第4話 オティリーVS100人のPK
「掴まれ!」
「えっ? あっ……はい! ……ええぇぇ!?」
いきなりオティリーに掴まるように言われたメイは、おろおろしながら抱きついたら地面が無くなった。
驚く事に、オティリーはメイを抱いたまま訓練場の高い壁を飛び越え、観客席に登ったのだ。
「このゲームでそんなに高く飛べたのですか?」
「しらん。それよりここは安全かもしれないが、敵が迫って来たら大声を出すんだぞ?」
「は、はあ……」
オティリーは、訓練場の戦闘フィールド以外なら殺されないと思って観客席に飛び乗ったようだ。事実、PK達は「降りて来い」とか叫んでいるので、間違いではなさそうだ。
その声に応え、オティリーは観客席から飛び降りて、PKの前で不適に笑う。
「ざっと100人ってところか。30人ってのはやったことはあるが、楽しみだ。クックックッ」
「誰が楽しませるか! 金を奪うだけでなく、お前の装備も耐久度ゼロにしてやっ……ぎゃっ!?」
男の喋り終わりを待たずに首を切断。オティリーは一太刀で死に戻りに追い込む。
「てめぇ! まだ喋っていただろうが! ぎゃああぁぁ~!!」
新たに男がいきり立って前に出て来ると、オティリーはまたしても首を切り落とした。
「学習せんヤツだな。我の間合いに無造作に入るから悪い」
「弓だ! 魔法だ! 遠距離から狙え!!」
さすがに三人も斬り捨てられたのだからPKも考え出し、弓矢と魔法の雨に
ウインドアローやファイヤーボール、サンダーアローや範囲攻撃魔法なんかも飛んで来た。
「笑止!」
そこに、オティリーのアーツ【剣気】発動。オティリーを中心に扇状の衝撃波が放たれ、全ての遠距離攻撃は吹き飛ばされる。
「嘘だろ……ぐわっ!」
呆気に取られる男は、オティリーに後ろから心臓を貫かれて死に戻り。ついでに近くにいたプレイヤーも5人ほど斬られて死に戻りとなった。
「つまらん……数が多いだけの烏合の衆か」
「囲め! 囲んで遠距離攻撃だ!!」
死地に飛び込んだオティリーは、PKに完全に囲まれてしまった。
「さっきのアーツ、たぶん後ろには使えねぇはずだ! 後ろを取ったヤツは撃ちまくれ!!」
ここでようやく連携の取れた戦闘になって来て、遠距離攻撃が常にオティリーの後ろから放たれる。
オティリーはその都度振り向いて、数が多い場合は【剣気】で吹き飛ばし、少ない場合は剣で掻き消す。
しかし、PKはいまだ80人近く残っているので、オティリーは時々被弾してしまう。
「ど、どうなってやがる……もうとっくに死んでいてもいいだろ……」
バルドルのHP設定ならば、弱い魔法でも50発も当てれば確実に死に戻りとなる。だが、オティリーの被弾はすでに100発を軽く超えているのに、一向に倒れる気配がない。
「クッ……クソ。MP切れだ……」
そんな中、MPの無くなったPKがチラホラ現れた。
「魔法を撃ちつつ距離を詰めるぞ! 接近戦の準備だ!!」
ここで作戦変更。PKは慎重に輪を小さくし、槍や剣が届く距離に近付こうとする。
「それは愚作だ! フンッ!!」
オティリーの【剣気】発動。目の前にいた前衛は、吹き飛ばされて距離が開く。それと同時に、オティリーの飛ぶ斬撃。今まで隠していたアーツ【半月】を放ち、大きな風の刃に斬り裂かれた前衛と後衛の数人は死に戻りとなった。
そして直ぐさま振り返り、後ろにいた前衛と衝突。三対一となるが、まったく力負けしないオティリーは大盾を持つ男を蹴り飛ばし、チームバランスが崩れた瞬間、二人を瞬く間に斬り殺す。
その頃には【剣気】のブレイクタイムが過ぎ、目の前のPKは吹き飛ばされて飛ぶ斬撃に晒される。
たった三度……その三度で、残りPKは半分を切り、オティリーを化け物を見る目で見る。
「「「「「理不尽姫……」」」」」
このPK達も、元々はデリングからの移住者。廃れ行くデリングから、新発売となったバルドルへすぐに移住した者は、オティリーの事を理不尽姫と重ねて恐怖している。
しかし、オティリーは待ったなし。凄まじい速度で走り回り、逃げ惑うPKを斬り捨てて行くのであった。
「ムッ……何人か逃がしてしまったな。一網打尽にしてやろうと思っていたのに失敗だ」
どうやらオティリーはわざと攻撃を受けて、PKを一人残らず死に戻りにしようと考えていたようだ。
「キャーーー!」
誰も居なくなった訓練場にただ一人立つオティリーが剣を鞘に戻したその時、悲鳴が聞こえたのであった。
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