第26話
「四谷んとこに新しい奴がはいったらしいな。」
「ああ、そいつ見た事あるぞ。
ずっとジャージのやつだろ?
お前、筋肉の圧やばいから。」
身長は2メートル。
それだけでも圧があるにも関わらず、趣味が筋トレと言うこともあり、浮き彫りになっている筋肉。更にスポーツ刈りの髪型で怖さが増している。
「白菊、てめぇは舐められんなよ。
白髪だが、小さいからな。」
「うるせぇよ。」
言葉はそれだが全く気にしていない声音。
「まあ、お前はその動じない精神力があるから大丈夫だな。」
「昔はコンプレックスだったよ。」
小さい身長を弄られるのは昔はあまり好きではなかった。
だがまあ、ハンターやってると小さいと有利なこともあってかそう言わても動じなくなった。
「知ってる。腐れ縁だからな。」
「仲良いのいい事だけれど周りにもう少し注意を払って。」
長い黒髪をして、赤い刀身をした刀を持った女。基本的にツンツンしているのがこの場にある本人を除いた3人の共通認識だ。
「払ってるさ!」
小豆畑の体が通常の肉体よりも二回り以上に大きくなる。
それが、彼の魔法だ。
「心外だな、月見。
俺はゲートの中で気を抜いたことなんて一度もねぇよ。」
白菊も臨戦体制に入ったのかいつのまにか真っ白な刀身だけの刀を手に持っていた。
「そ。」そう短く月見は言って刀を構える。
「三人とも怪我しないでください。
それに、あなた達の魔法は自分の体にも負担が大きいから無理はしないで。」
「ええ、大丈夫よ。
そらに、新人さんに世話はかけないわ。
でも、もしものことがあったらよろしくね。
日和さん。」
「はい、任せてください。
迷惑かけられる事は慣れていますので。」
私がこんな大きな企業に入れるとは思ってもみなかった。
道門さんを通して入社させてもらえた。
それで、配属されたのはAチーム。
小豆畑さん、白菊君、月見さん。
三人ともA級だ。
何故、私がこんな上の人達と組まされたのか。三人は私の事を拒絶するんじゃないかと思った。
でも、心良く受け入れてくれた。
その三人の役に立つように頑張りたい。
まだ、この上級のゲートで私に出来ることは回復魔法くらいだ。
霜崎さんもクローズワークスに入社したと聞いた。
負けたくなかった。
「じゃあ、俺からいくぜ。」
指の骨を鳴らし、手首をブラブラとした。
彼の戦闘を始める時の癖だ。
「私と白菊君は後に続いて攻めるわ。」
目の前のモンスターは外の世界では見かけないほどの異形の姿をしている。
胴体は人みたいだが足は蛇。魚のような頭に目が四つと鼻と耳はないが大きく左右に裂けた口。
岩肌の様な肌の色をしていた。
しかし、A級ゲートでよく見かけるような姿。
ダンっと音が響く。
巨大な体に似合わない速度。
どのモンスターもそうだが俺の速度には初見で反応できる奴はいない。
「見た目で侮らない方がいいぞ。
モンスタァァァァアアーー!!!!」
顎に目がけてのフルスイングのアッパーからの振り上げられる蹴り。
僅か一瞬で二撃を繰り出す。
「まだまだ!!」
胴体が上に突き上げられたのを見てから尾を掴む。そして、そのまま力に任せに振り回す。
「A級の泣くぞ!」
そのまま、地面に叩きつけた。
はぁ……弱い。
日和が来てから万全の状態で戦える様になっちまったせいだな。
A級ボスがA級と感じない。
「あと、よろしくぅ。」
銃の形をした手で2人を指差す。
「ええ。」
「任せろ。」
2人がボスに刃を突き刺した。
あの2人もきっとA級が弱くなったと感じているはずだ。
ここしばらく、必死な顔を見ていない。
それほどまでに俺らと日和の相性がいい。
バンッ!!
そんな弾け飛ぶ音が響いた。
そして、血の雨が降り注ぐ。
「もう少し静かにやれよ。
それにそんなにバラしたら持ち帰るのに苦労すんのは俺なんだぜ。」
「外皮がとても硬かったんだから仕方ないでしょ。」
ボスは内側から消し飛んだ様に内臓も骨も剥き出しになっていた。
岩肌の様な肌色は赤黒く染まっている。
血油で持ちにくそうだ。
骨が剥き出しになって手に刺さりそう。
「売り物になんのかこれ?
気合い入りすぎだろ、お前ら。
……はぁ、日和が怖がるぞ。」
そういうと、月見は焦った様にモンスターを見て状況を判断し、何を言おうか迷っているのか目を泳がせた。
月見はこの男しかいないチームに女性が入ってきた事に対して物凄く嬉しかったのか日和に気を使いまくる。
「ごめんなさい!
こんなグロい状態にしてしまって。
血は浴びてないかしら!!」
「いえ、離れていたので大丈夫です!」
月見さんはハンカチをもって私の周りを一周し、事細かに血痕がないかを確かめる。
「もし、臭いがついてたらその服の弁償するから!本当にごめんなさい。」
「いえいえ、ハンターなんですから血は付きますよ。それに、汚れたら洗えばいいですし。」
「それでも、貴方はまだ私服!
私生活で着ている物を汚してはダメよ!
ここ出たら社長に早くジャケット届けろって言ってあげるから。」
物凄く真剣な眼差しをして、ポケットからペンとメモ帳を取り出した。
そして、やるべき事と書いて社長に制服を至急届けさせると書いてペンとメモ帳をしまう。
「じゃあ!早く帰りましょう!
こんな、血生臭い所に貴方みたいな可愛い人がいては肌に触るわ。」
そう言って、月見さんは私を抱き抱えた。
「ちょっ、ちょっと月見さん!」
「小豆畑君!後よろしくね。」
そう言ってとんでもない速度で走り始めて、抱き抱えられた私は悲鳴をあげる暇もなく、瀕死の状態でゲートから出た。
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