気色悪い独占欲だぜ 02
クガツとサラクが向かったのはスーパーマーケットだった。クガツは日用品を買い続けるが、その横でサラクが手に取ったお菓子や肉、おでんの詰め合わせ包装や缶詰をカゴへと放り込んでいる。
「お前それ全部食うつもりかよ」
「中々センスあるチョイスでしょ?」
「……テメェの願い事を聞くのは今日1回だけだからな」
「そんなこと言わないでよ~。私これでもお金なくて困ってるんだからさぁ~」
「知らねえよ。オレも最近取られたばっかりだよ」
「情報屋のマスク代にでしょ」
「テメェもだろ」
ひとしきり買い物を終え、店先で露店販売をしているソフトクリームを2つ買って、二人は近くのベンチでそれを食べていたところだ。
周囲には学生グループの賑わいや、残業長引かなかったぜと会話を交わす青年年代グループらが言葉を交わし往来を行き来している。
そんな中、クガツらが耳にしていたのはラジオの音声だった。
ソフトクリームやクレープの露天販売をしている浅黒い肌をした強面の中年の店から、数日前のジョウトウの浜辺で起きた異常現象についての話題がラジオで語られている。
『だからですね。このユニオン・ムーにかつて存在していた先住民の怒りですよ。人間の身勝手な開発が自然の怒りを買ってあの二人の巨人が権限したんです。かつての祖先はもっと賢かった。文明に眼が眩んだ人間の罪ですよ!』
オカルト的してんで男の声がそれを熱弁している。それに対するクガツ。
「……こんなインチキ霊能者を雇うために、メディアマスク代金を払ったつもりはないんだけどな」
サラクもそれに続く。
「私も」
「珍しく気が合うな」
「お陰でスカンピンってワケ」
「もしかして生活費をどうにかしろとか、働き口を代わりに探せとかそんな家で少女みたいなことを願いに来たわけじゃねえよな?」
「半分はそうだけど?」
「……」
「でも、もう半分はまた別。あくまでもメインはお悩み相談なんだけど……アレ? あっちのあの人、こっちメチャ見てこない?」
サラクが指した先には、白衣をまとった少女が居た。物珍しそうな、そしてオモチャでも見つけたような嬉々とした視線と足取りで、二人の元へと近寄ってくる。
「おやおやこれはこれはクガツ殿じゃないですか! 昨日の仕事の話はどうもどうも。おかげでジョウトウの中枢近くの人間ともパイプを持つことができたよ」
「ミサイル野郎……」
「そちらのお嬢さんはコレですかな? いやー! 隅に置けませんなぁ!」
白衣の少女は小指を立てた手をグリグリとクガツの頬へとねじ込む。
「ま、まあ。そんなところだよ。マイハニーとはアツアツでね。これから自宅で鍋パーティだよ。羨ましいか?」
「ははぁーん。お若いねえ! 応援してるよ~。そんじゃ、私は保存食でも買ってラボへ戻るよ」
「カゼ引くなよ」
アイヨーと片腕を立てて、白衣の少女は店内へと姿を消す。半開きの視線でクガツのその仕草を眺める中肉中背ボブカットの少女は口を開いた。
「アンタって本心は語らないのね」
「何が」
「クラスメイトにはヘラヘラとしただらしない模範的高校生を演じて、さっきのジョウトウのお仲間っぽい人にはキザでシニカルなキャラを取り繕っている」
「説教か? チンチクリンのガキが言っても、リアリスト気取りのイタイ女にしか見えねーぞ」
「別に」
バニラアイスが溶け込んでグズグズになったコーンを一口で頬張って、サラクはベンチから腰を上げた。
早く行くぞ、と無言のまま顎を使い、クガツもそれに倣って急ぎ気味にソフトクリームを食べ終え席を立った。
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