もう既に敵は俺の元へと駆けつけているかもしれない。

相手を引きつける為にここからは遠くに離れつつ、敵の魔石周辺のセンサーを壊していく。


バンっ!

そんな銃声が鼓膜を叩く。

背後から飛来する炎の弾丸。


来た!


それを右手で受け止め、魔力を吸収していると見透かされないように握り潰し、即座に建物の間の路地に走る。


まだ、一つしか潰せていない。

対応がやっぱり早い。


路地裏に咲いていた花を摘みとると、今度は目の前に大型の岩の巨人が出現する。

さっきと全く系統が違う魔法。


「四谷。こっちに火蓋さんと岩倉さんが来た。」


『了解。』


二人連れたが俺を脅威と思い込ませなければ、立ち待ち一人は魔石の位置に戻ってしまうだろう。


「……ぉおお!!」


目の前の岩の巨人を拳で粉々に砕く。

魔力を吸収すればなんて事のない脆い岩。

相手には俺の純粋な力で砕いたと思い込ませれたはず。

だが、こっちも一人で動いていると悟られ始める頃合い。


見つけた。


銃口を構える男が建物の上に一人

アレが火蓋さんなら、もう一人の岩倉さんは……!


「ふっ!」


背後から気合が入り漏れ出す声と拳が空気を震わす音が響く。背後からの奇襲だったがギリギリ視界に入り、避けられ、距離を置く。

A級が一人にB級が一人。


「一人か……。釣られたな。

ならば、お前を倒し直ぐに戻らせてもらう。」


「悪いけど、付き合ってもらいます。」


背中の袋に手を突っ込み、刀を抜いた。

岩倉さんは両手に岩のグローブを作り上げる。


格上相手に何分もつだろうか。

それに、相手は近接タイプに後衛タイプが一人ずつ。

火蓋さんを先に狙いに行きたいが岩倉さんに背中を見せればやられる。

蓄積した魔力でどれだけやれるか。

魔力の消費の激しい龍衝はここ1番のところまで温存するべきか……。


そんな考え事をしていると背後からの銃声が鳴り響く。それが結果として、戦いの合図になった。

炎の弾丸は左手で叩き落とす。

しかし、その隙に岩倉さんが距離を積める。

振りかぶられる拳を刀で受け止めた。

だが、足元で重々しい音がなる。

いつのまにか地面に出現していた岩の棘。

それが、勢いよく発射された。


「……ッ!」


大きく仰反り、体制を崩す。

その隙を見逃さまいと岩倉さんは次の拳を振り上げ、流さぬように俺の背後に岩の棘が生成される。

龍衝を使う、使わないの選択肢は俺にはなかった。

使わなければやられると判断し、刀に青い炎を灯す。


「はぁあ!!」


岩倉さんの拳を弾き、背後の棘を砕く。

更に、その攻撃が防がれると予期していたかのように炎の弾丸が上部より二発。

Vの字を描くように刀を振るいその二発の弾丸を撃ち落とすが拳を弾かれて仰反っているはずの岩倉さんは瞬時に体制を立て直すのを視界の片隅で捉える。


瞬きする間に十発打ち放たれる拳。

吸収の魔法と龍衝により、岩のグローブを砕き、やりのけるがこちらの3回の攻撃は一つも決まらない。

互角と思いたいがこのまま、戦い続ければ先に倒れるのは俺だと火を見るより明らかだ。


「龍衝が使えるとはな。

D級と言うのはやはり間違いのようだ。

B級以上の力は持っていると思ってやった方が良さそうだ。」


「はぁ、はぁ……--。」


既にこちらは息を切らしている。

そして、そのB級以上の力も岩の巨人に四発の炎の弾丸と上代さんの花から得た一時的な力。

一度失えば回復しない魔力。

このまま、龍衝状態で戦える時間はそうない。


「こちらも本気で行くぞ。」


先程までとは違う気配を放ち始める。

目が本気で倒すと語っている。


……早く終わらせてくれよ。


別の所で作戦を開始した、3人に向けて心の声を投げた。

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