第19話

クローズワークスのBチームは正確には枠である。Bチームの中に複数のチームが存在し、チーム人数は基本的に4名。

Bチームの仕事はFからC級ゲートの下位ゲートと呼ばれるモノをクリアするのが仕事だ。


「本気で言ってますか?」

しかし、いくらBチームとはいえ危険である事に変わりはない。

ハンターである限り死ぬ時は死ぬ。


「マジ!」

だが、この目の前にいる大分頭の痛い社長は入社一週間の子をBチームに入れようとしている。

まあ、この人の奇行は今に始まった事ではないからいいがこの親指立ててグッとして満面の笑みはガチでムカつくしキモいからやめてほしい。


「どこへの配属ですか?」


「晶はゴリゴリの近距離タイプだからね。

すぐちゃんとこにお願い。

あの子は近遠距離両方ともできるし、頭いい子だからさ。

晶との相性も抜群にいいと思うだよね。」


「わかりました。」

パソコンでその情報を打ち込む。

すぐちゃんというのは四谷傑よつや すぐるの事だ。

班長、四谷傑の名前をクリックすると四枠表示される。

そこに霜崎さんの名前を打つ。

ここに打ち込み情報を更新すれば自動で変更が掛かった人達にメールが送信される。

この会社のいいところはありとあらゆる仕事が簡略化されてるから本当に仕事が楽でいい。


「後もう1人はどうしますか?

今現在、四谷さん、新垣さん、霜崎さんの3人になってます。

枠が1人余ってますが。」


そう聞くと社長はキョトンとした顔をした。

「え?僕が入るに決まってんじゃん。」


「社長はお一人でクリアできるじゃないですか。お一人でA級ゲートを梯子した方が会社のためだと思いますよ。」


初めは冗談だと思ってそう返答した。

しかし、どうやら違うらしい。

ニヤニヤと私が生理的に受けつけない笑顔を浮かべていた。

これは社長にとっての嫌な意味で本気の顔だ。


「引率はつけないとさ。」

「修学旅行ですか?」


***


「すぐっちやーーーーーん!!」

25歳の男が俺の名前をキモい呼び方をして飛び掛かってくる。

二年前に入社してからアレはあんな感じだったからもう慣れた。


「ハァァァーーーーーーーグ!!」

そして、このハグは避けてもいい事、社長だろうが無視していい事も理解している。


身を屈めると黒田社長は上部を通り過ぎていく。……見てるだけで頭が痛かった。


「こんにちは、北川さん。」


「こんにちは、四谷さん。

どう、最近は元気にやってる?」


「はい。それなりに元気にやっています。」


「そう、よかった。」

北川さんはニコッと笑ってみせる。

どんな人にも気にかけて社会人として本当に立派な人間で尊敬できる人だ。


「すぐっちゃん。

対応の仕方が逆逆!!

その挨拶とかさ僕にやるべき事だと思うんですけど!!」


「よかったじゃないですか。

相手にされなくて。社員一同、社長を無視するというスローガンができている証拠です。」


「してない!そんなスローガン僕掲げた覚えないし、知らないんですけど!!」


しかし、そんな人なのに社長への対応はとても雑とういうギャップがいつ見ても凄い。


「社員のみにメールで配送したんですから。

社長が知っていたらメール機能がぶっ壊れていますよ?」


「うん、君達が社長に誰一人チクるという裏切り行為をしない結束力の強さが確かめられてよかったよ。」


「そうですよね。

では、戯言はそろそろお辞めにして本題の話をしましょう。」


話の切り替えの速さは最強のハンターよりも早いものでテキパキと資料を机の上に広げ始め、椅子に座るように促された。


「それでは、こちらが新人社員の情報です。」


北川さんに紙を一枚手渡され、目を通す。

D級ハンター。

使用魔法は身体強化のみか。

戦闘記録から近距離型。

道門さんのところで2年間活動。


至って平凡な人。

俺の第一印象はそれだったが黒田社長が気にいるという事は何かしらあるのだろう。


「すぐっちゃんには苦労してもらう事になると思うけど僕も君の班に同行するからさ。

安全性は期待していいよ。」


そうは言うがこの人が同行した時、死ぬギリギリになるまで助けてくれたことなど一度もない。

黒田社長の回復魔法はどんな状況でも回復させることができるから安全かもしれないが安心はできない。


「まあ、葵がいるから回復、安全性は大丈夫だと思いますけど。」


この場にいないもう一人のメンバー。

新垣葵はいい回復魔法使いだ。

しかし、それなりに癖が強い。

社長と葵の癖が強い二人。

どうか、まともな人であってくれと霜崎晶と言う人に願うばかりだ。


「まあまあ、そう言わないでさ。

回復魔法を使える人が多いのに越した事はないんだからさ。

よろしく頼むよ、すぐっちゃん。」


「はい、取り敢えずはわかりました。」


「よし!ではまた追って連絡する近々ゲートに送り出すから訓練は怠らないようにね。」


黒田社長は席から立ち上がる。

俺も目の前の資料を部屋に持ち帰るためにまとめた。


「じゃあ、葵にもよろしく伝えといて。」

そう言い、コツコツと革靴で楽しそうな音を奏でながら鼻歌を歌い歩いて行った。



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