空飛ぶルーン魔術師(前)

1、エスロ博士、きこくする


 エスロ博士が、帰国することになった。

 本人の希望である。命令とかではない。

 しかし、鬼神は心配した。

「大丈夫なのか? 御国は内戦中だし、博士の研究を狙う者も多かろうに」

「はい。つい先日、我が氏族の土地も戦場になったと、手紙で知らされました。

 ですが、危険であるからこそ、私はもどらねばならぬのですえ。

 魔術師は故郷・任地を守るものですに」

「そうか・・・」

 鬼神。

 目がひとつしかない妻と、相談する。

「どうやら、魔術師の誇りということのようだ」

「それでは、引き留めるわけにいきませんね・・・」

 というわけで、博士の出国は、速やかに認められた。

 しかし。

<帰国だなんて、とんでもない!>

 妙雅が、猛烈に反発。

 建築ユニットでばたばたと地団駄(じだんだ)を踏み、博士のローブにしがみつく。

<あなたは敵だらけなのです! 絶対にだめです! 味方の側を離れては!>

「・・・妙雅」

 エスロ博士もこれにはびっくり。

「落ち着いたら、また来るに」

<だめ!>

「妙雅、ひかえよ」鬼神も口を出す。「魔術師には、故郷を守るものの誇りがあるのだ」

<誇りなんて、盾にも剣にもなりません!>建築ユニット、がばっと博士に抱き着く。<絶対帰しません!>

 さらに、空飛ぶ台の一族まで、ワラワラと部屋に入ってきた。

 エスロ台、壱号、弐号、教育中の子供3台。ワラワラワラワラワラワラと博士の周囲を固めてしまう。

 ただ1台だけ、鬼神台は同調をせず、後からのそっと入ってきて、鬼神の横に止まった。

「相棒よ。えらいことになったぞ・・・」

 ぶわっさ。鬼神台、重々しくうなずいたようである。


 この猛烈な引き留め工作のせいで、博士の帰国は丸1日ずれた。

 とはいえ、博士も一度決めたら曲げぬ御方。結局、帰国してしもうた。


「あいつら、えらいゴネましてのう。子供みたいだったぞ」

 鬼神が、巨人の王にそんな風に告げたところ。

 巨人の王。黙り込んだ。

「どうした義父上? 義父上まで、博士が恋しくてたまらんのか」

「・・・ばかなことを申すな」

 巨人の王は難しい顔のままである。

「わしには、空飛ぶ一族が、わがままだけであんなことをするとは思えぬ」

「わがままでしょうが。博士の邪魔をして」

「あなどるんじゃないわ!」

 巨人の王、鬼神を一喝する。

「妙雅は、ハイエルフの本を片っ端から読破しておる。軍学から魔術から歴史からお笑い本まで、何百冊もじゃ。

 エスロ博士が持ち込んだ本は全部読み、弟子どもが持ち帰ったのも全部読んどるのじゃ。

 賢者の直観のごときものが、あの子にはあったんじゃないか」

「そんなにか・・・」

 鬼神は妙雅を見直した。

「しまったのう。義父上にも相談するべきでした」

「いや。陛下の判断、間違いとは思わぬ」巨人の王、ため息。「ただ、妙雅の読みも当たるのではと、心配なだけじゃ」


 帰国したエスロ博士がどうなったか。

 1週間もせんうちに、恐ろしい展開となったことが判明する。


「エスロ博士が、死刑になってしまいます!」

 早朝。

 巨人の国に駆け込んできたハイエルフの男が、そんなことを叫んだ。

「なに?」鬼神おどろく。「いったい、どういうことだ。そんな不吉なことをわめくおまえは、何者じゃ?」

「私はネストール。かつて博士の助手をしておったものですえ。

 いまは魔術大学長の下で、書記をしておりまする。

 博士は、帰国したところをいきなり捕らえられました。巨人の国と密通したという疑いです。

 ろくな証拠もないまま、強引に多数決が行われ、死刑が決まってしまい・・・」


 多数決。

 前回もお話ししましたが、この時代、ハイエルフの裁判は、多数決でした。

 証拠があろうがなかろうが、多数派が有罪と言えば、有罪になってしまう。そんな時代であったのです。


「それは大変じゃ! すぐに──」

「待て」巨人の王が鬼神をさえぎった。「確認をする。陛下は何もしゃべるな」

「なに?」

「私がお相手をしますわ」と、目がひとつしかない鬼神の妻。

 鬼神がぽかーんとしとるあいだに、巨人の王は部屋を出てしまう。妻も男を連れて部屋を出てしまう。

 部屋には、長男と妙雅の建築ユニットも居ったが、これも妻についていってしもうた。

 ・・・なんで建築ユニットが部屋に居ったかって? それはほら、どろぼうコボルドの一件だ。あれで、妙雅の見張りとしての有能さが認められた。工房に、建築ユニットを常駐させるようになっとったのです。

 ともあれ。

 あっちゅう間に、鬼神以外、みーんな部屋から出ていってしもうた。

「・・・は?」鬼神困惑。「おいおい。なんで、私をのけものにするのだ」

 そこに三男がやってきた。

「なんじゃ? 騒々しいようじゃが。なんかあったのか」

「おお、息子よ。聞いてくれ。じつはこうなのだ」

 鬼神説明。

 三男ため息。

「はあ。父上。どうせまた、不用意なことをしゃべったじゃろ」

「なんだ、ふよういとは」

「すぐに助けに行くから、あんしんせよ! とか、言おうとしたんじゃろ」

「うむ、言おうとした」

「やっぱりのう・・・。父上よ、その男、これまでに会うたことはあるのか?」

「いや、初めて見るが」

「先触れはあったか?」

「いや、なんもないが」

「そういうことじゃ」

 巨人の王が部屋にもどってきた。「だめじゃ。博士も学長閣下も、会話玉に出ぬ。確認できぬ」

「なんの確認です?」

「ばかめ。あの男の身元を確認しようとしたのじゃ」

「・・・ああ、そういうことか!」鬼神、やっとわかった。「あいつがうそをついとるかもしれんと?」

「いまごろわかったのか」

「いまごろわかりましたわい。ばかですまんのう」

「かまわぬ。ばかなのはわかっとる。それで国王陛下よ、どうする?」

「どうすると言うて、そりゃあ、どっちかわからんのだから、悪い方にそなえねば──」


 ず、ご、ご、ご、ご、ご、ご、ご、ご・・・


「ん?」

 鬼神の鋭い聴覚が、かすかな響きを聞きつけた。

「いま、音がせんかったか?」

「なんの音じゃ?」と三男。

「なんも」と巨人の王。

「・・・。」鬼神、しばらく考える。「・・・そうだ。妙雅だ。妙雅が浮かび上がるときの音だ」

 こん、こん。今度は、ノックの音。

「・・・誰じゃ?」と三男。

「コボルドの妻です」

「取り込み中じゃ。帰れ」巨人の王、コボルドには冷たい。

「じじ上。言い過ぎじゃ。何の用じゃ?」

「判事殿とお約束していた、磁力銀の細工のサンプルをお持ちしました」

 三男ドア開けてやる。

 コボルドの奥さん。背伸びして、三男の手に銀色の髪飾りを乗せる。

「それと、異変の報告がございまする」

「言うてみよ」と鬼神。

「陛下に申し上げます。私、いま玄関を入る直前に、黒い大きなものが空を横切るのを見ました」

「──いかん!」鬼神飛び上がった。「妙雅! あいつ、飛び出しおった!」


2、妙雅、飛び出す


「相棒!! 表へ!! 回れ!!!」

 鬼神。もんのすごい大声を出す。

「うわあ」三男びっくり。「きゅ、急になんじゃ?」

「妙雅が飛び出したのだ! やらかす前に止めねばならん。私は追う。おまえは母上に伝えよ!」

 鬼神。

 風のごとく走り、玄関を出る。

 一拍たりと間を置かず、ついて出てくる赤影あり。

 アーマード・鬼神台!

 かぶとがにアーマーで身をよろった、鬼神の相棒!

 阿吽の呼吸! なんも言わんでも、トゲトゲしき甲羅に槍のごとき尻尾、がっちり装備済み!

「妙雅が飛び出した」鬼神素早く騎乗。

 ぶわっさ。鬼神台素早く浮上。

 あっちゅう間に、大きな扉よりも高く舞い上がる。

 ぶわっさ!

「うむ、ゆけい!」鬼神、伏せる。

 鬼神台、『力』のルーンにて爆発的加速!

 妙雅の飛び出した方向へと、青空を突っ切る!

「・・・おまえ、妙雅の行った先、知っとるのか」

 ぶわっさ。

「そうか」

 考えてみれば、空飛ぶ台同士は互いに会話ができるのだ。知っておっても、不思議はない。

 鬼神、改めて感じ入り、口には出さずに考えた。


「・・・そうか。こいつらも、生きものだものな。

 こやつらもまた、一個の種族なのだ。鬼とはちがう、私の言いなりにはならぬ者どもだ。

 それが、こうして私と飛んでおるわけだ・・・」


 そして口に出してはこう言うた。

「悪いようにはせぬ。だが、妙雅が何かやらかす前に、追いつかねばならん。飛ばしてくれ!」

 ぶわっさ!

 猛烈な風。

 溶け流れる地上の景色。

 こんなときでありながら、鬼神は解放感に満たされた。

 その解放感もわずか。

 あっちゅう間に、前方に黒い巨体が見えてくる。

 そこからが、厄介であった。

「止まれというのにから!」

<いやだと言っています!>

 この繰り返し。埒が明かぬ。

 妙雅。パワーはあるが、速度は出ない。『力』のルーンでぶっ飛ぶ鬼神台を振り切るこどはできぬ。

 鬼神。けんか上手の、説得下手。怒る妙雅をなだめることができぬ。

<おじちゃんは、博士を助ける気がないのでしょう!>

「ばかめ! なんでそうなる」

<ばかはそっちじゃ!>キレた妙雅。巨人の王みたいな口調になる。<失せい!>

 状況が変化したのは、長男・次男・三男が空飛ぶ台で追いついて来たときであった。

「妙雅よ! 連れ戻しに来たんじゃない! とにかく、乗せてくれ! たのむ! あぶないんじゃ!」

 すると。

 妙雅、すぐに空中に停止。鬼神らを、中央甲板に受け入れたのであった。


 妙雅の中央甲板。

 鬼神、長男、次男、三男、コボルド奥さん、座り込んでおる。

「・・・なんで、連れて来た」

 鬼神、コボルド奥さんを見る。

「勝手についてきたんじゃ」三男、言いわけ。「気付いたら、しがみついとったんじゃ。下ろすに下ろせんかったんじゃ」


 三男、エスロ台に乗って飛んできた。

 その後部に、知らんうちに、コボルド奥さんがしがみついとったという。

 三男が必死に『乗せてくれ』と頼んだ理由はこれ。妙雅が急に止まった理由も、これであった。


<私を止める作戦かと>

「ちがうわい」

「なんでついてきた」鬼神、話をもどす。

「博士には、御恩がございますれば」コボルド奥さん、悪びれぬ。

「ごおんだと」

「私と夫の弁護をして頂いた、御恩でございます」

「・・・まあ、それはよいが」鬼神イラつく。「なんの役に立つ。戦闘になるかもしれんのに」

 コボルド、とても小さい。人間の半分である。戦に役立つとは思えぬ。

 だが。

 コボルド奥さん、悪びれぬ。小さな鼻を、鬼神に突き出す。

「この鼻で、必ずや、お役に立ちまする」

「はなだと?」

「博士の匂いを、嗅ぎつけまする」ふんふんふんと空気を嗅ぐモノマネ。

「ははあ! こりゃええぞ」と三男。「いぬとおんなじじゃ。人探しには、役立つぞ」

「いぬではございませぬ。我ら、おおかみの一族にございますれば」

「フーン」鬼神聞き流す。「匂いか。その言葉、まことか?」

「まことでございます。閉じ込められておっても、見つけ出してご覧に入れましょう」

「死ぬかも知らんぞ」

「我ら、寿命短きコボルド。『行ってきますは、さようなら』の覚悟でございます」

「ふん!」

 鬼神。

 ニカッと笑う。

 コボルド奥さんの我武者羅(がむしゃら)ぶり、気に入った!

「よかろう! だが指示に従え。勝手に動くようなまね、二度と許さぬ」

「かしこまりました」

 鬼神、向きを変え、長男に向き合う。

「兄者よ、また、大将をたのむ」

「・・・」長男、一瞬何か言いたそうにする。「うむ。わかった」

「どうした」

「いや、何でもない。大将、引き受けた」

 長男は立ち上がった。

「では、妙雅に命じる」

<はい大将>

「低空、できれば谷地(やち)を飛び、敵国首都へ向かえ。まずは真偽を確認する!」

<了解!>



3、コボルド奥さん、かつやくする


<荒風寺院、動きなし>

 夕暮れどき。

 妙雅は、緑の魔術の国の奥深く、首都付近にまで入り込んでおった。

 いまは森の中。池の上。ちょうど妙雅がすっぽり収まるぐらいの池があったんである。水面ギリギリに浮かんどる妙雅。空飛ぶ台ほど完璧な静止はできんので、ときおりちゃぷんちゃぷんと水を叩く音がしておる。

 木々の隙間から、高い塔の先端がちょろっと見えた。

 『荒風寺院』と呼ばれる、古い古い寺院の、尖塔である。

 遠くからでも、その塔はよく見えた。その塔を囲むように、都はゆるやかに、広大に、発展しておった。いくつかの森を残しつつ、かなりの広範囲に渡って、家々と田畑が波打つように続いておる。森を残すのはドラゴンから避難するためらしい。これは妙雅の知識である。

 内戦の最中だが、ここらは穏やかなもので、夕飯を煮炊きする煙も元気に上がっておる。

「奥さん、大丈夫かのう・・・」

 鬼神が心配した。

 コボルドの奥さん。なんと、単身地上に降りて、調査しとるんである。

 エスロ台で郊外まで行き、そこからは、たこを抱いて歩いた。酒場を見つけて、たこを放し、1人で入ってった。

<大丈夫でしょう。大通りでは、たまにコボルドも見かけましたから>

「鬼よりは目立つまい」と長男。

「そらそうよ」次男が笑った。

「ええのう。間者。わしもやってみたかったわい」と三男。

 そして。

 四半刻(30分程度)ほど過ぎたころ。

<──あ、いま出てきました。右耳を掻くサイン。何かわかったようです!>


<エスロ博士の死刑判決、大きなうわさになっておりました>

 コボルドの奥さんの、顔。

 大写し。

 たこを抱えて歩き、千里眼を覗き込むようにしとるんで、黒い目がめっちゃでっかく映っとる。

 鬼神らは、その千里眼の映像を、三男の制御箱で見とるわけである。

<死刑執行は、三日後の夕方。死刑囚は郊外、岩山の大監獄に収監されるとのこと>

「情報の出所は」と長男。

<大声で話しておるスカルドが居りました。しかしスカルドは信頼できませぬ。

 酒場の主にも確認いたしました。立て看板が出ておるとのことで、いま、探しておりまする>

「うむ」

<看板を発見>千里眼の視界がグラグラ揺れる。<見えますか? 私は、字が読めないので>

<はい。読みます>と妙雅。


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 魔術大学の醜聞! 研究員に死刑判決。

 エスロ研究員、地震の巨人と密通! 裏切りの罪で死刑確定!

 大学長にして荒風先代族長は、幇助(ほうじょ)の疑い!

 裏切り者エスロの死刑執行予定は次のとおり。

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「学長も捕まったんか!」と三男。「それでか。じじ上が連絡しようとしても、反応がなかったっちゅうのは」

「看板まで立てとるということは・・・」と次男。

「うむ。情報工作ではなさそうだ」と長男。「──奥さん。体力に問題はないか。突入に参加できるか?」

<はい。当然そのつもりで、酒場で肉を買うてございます。いま、かじりまする>

 はぐはぐ。コボルドが肉を噛む映像が大写しになる。

「融通(ゆうづう)のきく奥さんじゃ」三男が笑うた。

「よろしい。奥さんは妙雅の指示に従え。妙雅、奥さんを大監獄の方角へ案内せよ」

<かしこまりました><了解>

 長男は鬼神に向き直った。

「国王陛下。エスロ博士は大監獄に囚われとるようだ。救出作戦を提案する」

「もちろん、許可する」鬼神うなずく。「手段は問わぬ。博士を救出せよ」

「了解。分担はこうだ。

 監獄に突入し、博士を救出するのは、父上、近衛、コボルド奥さんの3人。

 この移動を担当するのは、鬼神台、弐号、エスロ台の3人だ。

 妙雅は全域の会話を担当。壱号は妙雅上空にて警戒に当たれ。

 俺と偵察隊長は、ここで指揮をする」

「おう」

 次男起き上がる。がしょーん。甲冑が音を立てる。胴体だけ着けて、出番待ちしとったんである。

「父上が行く以上、どうせ見つかるであろう。全身武装でかまわん」

「わかった」

 次男、急いで下半身の甲冑も着ける。三男が手伝う。この甲冑は三男が仕上げたもんじゃから、手慣れたもんじゃ。

「鬼神台、弐号、発艦準備」

 ぶわっさ。ぶわっさぁ!

「妙雅。大監獄付近で、鬼神台らが隠れて待機する場所が必要だ。探せるか」

<はい。現在たこ3機、大監獄へ移動中。うち2機を監獄上空へ、1機を周辺探査に回します。

 建築ユニットも出せば、さらに目が増えますが?>

「・・・いや。回収に時間はかけられん。ここは敵の本拠。空飛ぶ魔術師の基地だ。速度がすべてだ」

<了解。建築ユニットは待機。──コボルド奥さんがエスロ台と合流しました。移動開始します>

「よろしい」

 長男、甲冑を着け終えた次男を見る。

「近衛。今回は、父上ではなく、奥さんを護衛せよ。奥さんが匂いに集中できるようにしてやれ」

「おう!」

「父上は遊撃だ。すでに言うたが、隠密は不要だ。派手にやってくれい」

「了解じゃ。ふっふっふ。目立つんなら、得意わざじゃ」

「偵察隊長!」

「ふぇっ!?」三男、飛び上がる。

「だらけるな。妙雅の監督をせよ」

「りょ、了解じゃ!」三男返事してから、言いわけ。「妙雅が全部やると思うとったんじゃ」

「妙雅は初陣だ。頼り切ってはいかん」

<よろしくお願いします。三の兄者>

「了解じゃ。任せよ」

「よし。日没まで半刻(約1時間)もない。そして、そこからは半刻もかけれぬ。神速をもって、博士を奪還する!」

「おう!」


4、エスロ博士、だつごくする

 

 日没。

 作戦開始である。

 鬼神台、弐号、妙雅を飛び立つ。森に隠れ、低空を飛び、郊外の大監獄を目指す。

 大監獄は岩山に背中を預ける感じの城であった。役目を終えて、監獄に転用されたらしい。

 その岩山が見えてくるあたりで、エスロ台と合流。コボルド奥さんがしがみついておる。

 ゆるやかに波打つ草原を飛び抜ける。岩山に張りついた大監獄がはっきりと見えてきた。

 鬼神台、ここで2人と別れ、岩山の上空へと舞い上がる。

 上空にちいさな灰色の粒みたいなもんが浮かんでおる。鬼神、目敏くそれを見つけ、指差す。

「相棒。あそこだ」

 鬼神台はその灰色の粒に接近。

 たこである。

<状況変化なしです>妙雅の声がした。<いちにぃも、周辺変化なしと>

「いちにい?」と鬼神。

<あ、壱号兄者のことです>

 ぶわっさ。鬼神台がぼそっと文句言うた。『わかりづらいわ』とでも言うたんであろう。

<きしにぃうるさい>

「キシ兄?」

<鬼神台兄者のことです>

「ははあ」

 ぶわっさ・・・。

<きしにぃいちいちうるさいんじゃ>

 数秒。

 鬼神、重大なことに気付いた。

「おい妙雅」

<はいおじちゃん>

「もしかしてだが。私を『おじちゃん』呼ばわりするのは、『きしにぃ』とかぶるからか」

<はい。そうですが?>

「おまえなあ!」

<大将より指示。突入せよ>

「くそ。了解じゃ。では行ってくる」

 鬼神。

 ぽーんと、飛び降りた。


 高さ、なんと、30尋(約50メートル)!

 六腕がばあとおっ広げ、くもが宙舞うがごとく、大監獄へ真っ逆さま。

 つばさもなければ、魔術もなし。ただただ自然に落下する!

 ごうごうごう。耳を聾する(ろうする)風の音(ね)も、鬼神をおどすにゃちと足りぬ。


<きしにぃ。おじちゃんホントに大丈夫?>

 ぶわっさ・・・。


 どがああああん!!!


 爆発みたいな音立てて、大監獄の玄関に、六腕巨体の鬼の神、着弾!

 石造りの玄関ぶっ壊し、槍持つ見張り吹き飛ばし、ずどんと地面に突き刺さる!

「なにえ!?」「爆発?」「魔弾?」

 ハイエルフ。槍持ち飛び出し、誰も居らぬ庭を見る。

「て、天から、なんか、落ちてきて・・・」「敵襲か?」「落石か?」「なにえ。あな大穴」

 敵も居らぬ前庭に、真新しき大穴、開いてあり。

 ハイエルフ。覗き込む。

 ぼこ。赤い右手、突き出した。

 ぼこ。赤い左手、突き出した。

「え?」

 ハイエルフども、掴まれる。

「あなや」ぽーんと投げられ、宙を飛ぶ!

 ばし。ばし。

 赤い両手が、地面につく。

 がらがらがらがら、瓦礫を頭からこぼしつつ。

 赤い巨体が、這い上がる。

「え・・・」「え、嘘・・・」「6本腕・・・」「赤い巨人・・・」「き・・・」「き・・・」

 ハイエルフ、後じさる。

「きしーーーん!!!」「鬼神やええええ!!!」

 驚天動地の大騒ぎ。

 右往左往した挙句、なんかもうしょうがなく、槍を一応向けてみる。

「ふん! 邪魔じゃ!」

 槍、まとめて掴まれて、ぺきんと折られ、砕かれる!

「そな、あほな」「無体なり」「い、いったい、なぜここに?」

「エスロ博士が、ここに居る! そのように聞いて、参ったまで!」

 ハイエルフ、「あっ」と顔を見合わせる。

「さては、目当ては、あの博士?」

「そうじゃ!」鬼神、怒鳴っていわく、「処刑するなら、返すがよい! エスロ博士、ぼうめいじゃ!」


 わーわーわー。

 大監獄、大騒ぎ。

 槍折られたハイエルフども、抗すべくもなく逃げまどう。

 弐号、エスロ台、飛んできて、次男、コボルド、落ちてくる。

 がしょーん! ゴロゴロ! 地面を転がり、土にまみれて起き上がる。

<大将から命令>妙雅のたこも、飛んでくる。<奥さん、博士の居場所を特定せよ。次男、奥さんを護衛せよ。たこ1、続け>

「了解いたしました」

 コボルド奥さん、テテテテテと監獄内に駆け込んでゆく。次男とたこが後を追う。

 もう1機、別なたこが、飛んでくる。

<陛下、遊撃。たこ2、続け。──たこを振り切らないように注意してください>

「振り切ったりはせぬ。たこ2はおまえでよいな?」

<はい。私です・・・あ、待って、掴むのはなs──ぎゃあ! ぎゃあ! 放してえ!>

 鬼神、たこを引っ掴み、大監獄へ突入した。


 大監獄。

 入り口は城砦、中は天然の岩石洞窟という、半人工・半天然、強固な牢獄である。

 1部屋目は、石造りのホール。正面に奥へ伸びる洞窟。右手に階段。階段は上下両方である。

 コボルド奥さん、フガフガと匂いを嗅ぎ回る。盾を持った次男が側でガード。

 次男は今回、巨人の金棒ではなく、メイス(総金属製で柄が細い棍棒。鎚鉾)と丸い盾である。金棒は広い場所でないと振り回せぬうえに、矢に弱いからである。

 奥さんは武器なし、ハチマキ巻いて、胴体にはサラシ。チョッキとズボン。腰に短刀差しとるが、これは武器ではない。守り刀というやつである。

 鬼神はもちろん、国王の服に、素手6本。戦のときは妻が作ってくれたハチマキしとったが、今回は持ってくるヒマなかった。なし。

「であえであえ」「であえであえ」「わー」「わー」「ぐわー!」

 奥からハイエルフ。鬼神吹っ飛ばす。相手にならぬ。

 コボルド奥さん。フガフガと、階段へ。上を嗅ぎ、下を嗅ぎ・・・

 小さな前足で、ビシッと階段を指差す。「地下です!」

「よし、私が先行する」

 遊撃役の鬼神、先行。

「なにごt──ぐえ」「いったいなにg──ぐえっ」「敵sh──ぐえっ」

 上がってくるハイエルフ。鬼神吹っ飛ばす。

 地下に着く。ここからは洞窟である。左右に木の枝のごとく通路が伸びておる。

 コボルド奥さん、追いついてきて、フガフガし、右奥の通路へ。「こちら!」

 だが、左右あちこちからハイエルフが!

「わー!」「わー!」「わ・・・・・・・・・わあああ、鬼神!」

「いかにも! 鬼どもの神、鬼神!

 恩人のエスロ博士を、お迎えに参った! ぼうめいじゃ!」

「ぼ・・・亡命?」「いえ、聞いておりませんに・・・」

「力ずくのぼうめいじゃ! どけどけい!」

「うわー」「だめもとー」「こなくそー」

 ハイエルフども、槍突き出す。国王の服のトゲに引っ掛かり、槍、全部折れる。

 次男、メイス振る。右端の1人倒れる。

 鬼神、手伸ばす。残る2人、首根っこ引っ掴まれ、宙にぶらり。

「いたい、いたい」「うぐぐ」「ぐうう」

「父上、後ろは頼んだ!」次男とコボルド奥さん、右奥の洞窟へ突っ込んでゆく。

 さらに左から、ハイエルフ兵士2人。

 鬼神、ギロリと睨む。「ずいぶん多いのう? 待ち伏せか?」

「ええ・・・はい」「えー・・・亡命と、おっしゃいましたかに?」

「うむ。ぼうめいじゃ」

 ハイエルフ2人、顔を見合せ、階段にそろりそろり。

「ではあの、上に確認してまいりますゆえ、少々お待ちを・・・」

「うむ。ゆっくり確認せよ。ついでに、持ってゆけ」

 鬼神、ぶら下げたハイエルフ2人を渡し、倒れとる1人も渡す。

 5人はひーひー言いながら階段上がって逃げてった。


「父上! こっちだ! 博士を見つけた!」

 洞窟に次男の声が反響する。

 声を追うが、右奥の通路がさらに分かれており、どっちへ行ったのかわからぬ。声も反響しとるため、鬼神の耳をもってしても、いまいち方向がわからぬ。

 しかし大丈夫。

<次の分かれ道、左です>

 妙雅のたこが道案内。すぐに合流する。

 そこは、洞窟の行き止まりを鉄格子で封じた空間に過ぎなんだ。

 城であったころには、備蓄置き場だったんであろう。到底、人間の生きてゆける場所ではない。

 そんな岩の上。ボロだけを身にまとった男が横たわり、黒い目でこちらを見ておる。

 あわれ。それは、痛めつけられたエスロ博士であった。

「・・・鬼神さま? なぜ、ここに」

「博士。亡命のお迎えに参ったぞ。いま、開ける」

 鬼神、牢屋の鉄格子を掴む。

 『力』のルーン! めきょ。鉄格子曲がる。

「・・・亡命? なぜ?」

「なぜもくそもありませんぞ!」次男が抱え起こす。「死刑と聞いて、飛んできたのだ」

「誰が、そんなことを・・・」

「ネストールという男じゃ」と鬼神。

「おお・・・!」

 博士、どうも意識があまりはっきりしておらぬ。次男が支えても立つことができず、床に転がり落ちてしまう。

 鬼神が慌てて手を貸そうとしたところで。

 ぶわっさ。

 滑り込んだ四角い台が、博士を受け止めた。

 優しいクリーム色したその台は。

「入ってきたのか、エス子や」

 ぶわっさ。エスロ博士専用機の、エスロ台であった。

「では頼む。──博士、博士よ。学長はどうなっとるかわかるか?」

「学長は・・・先代族長。さすがに、私のようには・・・ならぬはず」

<あれじゃろ>三男の声。<学長が居ると、多数決を取られかねん。じゃから学長が裁判に出れんようにしたわけじゃ>

「そう。おそらく・・・」

<こちら大将>長男の声。<学長は救出不要と判断する。即刻、脱出せよ!>

「了解だ」

 引き返す。

 階段を上がりかけたところで、ズシーン・・・ズシーン・・・と、重々しい足音が聞こえてきた。

 『水晶剣士、配置完了! 歩兵は下がれ』──という、女の声が、鬼神には聞こえた。

 鬼神、階段の途中でみなを止まらせ、自分だけ上がる。

 ホールには誰も居らん。

 玄関を見る。すると。


 透明な、キラキラと輝く、巨人が3人。

 透明な剣を持って、玄関をふさいでおった。


5、鬼神、かんでんする


「なんだあれは。妙雅、わかるか?」

 鬼神。たこをそいつに向ける。

<・・・魔術人形だと思います。生きものではない。建築ユニットみたいなものです>

「ふむ」

 鬼神はたこ2を手放した。

「当たってみる。大将に状況を伝えてくれ」

<了解>

 鬼神、外に出る前に、ホールから奥に続く通路の壁をぶん殴って崩した。通路が半分ふさがる。挟み撃ちを防いだのである。

 それから外に出る。

 夜の闇の中。

 半円形に玄関を取り巻く、たいまつの火。

 その光に、ギラギラと輝く透明な巨人、3体。

 すーーーっと、音もなく、透明な剣を持ち上げる。


 そいつは、透明な身体をしておる。

 そいつは、身の丈10尺(約3メートル)の巨体である。まあ、鬼神よりは小さいけれどもだ。

 そいつは、顔らしき顔はなく、目すらなく、ただぼんやりとした光が、頭の内部に輝いておる。

 そいつは、透明な大剣を持っておる。ほとんど見えぬほど透き通った大剣である。


「ふん」鬼神は笑った。「透明な鬼もどきよ。どかぬのなら、粉々にしてしまうぞ!」

「粉々になるのは、どちらですかに?」

 暗闇から甲高い声がした。女の声である。

「内通者の奪還に参られたようやが、飛んで火に入る夏の虫。

 野蛮なる赤猿がそのように動くであろうこと、こちらは予想済みえ。

 降服するなら、いまのうちやが?」

 鬼神は声の元を見た。が、どこに居るかわからん。たいまつ持つ兵の後ろに隠れとるようである。

「我らは猿にあらず。鬼と称す。

 私は、鬼どもの神、鬼神。

 友人である博士の、亡命のお手伝いに参った。

 おまえは誰じゃ? ねずみのごとくコソコソしおって。

 博士を訴えたのは、おまえか?

 名乗ることを許す。答えるがよい」

「はっ。赤猿ふぜいが、なにを偉そうに。

 私は魔術大学は人形学科の教授、クリスタル。

 我が名、我が誇り、我がわざの粋たる水晶の剣士が、貴様を殺す」

「我らは! 猿に!! あらず!!!」

 鬼神はもんのすごい大音声で怒鳴った。

「鬼と、鬼神と、たったいま、名乗ったであろうが!

 いち種族全体を侮辱し、神の名乗りを侮辱する、礼儀を知らぬ愚か者め!

 野蛮人はどちらだ! クリスタルよ!」

「ひっ・・・」

「一度だけ、訂正する機会をやろう!

 いま訂正せぬのなら、二度と機会はないと思え!」

「す・・・水晶剣士よ! やってしまえ! 早う、その、不愉快な赤猿を、殺せ!」

<・・・声の主らしき女、逃げます>

「ふん。ま、後でよかろう」


 ズシーン・・・ズシーン・・・。


 先ほど鬼神が聞いた足音がする。

 『水晶剣士』とやら。その足音からして、体重は鬼神より重そうである。

 あの剣。喰らったらどうなるんであろうか? ──と、鬼神は考えた。

 若いときの鬼神なら、なんも考えんと突っ込んで3体を相手にしたかもしれん。

 だがいまはちがう。

「喰らわんとこ」

 鬼神。しゃがんで、玄関の崩れた石材を拾う。人間の頭ぐらいある石材である。

「それ、『力』のルーンっと」ブン投げる。


 がきぃん!


 眩い光が、夜闇を切り裂く。

 水晶剣士の1体に命中した──はずの石は、透明な剣によって、弾き飛ばされてしもた。

「受けただと!? それに、いまの光はなんじゃ? まるで、雷・・・」

 水晶剣士の反撃。

 3体が連携し、右から、左から、真上から、透明な大剣を振り下ろしてくる。なめらかな動きである。

 いくら鬼神が素早いというても、振り下ろされる剣の先端より素早く下がることはできぬ。

 受けるしか、ない! 3本すべて!

 鬼神。

 無表情、無感情に、すっと手を出した。

 正面に2本。左に2本。右に2本。

 六腕でもって、3方向の同時攻撃を、すべて受けにゆく!

 剣ではなく、その根元を。相手の手首を、クロスチョップで!

 見事! すべて、受け止めた!

「どうだ! 無心の受け!」

 だが。

 バチィン! ものすごい音! 眩い光!

 鬼神の手首から全身に、電撃流れる!

「ぐわっ」

 鬼神、全身を叩かれたようなショックで、硬直。

 3方向を受け止めた、その3方向すべてから、電撃を浴びせられたのである。

 せっかく止めた相手の手首を掴むこともできぬ。それどころか、ガクッと体勢を崩してしまう。

 水晶剣士、振りかぶる! 透明大剣、鬼神目掛けて振り下ろす!

 脳天に! 脇腹に! 背中に!

 鬼神かろうじて身をよじり、脳天直撃だけは回避する。だが、左右の剣は避けれぬ! 受けれぬ!

 縮こまった腕に、そして背中に、透明大剣命中。

 鬼神の巨体、ぶった斬られる!

 バチィン! 電撃! 電撃!

「ぐはっ。ぬはっ」

 鬼神、また硬直。

 そしてなんと、これまで一度も破けることのなかった国王の服が、ばっさりと、切り裂かれた。

 鬼神、斬撃をまともに浴びても血の一滴も流さぬが、硬直した身体がうまく動かぬ。

 次の斬撃が来る。それがわかっておっても、対処できぬ。なんもできん! ハメ殺し!

「父上! なにを遊んでおる!」

 次男が飛び込んできて、メイスで水晶剣士をぶん殴った! 命中! ──電撃!

「ぐわああ!」次男ビリビリ痺れて直立し、後ろにぶっ倒れる。

 ぶわっさ!

 暗闇の天空から、赤い影が落ちてくる。アーマード・鬼神台! 水晶剣士に体当たり! 命中! ──電撃!

 ぶぶぶわわわっさ!!! 鬼神台、バリバリ痺れて地面に激突!

「息子よ! 相棒よ!」

 鬼神、カッとなった。

 次男と鬼神台の加勢によって、左右2体の水晶剣士はノック・バック! いますぐの攻撃はない。

 だが残る1体は、そのまま鬼神に斬りかかってくる。

 鬼神、まだ棒立ちのまま、身体が動かぬ!

「おのれ。ええい、『力』のルーン!」


 どん!!!


 鬼神!

 身動きできんまま、棒立ちのまんまで、『力』のルーン!

 自分の身体を槍とし、水晶剣士に、頭突き!

 動かん身体の代わりとして、『力』のルーンのパワーのみで、敵を突き飛ばす!

 正面の水晶剣士、夜空に高々と、吹っ飛んだ! だが電撃!

「ぐわあ」

 鬼神、頭のてっぺんに電撃を喰らい、悲鳴を上げる。

「くそっ、なんたる強敵じゃ! 禿げて(はげて)しまうわ!」

 怒鳴るや、地面に落ちとる石材を左右の手で拾い上げ──

「だがもう喰らいはせぬ! そっちが喰らえ! 石材張り手!」


 どかあん!! どかああん!!!


 石材そのまま、水晶剣士をぶん殴った!

 水晶剣士、剣で受けるも、『力』のルーン! 空高々と吹っ飛ばされる! 2体それぞれ、彼方彼方(あなたかなた)へ!

 ばちぃんと電撃走るも、石材挟めば鬼神にゃまったくノーダメージ。

「はあはあ。見たか! バチバチ剣士め!」

 ぶすぶすと焦げ臭い煙を立てながら、鬼神いばる。

 空高く吹っ飛ばされた、3体の水晶剣士。放電の白い輝きを放ちながら、それぞれどっかへ落ちてった。

<・・・あ、惜しい>

「何がじゃ?」

<逃げた女の目の前に、1体が落ちたのです>

「惜しくないわ!」鬼神は笑った。「かわいそうだろうが。そんなんで死んだら」


 水晶の剣士で鬼神を苦しめた、女魔術師のクリスタル。

 逃げとる最中に、目の前に水晶剣士が落ちてきて、粉々になった。

 クリスタル。恐怖のあまり、腰を抜かす。

「あなや。これは鬼神の最後通告にちがいなし。おまえなんぞ、いつでも殺せると・・・」

 泣きながらお詫びの手紙を書き、金銀財宝を積み上げて、鬼神の許しを乞うたという。


「・・・水晶剣士が、負けてしもうた」「上位ゴーレムを、3体も」「まさに、神・・・」「鬼どもの神」

 ハイエルフどもが、つぶやく中。

 鬼神は次男を助け起こし、鬼神台を助け起こし、悠然と(ゆうぜんと)退却する。

「それでは、ハイエルフよ!

 鬼どもの神、エスロ博士の亡命を手伝うの巻(まき)は、ここまでじゃ!

 ご協力を感謝する! さらばじゃ! わっはっは!」

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