第5話「属性魔法」
1人で複数の属性を操る事は出来ないらしい。
持って生まれた属性を極めていく事になる。
しかし、属性を持って生まれる事は珍しい事だそうだ。
――自分の知ってる知識はこれくらいか。
「属性素質を持たない人は魔法を使えないの?」
早速質問を投げ掛けた。
「属性素質を持たない者は基本的に無属性と言って、無属性魔法を操れるんだ。だが…、属性素質を持っている者と比べるとやっぱり、効果や威力は格段に劣るな」
「へぇ。そうなんだ。…ところで1番強い属性とかはあるの?」
「ん?あぁ、戦闘に1番向いてる属性って言ったらそりゃ、火属性だな。騎士団にも火属性魔法を使う奴はかなり強い。500年前に実在した大英雄も火属性だったらしい。反対に岩は防御向けだ」
時折、話に出てくる500年前に実在した大英雄というのが気にかかる。
そんなに凄いやつなのか。
(まあ、どうでもいいか。)
「他の属性の特徴は?」
「水属性は、あまり戦闘に向かないな。生活には役に立つが。風はどちらかといえば、攻撃型の魔法だな。見えない斬撃が厄介なんだよこれが。氷も攻撃型だ。大気中から氷塊を出現させたり、応用の幅が広いのが特徴だな。神聖属性はあらゆる能力の強化、闇属性は精神攻撃など環境に大きく影響させる範囲型魔法だ」
(なるほど…)
「――おっと。すまん、魔法の階級とか、もっと教えてやりたいんだが、今日はもう村の警備に出る時間だ。また今度でいいか?」
仕方がない。
頭の中で説明された事を整理。
そして最後に一つの疑問を声に出した。
「じゃあ、無属性の人は弱いってことでいいんだよね?」
唐突なこの質問にシリウスは腕を組む。
表情は少し険しくなった。
(あれ?まずいこと言った?)
「アルタイル。お前は仮にも属性素質持ちだ。だとしても、戦う相手は侮るな。無属性の者は魔法に頼らずにそれ以外の手段で強くなろうとする。例えば、剣術、武術だ。舐めてかかると痛い目を見るぞ?」
確かにそうだ。
油断する事はどこの世界、どんな状況でも愚かな事だ。
絶対に間に合う高校の試験を油断して遅刻した記憶が蘇った。
どちらにせよ自分の属性の正体を明らかにする必要がある。
(早く魔法使いたい)
心の中で呟いた後、「ありがとう」言って離れようとする。
「―――あ。待て、アルタイル」
すると父は思い出したかのように呼び止めた。
「あと一つ言い忘れてた。これは人から聞いた話になるんだが、ごく稀に「祝福」と言われる力を持っている奴がいるらしい。もし、遭遇したら対峙するのは避けろ」
祝福。
なんだそれは。
「うん。わかった。じゃあ、もう寝るね。明日の稽古もどうせ早いんでしょ?」
「あぁ、もちろんだ。しっかり寝て、明日に備えろよ」
それから毎日、剣術の稽古、勉強に励んだ。
毎朝、家の前では木刀と木刀が交差し、甲高い音が響く。
魔法の知識についても深く学びたい。
しかし、言語の壁がそれを妨害する。
これは地道に文字を克服していくしか無さそうだ。
◆
そして、同じような毎日を繰り返す内に1年の月日が流れた。
この世界の文字を克服する日がきた。
もちろん単語や熟語の意味は完璧ではない。
しかし、記述された文字を詠唱することぐらいはできる。
地平線から柔らかい朝日が照らしている。
その朝、「七色魔導辞典」を外に持ち出した。
家から少し歩いた野原で魔法の練習を始めようとしていたのだ。
「魔法」と言うのはファンタジー世界の醍醐味だ。
ゲーム、空想上の世界でしか見る事の出来なかったそれをこの手で操る。
これほど胸が躍る事があるだろうか。
一本の木下に歩み寄り、分厚い本を開く。
年季が入ってる為か、開くと同時に軋む音が耳に届く。
「――とうとうこの時が来たか。さてさて、俺の属性は一体どんなだろう。――でも、”失われた属性”って…。弱すぎて淘汰されたとか無いだろうな?」
心に思ったことが口に漏れてしまった。
「失われた属性」と言う特異な存在の属性ならば、――強力か、――最弱か。その両極端に寄るだろう。
中途半端な属性となる事は無さそうだ。
期待と不安が混じりつつも、手当たり次第に各属性の詠唱を始める。
それは、自分の属性がどの系統に近いかを確認するためだ。
各属性は円環を成している。
系統が近ければ、少しだけ体が反応するかもとシリウスから教えてもらった。
「んー、まずはこれか」
――詠唱を唱えるが何も起こらない。
「と言うことは…。水属性とは近くない系統か。にしても…」
恥ずかしい。
詠唱とか、前の世界では完全に痛い奴だ。
周囲に目を配る。
人の影は見当たらない。
瞳に映るのは広い野原で風に揺られる草原だけだ。
「詠唱無しじゃダメなのか?」
そう思いつつ、残る属性基礎魔法を唱える。
水、風、氷、岩、神聖属性魔法に反応を確認する事は出来なかった。
次に闇属性魔法を唱える。
――体温が少し上昇する。
ごく僅かに電気が走り、腕が痺れた。
同時に腕の紋様が一瞬だけ現れて消える。
「これだ!闇属性の系統に近い!次が最後か…。1番強いらしいから残しておいた火属性だ」
――火属性魔法を唱えた。
すると先程の闇属性魔法を唱えた時と同じような現象が起きた。
「これも!火属性にも近い系統か!」
そして、火属性と闇属性魔法の特徴、共通点を見つけるため、この2つの属性を分析する事にした。
火属性は攻撃型、闇属性は範囲型魔法だ。
これからの方針を決定したところで練習を続けようと口を開く。
――ねぇ、なーにしてるのー?
突然、無邪気で透き通るような声が聞こえる。
視線を後ろに向けると、瞳に映ったのは手を後ろに組んだ可愛らしい少女だ。
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