続ける、続けない
シヨゥ
第1話
「ひとつのことに力を注ぐべきだ? 誰がそんなことを決めたんだよ」
兄が言葉を荒げる。
「定年を迎えるまで同じ会社で勤め上げる? そんな古臭い考え誰が信じるよ? 信じた結果リストラされたんだろうが」
転職を繰り返す兄を諭すために父が放った言葉が発端だった。
「ちょっと言いすぎよ」
「頭ごなしに自分の考えを押し付けようとした親父が悪いんだろうが」
売り言葉に買い言葉。母の言葉は意味をなさない。当の父親はここまで怒るとは思わなかったのか視線を左右に泳がせてこちらに助けを求める始末だ。
「俺はやりたいことをやる。やりたい時にやらなきゃその気持ちがぶり返すことはないからな。今の気持ちは今にしかないんだ。やりたくもねぇのに出来るからやる。そんなつまんねえ親父みたいな人生は御免だ」
ここまで貶されても父は返事できそうにもない。
「何も言ってこねぇってことは俺の生き方に文句ないってことだな? なぁ!?」
兄が凄むと父は首を何度も縦にふる。
「二度とこの話をするんじゃねぇぞ!」
そんな父にそう叫ぶと兄は家を出て行った。
「あんたっていう人は……」
その後ろ姿を見送ると母はそう言ってため息をつく。たしかに父としての威厳は地に落ちた感じはある。ただ僕としては父のように1つのところで勤め上げたい気持ちが強い。
これはどちらが正しいというものではないと思う。どちらが好みかという話なのだ。
対極にいる父と兄。どちらかが戦端を開けば勝ち負けがつくまでぶつかるのは当然の結果。ただワンサイドゲーム過ぎた。それだけが悔やまれる。
続ける、続けない シヨゥ @Shiyoxu
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