第2章
第37話
「さあ!!今年もやってまいりました!
ハンターのお祭り!武道大会の季節です!
もちろん、ゲート・カーとの合同出資で賞金は奮発しております!」
40階の訓練場で声高らかに今月のイベント発表が行われている。
それなりに大きな声を出しているがこの場にはいつもの4人しかいない。
「四谷。武道大会ってなに?」
「黒田社長が遊びで始めた企画。
ゲート・カーの社長とは腐れ縁で締め……頼み込んで参加してもらっている。」
「アンタ、言い直すの口じゃなく頭の中でやりなさいよ。」
「え、締めたんですか?」
「やめてよ。物騒だな。
ちゃんと今回は頼んだんだよ。
それに向こうも今回はノリノリだし。
高城光って言う切り札も出して勝つ気満々。
クローズワークスの最強の名前を守る為にも君達には訓練に励んでもらう!」
「一つ質問いいですか?」
「ん?何でも聞いて。」
「いつも、Aチームの方々が武道大会に選抜されるはずですが今回はBチームの俺達に話をしているんですか?」
当然の質問だと思った。
最強の名を守りたいならA級ハンターが主に所属しているAチームの人達に言うはずで俺達にその訓練を武道大会の事を言う必要はない。
「今回はいつものお遊び、しいては一真に対するマウントを取りに行くんじゃなくて合同訓練の意味合いが強い。
だから、今回は僕も一真も出場しない。
それで、君達を選んだ理由は敵と接触した経験があるから。
少しでも、あの膨大な魔力の圧力を経験した人達の方が現場では動けると判断した。」
「御言葉ですがニュースで見た映像からC級の俺達でははが立たないと思いますが……。」
「そりゃ、今のままではね。
だから、大会に向けて敵と接触しても死なないように前準備の訓練を受けてもらう。
Aチームの先輩方もお呼びしたしね。」
「お前、四谷!いつからそんなに貧弱なビビリな事を言うようになった!!」
男の遠吠えにも似た声が響いてきて、巨大なモンスターのような大きさをした人が空気を退け、目の前に立ちはだかる。
「傑、防御。」
「……なっ!!」
「寝惚けてんなぁぁああ!!!」
突き出される巨人の拳が防御した四谷の両腕に衝撃波が生まれるほどの一撃が当たる。
そして、四谷は壁にめり込むほどの速度で吹き飛ばされていった。
「……イッテ。」
小豆畑さんが手を抜いて、俺の防御が完成するのを待ってくれて助かった。
そうじゃなきゃ、腕は無いし意識もない。
「俺はそんな子に育てた覚えはないぞ!
あの、俺は何でもできると息巻いて、自信に溢れたお前の目はどこに行った!!」
「人は変わるんですよ。」
「静香の事をまだ引き摺ってんのか?
ハンターはいつでも死ぬ。いつまでも気にしている暇はないぞ。」
「……ッ!!」
四谷が怒りの声を滲ませる。
両手に黒い霧が集まり、それは二本の短剣の姿を現していく。
今まで一度も見たことがない四谷の魔法で作られた刀身も柄も全てが真っ黒な短剣。
そして、足に魔力を集め、蹴り加速して斬りかかる。
「キレる暇があんならなんでお前はまだC級でいる!なぜ強くなろうとしない!!」
凄まじい硬度を持っている二本の短剣をその太い腕が真正面から火花を散らして受け止める。
「してるさ!強くなろうとしてる!!」
自分は成長している。
魔力の最大放出量を上げて、大きなものが動かせるようになった。
この二本の短剣を生成中でも身体強化の魔法は十分に掛けられる。
「見せてやる!俺が強くなった事を!」
「あー、2人ともいきなり社長を差し置いてドンパチ始めないでよ。まあ、いっか。
葵、前に注文していた君の武器が完成した。」
北川さんが銀色のアタッシュケースを手渡す。
しかし、薙刀が入っているにはひどく小さい普通のケースサイズだ。
「あの、二本も包丁頼んだ覚えはないんすけど。」
アタッシュケースに入っていたのは綺麗な銀色の刀身を普通の包丁よりも随分と刀身が大きい2本が入っていた。
「まあまあ、その武器の説明するから。
柄の先端同士がはまるようになってるから合わせて2回カチって言うまで回してみな。」
「……はぁ。」
ため息か返事なのかもわからない声を漏らして、言われた通りに二本の包丁を合わせて2回カチッと音がするまで回した。
すると、驚くことに柄が伸びた。
そして、それは両方の先端に刃を備えた薙刀に変貌した。
「うほほほほほほ!!!」
「戻すときは逆に捻ればいい。」
2回カチッと音がすると元の二本の包丁に姿を戻した。
「それで次は一回だけ音を鳴らして。」
新垣はノリノリで音を軽やかに響かせ始める。包丁は二本のままだが柄同士がワイヤーで繋がっていた。
「それでは実習として、その包丁の一本に魔力を込めて投擲!!」
「オッケー!!」
地面に目がけて包丁を投げ飛ばす。
普通の包丁を投げてはおよそ絶対に響かない爆発音が盛大に響き渡る。
そして、新垣はワイヤーを伝って手元に投げ放った包丁を戻す。
「葵にぴったりの武器でしょ。」
「うん!すっごくいい!!
社長、まじ大好きだわ!」
「でしょ、僕は気が効く大人だからね。
さて、ではここから訓練の本題に入るよ。
もう既に
葵には
そして、晶には
「「お願いします!!」」
俺と葵は同時に2人の方々に挨拶をする。
「本来は晶には透とやってもらいたいんだけどあの調子だから後でね。
その間、月見ちゃんにみっちりシゴいてもらいなよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます