お前もブレインの使用権を求めて 04

 浜辺の一帯は茜色に染まっていた。大きく見える夕日には海鳥のシルエットが数羽浮かんで島の内側へと消えていく。観光客もホテルへと向かっていく。対して学生。一度学園の方へと向かっている。一度点呼と出席と確認して本日は解散という流れだ。


 「そういや適性テストどうだった?」 

 「なにもマイナス。超常者バリアントじゃなかった」

 「だよね~」


 ピアスと眼鏡の語らい。その後ろでへとへとになった坊主とクガツがフラフラな歩調で並ぶ。


 「お前どうだった? デリバリー」

 「マジでしんどい。続くようなら熱中症の初期症状真似る」

 「マジか。キッチンもヤバいわ。素人の学生に要求する仕事量じゃねーよアレ」

 「マジかよドンマイ」


 しばしの沈黙。前で並ぶ女子の会話から連想したのか、坊主は言う。


 「超常者バリアントって実際どうなんだろうな。この大陸の中心に隕石が落っこちてからこの世に超常現象を起こす人間が出てきたって話だろ? ジャンプコミックみたいで楽しそうじゃん」

 

 一転して眼を輝かせる坊主。


 「あこがれるよね。自分もなんかこう、ブワーってビーム出したりできたらかっこいいだろな~」

 「いや~もっとこうトリッキーな能力使いこなしたいな。『狩人の二乗』にでたカイトみたいな。アレいいでしょ!?」

 「カイトは熱いな~。他の番号もみて見たかった」


 しばしの熱い語らい。それを尻目に女子二人は会話を続ける。


 「でも無菌室に封じ込めてって話でしょ? ユニオン・ムーの外の国……本土で見つかった先天的な超常者は安全のため海を隔てたこの大陸に隔離されて管理されてって効くし」

 「うっそ。スマホ使えるのかな」

 「どうだろ電磁波がどうこうもあるし取り上げもあり得るんじゃない?」

 「うぎゃ。最悪。アタシ超常者じゃなくてよかった」


 胸をなでおろす女子二人。


 「ちなみにアンタらどうだったの?」


 ピアスが坊主とクガツに語り掛けた。


 「マイナス」


 坊主が答える。


 「……マイナス」


 クガツも坊主にならって絞り出すように答えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る