どろぼうコボルド

1、妙雅、かつやくする


「落ち着かぬ・・・。」

 鬼どもの神、さんぽをする。

 浮かぬ顔をし、フラフラと。

「どうにも、落ち着かぬ。何かをしたい。だが、何をしたいのか自分でわからぬ」

 鬼神。

 妙雅に乗って空を飛んでから、ずっとこんな感じ。

「さんぽをしても、本当にわからんことは、わからんからのう・・・」

 と、そこに。

 ぶーん・・・と、たこが飛んでくる。

 たこ。8本足竹トンボの、空飛ぶからくり千里眼である。

<こんにちは。陛下>

「なんと? 息子かと思うたら、妙雅の声ではないか」

<はい。三男殿に1機お借りして、実験をしています>

「実験とな?」

<はい。私も空飛ぶユニットが欲しいと思いまして。造る前に、まずはたこを試運転というわけです>

「ほほう」

<同時に建築ユニットも展開中です。いま玄関に到着しました>

「なんでじゃ? それも実験か?」

<いえ。玄関先を整備してほしいと、姉上に頼まれまして>

 妙雅が『姉上』というのは、目がひとつしかない王妃のこと。つまり鬼神の妻である。

「ああ。そう言えば、草ボウボウだったからのう」

<はい。いま打ち合わせ中です>

「いま?」

<はい。私は、自分を分割できますからね。

 この私はおじちゃんとしゃべり、別な私が姉上と整備の相談をするというぐあいです>

「便利な奴だのう」

<おじちゃんはなにをフラフラしてるんですか?>

「うむ・・・」鬼神は苦い顔になった。「おじちゃんは、悩んどるのだ」

<はあ。お顔に似合いませんね>

「おまえなあ! もうちょっと言葉を控えたほうがよいぞ」

<大丈夫です。他人には控えてますから。それで、なにを悩んでるのです?>

「それが、自分でもよくわからんのだ」

<はあ?>

「モヤモヤした悩みでのう。どう説明したもんか、自分でもわからんのだ。

 ま、気にせず、じっけんをつづけるがよい」

<はい。ではちょっと飛んできますね>

 妙雅はそう言い、たこはまた、ぶーん・・・とうなりながら上昇していった。

「若々しいやつだ」鬼神はつぶやいた。「いろんなことを試し、いろんな人にぶつかり、生き生きとしておる」

 そしてしょんぼりした。

 ため息をつき、くぼみの地をあてどなく歩く。


 半刻(1時間)ほど、フラついておったろうか。

 ぶーん・・・! たこが急降下してきた。

<陛下。緊急事態です>

「うん?」

<あ、しばらくお待ちください>

「は?」

 ぶーん・・・。目の前に浮遊しとるたこを、鬼神は見つめた。

「なんじゃ? 何があったのか、説明せよ。妙雅」

<はい。制圧!>

「なんだと?」

 鬼神はシャキッと目が覚めた。

 だが妙雅の応答がなく、状況がさっぱりわからん。

「おい妙雅、どうなったのだ!」

<・・・陛下、失礼いたしました。解決しました。けが人はなし>

「さっきの、制圧というのはなんだ?」

<手一杯の状態であっちこっちに応答しようとして、取り違えてしまいました>

「とりちがえ?」

<次男殿に言おうとした内容を、間違って陛下に言っちゃったのです>

「ははあ。会話先を間違ったということか。で、結局、なにがあったんじゃ?」

<はい。報告します>

「うむ。戻りながら聞こう」

 鬼神。

 工房に向けて、スッタラスッタラ走り始めた。

<待って待って待って! 追いつけません>

「のろいのう」鬼神イラつき、たこを引っ掴む。「私が運んでやろう」

<ぎゃあ!>妙雅、わめく。<やめて! 放して! 目が回る! ぎゃあ! ぎゃあ!>

「なんだ、からすみたいに騒ぎおって」鬼神、手を放す。

<乱暴な! 私が中にいるときは、急に掴んだりしないでください!>

「じゃあそっと掴むわい」

<やめて! 壊れる! 指一本触れるな!>

「ええい」鬼神、さらにイライラする。「なら先に行け。全力で飛ぶのだ」

<はいはい>

 たこ、飛ぶ。

 ぶーん・・・。

 のろい。

 鬼神イライラする。

「早う行かんか!」

<これで全力です。報告します。工房に、どろぼうが入りました>

「なんだと!?」

<犯人はすでに捕縛ずみです。被害も、おやつをつまみ食いされた程度です>

「そ、そうか・・・!」

 鬼神は安心した。

 どろぼうと聞いて逆立ったうなじの毛が元に戻るぐらい安心した。

<時系列に沿って報告をしますと、> 

 妙雅、気取って言うには、

<玄関先に停めていた建築ユニットが、2人組のどろぼうを発見しました。

 どろぼうども、建築ユニットのことはただの石像と思ったようです。調べもしませんでした。

 私も、石像のフリをして観察しました>

「ははあ」

 石像のフリをしたというが、たぶんギョロリと睨んだんであろう。

<どろぼうが玄関前でウロウロしているあいだに、私は姉上に通報。

 姉上の指示で、空飛ぶ一族の大人を緊急招集しました。

 どろぼうはノックもせず、玄関から侵入しました>

「扉は・・・ああそうか、開けっ放しだったのか」

<はい。開けっ放しでした>

 玄関の大きな扉は非常に重たく、鬼神の息子たちでは開け閉めがかなり大変なんである。

 それで、めんどくさがって開けっ放しにされることがよくあった。

<どろぼうどもは、玄関で釘などを盗み、食堂でつまみ食いをし、鍛冶場へ入りました。

 私は建築ユニットで動きを確認し、逐一みんなに報告しました>

「よく気付かれんかったのう」

<あらかじめ回り込ませて、ピターッと静止してましたからね。石像だと思ったようです>

「よくやった。にしても、間抜けなどろぼうだわい」

<私たちは姉上の指揮によって鍛冶場を包囲し、制圧を開始しました。

 長男殿と鬼神台で出口をふさぎ、姉上がワッと大声を浴びせて賊をひるませました。

 そこで壱号・弐号と私の建築ユニットが体当たりをし、次男殿から五男殿の4人が賊を取り押さえたのです!>

「おお!」鬼神はこぶしを握り締めた。「よくやった!」

<えへへ。みんなの力です。

 まあね? 私もね。自分でもよく動けたと思います。

 姉上にも『妙雅の目と通信が役に立った』と褒められましたね>

「まさにじゃ。大活躍だな、妙雅」

<ありがとうございます。まあ、相手はコボルドでしたから。脅威はさほど>

「こぼるど?」

<はい。2人組の、どろぼうコボルドです>


2、どろぼうコボルド


 コボルドという種族も、いまではいろんな物語に登場する。ですからみなさんも知っておられるかもしれん。

 ですがあなたの知っておるのとなんかちがいがあるかもしれんので、説明をします。

 コボルドは、いぬです。いぬだが、立って歩き、言葉を話し、手でものを持つ。

 背丈は人間の半分しかないが、勇敢でよく鼻が利く。

 祖先は、犬の女神。

 自分の種族を持ちたいと思った犬の女神が、仲の良い猿の神に相談をした。

「猿の神よ。ものまね巧みなヒューマンの神よ。私もいよいよ、自分の種族が欲しくなりました」

「犬の女神よ。いまだ種族を持たぬ神よ。ならば、私たちで子供をつくりませんか」

「それはうれしいご提案です。さっそくつくりましょう」

 生まれたのがコボルド。いぬだが、さるのように腕を使う生きもの。

 コボルドの神話によれば、初めのコボルドはとてもでっかい、おおかみであったという。しかしドワーフと戦争になり、いろんな卑怯な作戦を使われて、負けた。故郷を失い、放浪生活。食べるもんもロクにない。そのせいで、身体はどんどん小さく萎んで(しぼんで)しもうた・・・。

 ただし、この神話には反論があります。

 巨人の記録した石版に『コボルド。手にもの持つ小いぬ』という説明がある。同じ時代の記録に、ドワーフは登場しない。

 ドワーフがこの世に居らん段階で、すでにコボルドは小いぬだったというわけです。

 おっと、勇敢なるコボルドの皆さん。けんかはごめんこうむりますよ。私は勇敢じゃないのだ。コボルドや、鬼神とはちがってね。


「歩く小いぬか。まったく、この世は私の知らんことだらけだわい」

 鬼神は走って工房までもどった。たこは<待って待って>と言うたが、置いてきぼりである。

 目がひとつしかない妻と合流。

「妙雅から聞いた。無事か」

「はい。みな無事ですわ。犯人はこちらです」

 案内されたのは、工房の一室。

 戦争のとき、捕まえた魔術兵を閉じ込めておった部屋である。

 でっかい部屋に。ちっちゃいコボルド。

 2人とも、茶色のいぬであった。鼻面だけ白いのも一緒。目が真っ黒でくりくりしておるのも一緒である。その毛の上から、チョッキとパンツを着ておる。ショートソードとリュックサックも装備しとったそうだが、これは当然取り上げられておる。

 縄で縛られた2人。1人はワンワンと吼えかかり、もう1人はギロリと鬼神を睨んで来おる。

「ワンワン! 殺すなら拙者を殺せでござる!」

「おまえたちが、どろぼうか?」

「ウオンウオン! 侮辱でござる!

 我らは冒険者! これは、恐ろしい地震の巨人を倒し、財宝を獲得するクエスト(探索行)にござる!」

「フーン」

 鬼神。

 ドアを閉めた。

「なんのこっちゃ。話の通じん奴だ」

「自分のことを英雄と思っているようですわ」目がひとつしかない妻は怒っておる。「ばかな小いぬです」

「さて、どうしたもんかのう」

「被害は小さいものです。ですが、どろぼうですから。ただで放すわけにはいきませんわ」

 食堂にみんなで集まる。

 お茶をしながら、会議した。

 すると四男がこんな提案をした。

「父上。いえ、国王陛下。裁判をしてはどうでしょうか」

「さいばん?」

「どろぼうを訴えるものと、どろぼうの立場を説明するものに分かれ、議論をして、多数決するのです」


 四男が説明した『裁判』は、この当時のものです。

 多数決だから、親類縁者が多いほど有利になるという裁判だ。現代の裁判とは、だいぶちがいますね。

 現代では『裁きは法によるべし。数によらず。力によらず』という。これは、仲裁の女神ジャスティスの教えです。

 この時代には、女神ジャスティスはまだこの世に居らず、裁判は多数決によって行われたのです。


「ふむ。ではその裁判とやら、やってみるがよい」

 鬼神はそう決めて、役を割り振った。

 『判事』は四男。これは裁判の進行役である。

 『訴え人』は目がひとつしかない王妃。巨人の国の受けた被害と、求める刑を訴える。

 『弁護士』はエスロ博士。コボルドの事情を説明して、双方の理解を助ける。


 鬼神は、それ以上は口出しせんかった。

 役を割り振っただけで、裁判にもその後のコボルドの処遇にも、鬼神は口出しせんかったのである。


3、裁判と、その後


「このコボルドどもは、勘違いをしておったのですえ」

 エスロ博士、弁護をする。

 博士も『なんで私が』とは思ったかもしれん。だが、いたって真面目にやってくださったんである。

「彼らは、ハイエルフの都、月見ヶ原(つきみがはら)にて、悪いスカルドに、うそを吹き込まれた。

 1、巨人の国は魔物の国で、地震を起こして人や馬を殺す悪い巨人が住んでおる。

 2、巨人を倒せば英雄になれる。

 3、目もくらむほどの財宝が手に入る。

 ──このように騙され、冒険のつもりで、犯行をしてしもうたのですえ」

「異議がありますわ」目がひとつしかない王妃が反論。「その主張が事実かどうか、証拠がありません」

「異議を認めます」と判事の四男。

「ワンワン! なんででござるか! ホントのことでござる!」

 ・・・と、こんな感じである。

 コボルド2人のうち大きいほうは「なんででござるか!」「侮辱でござる!」などと不規則な発言をばんばんした。

 しかし小さいほうはじーっと周囲を睨むだけで、声は出さんかった。

「このコボルドどもは、武器を差し、冒険者と名乗って、狼藉(ろうぜき)をしました」

 目がひとつしかない王妃が、訴える。

「武器を差す者には、敵味方をよく確認する義務があるはずです。

 また、工房の宝に目がくらみ、次々に盗み取ったことは、言い訳できません。ただのどろぼうですわ」

「せ、拙者は・・・!」

 コボルド、なんか言い返そうとするが、言葉途切れ、尻尾垂れる。

「このどろぼうに対し、巨人の国は、盗もうとした財宝の20倍の宝を差し出すことを要求します。

 それができない場合は、1倍につき1年の労役(ろうえき)をさせます」

「騙されたということ、酌量(しゃくりょう)すべきですえ」エスロ博士が弁護する。「20倍ではなく、10倍ではいかがか」

「15倍までなら、譲ってもかまいませんわ」

「どっちみち無理でござる!」

「静粛に」四男がさえぎった。「それでは15倍として、多数決を取ります」


 結果。

 コボルドに味方する者、3票。コボルド2人とエスロ博士である。

 巨人の国に味方する者、40票以上。巨人の国の国民全員である。空飛ぶ台もこっちに投票した。

 まあわかりきった結果である。多数決だし。


 コボルドども、支払い能力まるでなし。15年の労役が決定した。

 さて、何をやらせるか。

「どんな仕事が得意ですか?」と四男が聞いたら、

「拙者、穴を掘るのが得意でござる!」という返事。

 それで四男、巨人の王のところへ行った。

 裁判には関わっとらん巨人の王は、鬼神となんかしょうもないことでけんかをしておった。

 けんかの内容はどうでもいい。いつものことである。

 四男、気にせず割って入る。

「じじ上、このへんに、穴を掘ってもよい鉱山などはありますか?」

「わしが子供の頃、遊びで掘ったやつがある」

「労役で掘らせてかまいませんか」

「かまわんぞ」

「なんでそんな、造り散らかすのだ」鬼神が突っ込んだ。「片付けんか」

「うるさいんじゃ。穴を掘って、何が悪い」けんか再開である。


 コボルド2人には、この、ちょっと離れたところにある鉱山での採掘が命じられた。

 2人は真面目に働いた。逃げ出したりもせず、わずかな量だが鉱石を巨人の国に収めもした。

 しかし、ここで予想外のことが起こった。

 1年もせんうちに、小さいほうのコボルドが妊娠。ぽこぽこ子供を産んだのである。

 なんとこの2人、男女のカップルだったんである。

「冒険が成功したら、家を掘って求婚するつもりだったんでござる!」

「家を・・・掘る?」

「判事殿、コボルドは自分が掘った穴に住むんでござる!」

「そうですか。しかし、妊娠中とは知らず、厳しい労働をさせてしまいましたね」

「御心配には及びませぬ」無口だった女コボルドが、珍しく応答した。「私どもコボルドは、妊娠中でも活動できますゆえ」

「食うものいっぱい、眠る部屋はあたたか、身に余る厚遇でござる!」

「・・・そうですか」

 生まれたもんはしょうがない。

 四男は2人の結婚式をしてやった。労役も1カ月は免除とした。

 さらに巨人の王に許可を取って、鉱山の近くに家を建てることも認めた。

 するとコボルドの夫は大喜びで穴を掘り、1カ月で洞窟住居を掘り上げてしもうた。

 人間では潜り込めんような、うさぎの穴のごとき住居である。

「窮屈ではないのですか?」と四男が訊くと、

「出入り口は狭い方が、どろぼうにやられず安全でござる!」だと。


 以来、コボルドどもは毎年のように子を産んでは増え、産んでは増え、あっちゅう間に巨人の人数を超えてしもうた。

 四男が鉱山に行くと、子供コボルドがワラワラと群れてきて、もはやコボルドの国のごとし。

 これを聞いて、巨人の王。怒り出した。

「増えすぎじゃ! ねずみか!」

「じじ上は、コボルドが嫌いなのですか?」

「嫌いじゃ! あやつら、いつまでもわしのことを『地震の巨人』とか言いおる」

「ははあ。・・・男の子は順次追い出しとるようですが、女の子は家にいるもんだそうで」

「目障りじゃ。どろぼうを繁栄させるなど、おかしな話じゃ。追い出せ!」

「そんなことはできません!」

 2人が揉めておると、三男と五男が提案を持ってきた。

「じじ上。弟よ。ええ案があるんじゃ」と三男。「五の弟が思いついたんじゃが」

「どんな案じゃ。言うてみよ」

「経済です。じじ上」と五男。

「なんじゃ? けいざいとな」

「まず、あのコボルドどもは、じつに真面目に労役をしております。

 そろそろ、信頼してやってもよいと思います」

「・・・。」

「コボルドが増えるのは、母上が食料をたんまりくれてやっておるからです。

 食うものがいくらでもあると、コボルドはどんどん増えるのだそうです」

「だからなんじゃ」

「そこで、労役以外でも、自由に採掘してよいと認めてはどうでしょう。

 出た鉱石には、値段をつけます。

 母上がくれてやっておる食事や衣服にも、値段をつける。そして、交換させるのです。

 こうすれば、ブラブラしておる子供に仕事を与えることができます」

「女子供に採掘をさせるのか?」

「コボルドの奥さんが言うには、女は細工物が得意とのことでした」

「ああ、そういえば」四男がうなずいた。「銀細工はとてもいい出来ですよ、じじ上」

「ありゃ銀じゃない。磁力銀じゃ」と三男。「ともかく、ハイエルフには売れると思うわい」

「山を取られるんじゃないか?」

 巨人の王は渋ったが、議論の末、許可をした。

「・・・まあ、ええか。使う予定もない山じゃし」

「奴ら鼻が利くで、番犬にもなるしのう」三男は考えの深いところを見せた。「敵に回らんとは言えんが」

「よい」巨人の王は(´・ω・`)こんな顔になって言うた。「そのときは、わしがつぶす」


 コボルドどもは、この決定に喜んだ。

 しかし、これと同時に、残念な事が起こった。

 ござるござると元気だったコボルド(父)が、突然倒れて、死の床についたのである。

 四男五男が見舞いに行くと、奥さんはさびしそうに教えてくれた。「寿命ですわ」

「なんですと? ご主人はまだ、お若いのでは?」

「私どもコボルド、人生30年というところ。

 主人は25。少々早いですが、これも運命でございましょう」

「そうでしたか・・・」

 ご主人はもう口もきけぬほど弱っておる。

 四男がよく見れば、毛もだいぶ薄く弱々しくなっており、いつもは濡れておる鼻がすっかり乾いておった。

「私も、どうやら労役の終わるまで持ちそうにありません。

 15年を迎えず倒れること、まこと申し訳ございませぬ。

 ですが、お約束は必ず果たします。息子と娘に引き継ぎを命じておりますゆえ」

「いえ、奥さん。そこまでしなくていいのです。親の罪は、子の罪ではないのだから」

「いいえ、やりまする」

「やめてください」

「やめませぬ」

 困った四男。持ち帰って、相談した。

 鬼ども、ツノ突き合わせてあれこれ考えた。

 出た結論を、四男は急いで死の床のコボルドに持ってゆく。

「あなたがたは、これまでよく労役を務めました。

 このこと、また、寿命と体調の悪化も考慮して、さらなる酌量が認められました。

 労役は短縮。本日をもって終了します。2人とも、もう、どろぼうではありません!」


 そういうわけで。

 どろぼうコボルドの夫婦は、寿命の間際になって、残りの労役を赦された(ゆるされた)。

 その子孫は、巨人の王の小さな鉱山で、採掘をして暮らすようになったという。


※このページの修正記録

(読み直したときに印象が変わるぐらいの規模の変更のみ書いてあります。単純ミスの修正(語尾を直したとか)は書いてません。)


2022/06/22

「!! 3、裁判と、その後」

 文章のつながりがおかしかった部分を修正。↓のようになっていた部分です。

 > 「どんな仕事が得意ですか?」と四男が聞いたら、

 > 「拙者、穴を掘るのが得意でござる!」という返事だったからである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る