気色悪い独占欲だぜ 01

 「え~、今回の適性試験により……」


 朝のホームルームだ。クガツが眠たげに頬をついて眺める眼前には、1人の少女が居た。クラスの中心となるような女子ではないが、虐げられる側のオーラも纏っていない地味で空気のような少女だった。

 担任の男教師は掌で指して言う。


 「夏の適性で、代謝操作の超常を操る超常者バリアントであることがわかってな。2週間の手筈が済めば、グループ内の別の学校へ移る。最後の思い出作り、みんなでやっていけな」

 「じゃあセンセー宿題無くしてくださーい」

 「それとこれとは別。じゃあホームルーム終わるぞ──」

 

 少女を取り囲み、惜しむような声が彼女を囲んで居る。トイレへ進む際、ふとクガツはそちらへ視線をやれば目が合った。一度会釈をして、作り笑いをしながらクガツは言う。


 「前期も経たずお別れは悲しいけど、あっちでも頑張ってね」

 「ありがとね。でも、まだ2週間あるんですケド」

 「……それもそう、だったわな!」


 時は進んで放課後。カラオケでも行こうぜ、と活発なグループが声を上げ、それに感化されボウズ頭の少年がイイジャン!!と続く。


 「おいクガツ! お前も来るよなあ!?」

 「お、おう! いくべいくべ!」

 「よっしゃ決まり!」


  超常者の少女を中心に、学生らが十数人のグループが正面校門を抜ける所だった。


 「おい、あそこで手振ってるの誰のツレだよ?」「てか超マブくね?」「ここじゃ見ない制服……ジョウトウの高校じゃない?」「かわいい」


 男連中がそういい、それに続いて値踏みする女子共も同じ印象を抱く。茜色が西側の空から除く日差しのなか、ブロンドボブの髪をなびかせる中肉中背の少女が居た。一見、害の無さそうなどこにでもいる十代半ばの……


 「テメェ……」

 「めっちゃ怖い顔笑。クガツくんそんな人だったのぉ~?」

 「藍河──サラク……!!」


 退治する二人ッ!! にらみ合いの中、目立つことを嫌い殺意を抑える二人ッ!!


 「え、何? もしかして久住のツレ?」「お前女居たのかよ!?」「無害そうな顔してやることやってんのな!!」「嘘だろクガツゥ!!」


 周囲の声に対して、ヘラヘラとしてサラクはクガツの方へと踏み出す。手刀を作って、作り笑いを浮かべてヘコヘコとしている。


 (俺って、もしかして周りからこんな感じにみられてんのか?)


 周囲の女子が言う。


 「え? どういう関係?」

 「いやあ、そんな大層なものじゃないですよ。夏を前にする夜の浜辺で、お互い星を眺めて語り合った中です笑」

 「超ロマンチックじゃん! 久住の奴ほうっておけないねえ!?」

 「意外と放っておけないのコイツ笑」


 軽い口調でヘラヘラとしながら、それでも図々しくズカズカと学生グループの中へサラクは踏み込んでいく。素早く得物を仕留める蛇のような挙動で、サラクの腕はクガツの手首を捉えた。


 「おい、協力してもらう話。不問にはしねえからな?」

 「おいおい、俺は今から思い出作りのカラオケに行くの。テメェは及びじゃねえんだよ帰れ」

 「いいのか? だったら明日から毎日、校門までお前を迎えにまで行っちゃうぞ? いつイケない小遣い稼ぎが明るみにでちゃうか、見ものだよなあ? アタシは口が軽いぞ?」

 「……長話になるんだろう。今日だけなら聞いてやる。だからもう絡んでくるな」

 「あら怖い。てなわけで、ごめんね皆! コイツ借りるから!」


 そう言ってサラクはクガツを群衆から引っこ抜いて、嵐のような歩調で過ぎ去っていった。


 「地味な見かけによらず腹にイチモツ抱えてそうな娘だったなあ」


 ボウズ頭が言う。


 「久住のやつ、隅には置けないけど……ちょっと変な女に騙されないでほしいな」


 答えるピアスの少女・


 「そんな変な娘だった?」

 「あの娘も、詐欺師の眼をしていた」

 「マジか」

 「気がする」

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