第28話
「黒田は戦わないか。」
ある程度情報は得ている。
しかし、この目でしっかりと戦っているところを見なければ対策できる相手なのかどうかもわからない。
イラみたいにちょっかい出すのは気が引ける。
彼の魔力量は見ているだけで寒気が走る。
しかし、それ以上にすぐそばにいる男2人。
1人は六神の1人、大地の神から感じる似た気配を感じる。
鼻腔を揺さぶるほどに土臭い。
今までも土臭い奴らは何人も見かけたが彼の匂いは人一倍強い。
だが、それとは裏腹に魔力量が少なすぎる。
黒田の半分、もしくはそれ以下。
そして、もう1人はグーラの奴の匂いが強い。
六神の奴ら以上にアイツの匂いはこの世界で舞っているがあの少年から感じる匂いは他を圧倒する臭さだが溜め込んだ魔力を外に放出している。
アイツが溜め込んだ魔力を外に逃す事はない。
グーラと似て非なる権能を持ってしまったと考えた方が自然か。
それでも、アイツの次元に届かれると面倒い、
……若い目は摘むのは俺の主義に反するんだがな。
この時代、誰が味方で誰が敵かがわからない。なるべく、俺らより強い奴らを減らしたい。叛逆の意志を持ったら危険な奴らはなるべく消しておくに限る。
だが、やはり問題は黒田は消せるかどうか。
……!
誰かが見てるな。
感じた方向から青い目を向ける。
しかし、そこには何もいなかった。
気のせい……いいや違うな。
視界に入った20階程ビルの上。
1キロ近く距離があったが魔力で脚力上げればひとっ飛び。
僅かに熱が残るコンクリートの地面。
ついさっきまでここに誰かが寝転んでいたのだろう。
横長に熱が残っている。
近くに気配はない。
追跡は出来そうにないな。
「目だけじゃないのかよ。
感もしっかりしてやがる。
まったく、めんどくせぇな。」
魔力を内に隠し、人混みに紛れた。
人混みに紛れた理由は身を隠す意味より万が一バレても人混みなら躊躇する、してくれる事を期待しての行動。
……次は体温も消さなきゃな。
「何かあったんですか?」
目の前で急にどこかへ飛んでいってしまった黒田社長が戻ってきた。
その顔はどこか浮かない顔。
しかし、それとは裏腹に口角が僅かに上がっている。
「いいや、この後の飯屋を探しにね。
それよりも三人ともお疲れ様!!
よくやったよ三人とも。心配だったよ。
ぶっちゃけ瀕死になると思ってたからさ。」
「はぁ、そうですか。」
心配とか言っているが俺達がゲートから出てくるまでこの人は寝袋にくるまったまんまだった。
駆けつける準備をしていた風にまったく見えない。
俺が魔力を使い切ってバテて出てきた時に寝袋から手だけ出して「おつかれ〜」っと手を振った時は流石にぶん殴ってやろうかと思った。
「いい経験になったでしょ。
傑は一皮向けたみたいだし。」
自然に纏っている魔力量が上がっている。
それは最大魔力放出量の増加を意味する。
かなり大きく大地を動かしたのだろう
「次のステップは決めている。
今日はゆっくり休んで明日からその訓練を始めるからよろしく。」
「……え。」っとそんな声を漏らすが大抵新しい課題を与えられる人などそんなもんだと無視をする。
「2人は魔力の流動性が良くなったね。」
体の周りの魔力の流れる速度が速くなっていた。魔力の流動性が上がれば出来ることがたくさん増える。
「付与の魔法を扱う葵はその恩恵が大きいよ。魔力を高圧縮する龍衝を付与できるようになったらとてもおもしろい強さになるだろね。そして、晶は吸収した魔力を瞬時に身体強化に還元できる速さが増して今よりずっと戦いやすくなる。
これからも精進するように。」
「うぃーす。」
「はい!」
晶はまだこの会社に入りたてだから心地いい返事を返してくれる。
いつか他の社員みたいに適当になってしまうのではないかとそんな事をふと思った。
「ところで社長、腹減ったんだけど。
私希望は焼肉ね。ガッツリ食べたいわ。」
「それなら焼肉王とかどう?
もちろんコースは一番高いやつね。」
「最初から一番高いコースは強制ですよ。
ああ、それと新しい薙刀支給してください。
壊れちゃったんで。」
「もう手配しといたよ。
明日には届くと思うから。おんなじやつ。」
「グレード上げてくださいよ。
肩が凝って仕方がないんですけど。」
「何級?」
「A級以上。」
「これまた高級品をご所望で。
けどダーメ。扱い難しいし。
葵にはまだ早いよ。」
「心にはS級の装備入り立てで支給したじゃん!グローブと靴!!」
入りたてと言うか私と会った時にはもうそれらを身につけていた。
S級、龍の鱗を特殊加工で繊維に変えた物。
「だって、アレは彼の炎に彼自身が焼かれないための物で扱いもクソもないもん。
それにC級の武器から急にグレード上がると振り回されるよ。」
「じゃあ、B級ください!」
「まったく、じゃあ手配しとく。
扱い難くなったって文句言わないでよ。」
「しゃあ!
これで、腰痛と肩凝りとおさらばだ!」
野太い(しゃあ!)が裏路地に響く。
言われてた通りに北川さんにB級の薙刀の手配をするようにメールを送るのと同時に焼肉王の予約をお願いし、迎えを頼んだ。
「それじゃあ、焼肉王に向けて出発だ!」
久しぶりにテンションの上がった葵をみて口角が緩むのを感じた。
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