第22話

鳥頭の獣人。

鋭い鉤爪が特徴的でその爪は地面を砕き、抉るほどの威力を誇っていた。

それだけで、十分強力だが問題は翼。

空中で高速移動しながら攻撃してくる。

それに本能で突っ込んでくるだけでなくヒットアンドアウェイと戦法があった。


俺や新垣は基本的に降りてきた所をカウンターで狙うしか攻撃方法がないが、四谷が次々と鳥人間を撃ち落とす。


「あーー、もう!!

なんで、よりによって鳥なのよ!!

攻撃全然当たんないじゃない!!」


薙刀をブンブンと振り回したいらしいが鳥人間に合わせた攻撃しかできない以上、思いっきり戦うとは程遠い。

ちまちまと一体ずつしか倒せないから。


そして、鳥人間の飛行高度はジャンプすれば届く距離だが相手の得意フィールドに飛び込むのは危険すぎる。


「我慢で肩こり始めるな。」

首をコキコキと鳴らす。

何をするのかと見ていると足に魔力を集中させるのを感じた。


……まさか。


「傑!私少しの間援護いらないから10秒間自由にやるからよろしく。」


「おいちょっと待て。」

「いってきます!!」

四谷の静止を無視して上空に飛び上がる。

そして、鳥人間の一体に飛び乗ると頭部を切り落とした。


「ドンドンこい!!

じゃないと私が地面に降りちまうぞ!!」


鳥人間にとって新垣は絶好の的だ。

無数にいた鳥人間達は新垣に一斉に襲い掛かる。


「霜崎!私の事しっかり見てろ!!

こういう奴らとの戦い方教えてやる!!」


新垣は襲い掛かってくる一体に飛び移り、再び首を切り落とす。

そして、また次々と鳥人間に飛び移って首か翼を切り落としていく。


「ふっ!!」

翼を切られた鳥人間達のトドメを刺していく。墜落したダメージもあって倒すのは簡単だった。


「霜崎!新垣の援護を頼む!!

アイツ、降りるタイミング見失ってやがる!」


そう言うが当の本人は声を上げながら鳥人間達をバッタバッタと倒していく。

いつ、どのタイミングで援護に入ればいいのかがわからなかった。

そして、ゲートに入る前の『背中は任せろ』とか言っていた言葉を思い出す。


「言ってる事と行動違うじゃん!!」

「戦闘は思い通りにいかねぇんだよ!!」

「聞こえてるんだ!!」


恐るべき地獄耳。

周りは鳥人間達の鳴き声で耳はそれでいっぱいのはずなのに。


「四谷!」

「行け!援護は任せろ!!」

「わかった!!」


俺も足に魔力を込めて飛び上がる。

しかし、やはり狙われていたらしく鳥人間の一体が飛び掛かってくるが目と目の間から四谷の放った矢が飛び出してきた。


正確に急所を射抜いた一撃。

モンスターはピクリとも動く事なく地面に落ちていく。


そして、俺も鳥人間の翼を掴み、胴体に飛び乗ると即座に首を切り落とす。


「その刀、やっぱりいいな。

D級でC級を一撃とはいい切れ味だ!

その調子でドンドンやれ!!

私に楽をさせろ!!」


「おう!」

楽をさせろと口で言うが俺よりモンスターを多く倒してやると行動が示している。

負けじと俺も鳥人間達を切り伏せた。

魔力のチャージもかなりの量になり始める。

魔力量なら四谷と新垣に並ぶはず。


「もっと来い!!」

新垣の性格が映ったのかそんな言葉が漏れた。


「……霜崎のやつ動きが良くなってくな。

それに社長には珍しくいい刀あげたのか?」


普通の刀ならあんな風に早く綺麗に切れない。まるで、斬る時に抵抗力がない。

資料で見たアレが魔力の吸収か。


見たことも聞いたこともない魔法だったから実戦で見るまではなんとも言えなかったがかなりいい魔法だと思った。

ゲートの中のモンスターは基本的には魔力で肌を硬化、強化させている。

吸収できるという事は敵の防御力を下げ、自分の攻撃力を上げるという事。

どれほどまで吸収できるか知らないがボスは霜崎を中心に組み立てるのもありか?

まあ、作戦は後で組み立てればいい。


「背後にも気を遣えよ。」

霜崎を後ろから襲おうとした鳥人間を撃ち落とす。


しかし、これまでFやE級ゲートにいただけに戦い方の荒さが目立つ。

霜崎を中心に作戦を立てるのは危険だろうか?


「うおらぁぁあ!!!」

葵の気合の入った声が響く。


暴れるなアイツら。

2人ともなんか楽しそうだし。

新垣のあんな顔は心以来か?


「なんとかいけそうだな。」

2人とも手傷は負っているがゲートに入る前に新垣がチャージした分の回復魔法でこの戦いはどうにか乗り切れそうだった。

しかし、問題はボス戦だ。

同じくボスも鳥人間型だろう。

ボス戦は雑魚戦とは同じようにはいかない。

2人にはカウンターを狙わせて、俺を中心に作戦を立てたほうがいいか?

しかし、一撃にかける。

なら翼に穴あけて落としてからが本番として考えて、そこからどうするか……。


つーか、なんで俺が作戦考えている?

俺より上の会社の頂点がこの場に……

いない。


思い返せばゲート前で寝袋にくるまってその後どうなったか知らない。

頭の中で寝転がりながら手を振る黒田社長の姿が頭をよぎる。


「……死ね!!」

怒りを込めて弦を引き、矢を放った。

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