お前の旅 04
ジョウトウの総合病院地下。ライトブルーの髪色をした白衣のメガネ女がプラグローブを装着して金属片をつまんでいた。
「割りと流通してる口封じの一つだね」
「口封じ……」
クガツがオウム返しする。
「えぇ。反社系の組織が鉄砲玉に移植手術して、特定のバイタルの閾値になると内部の細菌関連の薬液が体内に漏れ出すっていう」
「細菌か。触って大丈夫なの?」
「空気とか乾燥に弱いから感染は肉体の中でとどまる作り。まあ、マニア向けの器具だけどよくあるタイプだよ。これの製造元の特定とかはちょっとムズいかな」
「なるほどな、ありがとよ。代金はまた振り込んでおくわ」
「じゃあ、あの黒髪ちゃんと夏休み楽しんで」
「時が止まってほしいくらいだぜ」
「そういうキザったい嘘やめたほうがいいよ」
「……」
関係者の昇降路から重々しい扉を開け、1階のテラス席でアイスティーを啜るサラクとルゥー。そしてグラサンが眩しいミザリ。
「どうだった?」
「マニア向けの殺人グッズってだけで、それ以上はわかんねーわ」
「マニア向けの悪趣味グッズを変えるだけのツテと財力のある組織か」
「ジョウトウグループとか西櫻会とかがそうかもな」
皮肉っぽくそういって4人席の椅子にクガツは寄った。椅子に乗ったバッグを掴んでそれを膝の上において椅子に座る。
「次は?」
サラクが言った。
「FPアーカイブスの跡地へ向かう。拠点を取り返した件を、まだあの胡散臭いメガネのおっさんからされてないからな。ミザリ、車出せるか?」
「え、ええ。大丈夫だけど」
「含みがある言い方じゃん」
「すでに中央管理<セントラル>が現場を押さえててさ」
ミザリが端末の画面を見せる。ウェブニュースにクラウドノースでの騒動が書かれた内容だった。
「『暴力組織の内部抗争』……なるほどな。内部抗争ってのはホントなの?」
「わかんない。あたしも下っ端だし、上でのゴタゴタはわからない」
「それもそうか……」
「でも、何かの”契機”があってこの抗争が起きた……そんな感じもする」
顎に指を添えるルゥー。
「サラクとクガツはジョウトウのビーチで一発やりあって、それをメディアに持ちかけ庇うため出資した男が情報屋FPアーカイブス黄仙。その黄仙からの依頼で、原生生物に侵略された拠点を取り戻した」
「そこまでは事実になるかな」
「で、ここからが推測にはなるが……その取り戻した拠点にはちょっとした情報があったとか」
クガツは腕組みをして俯く。
「まあ、そんなところだろうな」
「その内部抗争、中央管理<セントラル>なんじゃないん?」
「だろうな」
4人の取り囲む席が静まる。ミザリが指を折って思考を巡らせながら数える動作をしていた。それを眺めるルゥー。
「オタク向けの殺人グッズを変える財力、入手ルート、現場を抑さえて封鎖している組織……全部あてはまるかも」
「だとしてもちょっと早計かもしれんのォ、もっと裏を取るなり尻尾を掴まなアカン。それに西櫻会<ワシら>には関係無い。危ないことに首は突っ込みたくないわ」
「えぇ、ルゥーさん着てくれたら心強かったのに」
「姉ちゃんが一晩付き合ってくれたら考えてやってもええで?」
「え……下ネタはあたし好きだけど、そういうのはちょっと距離感がムリです」
「……ごめんなぁ」
クガツは押し黙り、しばしの沈黙。ルゥーはその姿を眺め口を開く。
「まあ、よく考えんしゃい。相手が中央管理<セントラル>なら、相応のキビしい戦いになる。それに、お前さんの目的は兄貴分の特定やろう? ダイレクトに直接的な確証が持てるまで、突っ走るのはあまりな選択肢や思うで」
「それも、そうだな」
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学園能力バトルパワー系ラノベ やぎざ @YAGIZA555
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