第3話 冒険者ギルドにて


 第一の町に着くと、メイを追い払おうとしてオティリーであったが、転移装置ポータルという便利な物があると聞いてしばらく行動を共にする。

 噴水広場に移動してポータルにて登録をするその時、オティリーはメイにやり方を聞いていたので、徹底的にロールプレイを続けるオティリーを見てメイは感心していた。


「では、我は行くな」

「待ってください!」

「なんだ?」

「フレンド登録してください。フルーツタルトが美味しくできたら連絡しますので……いま、申請送りますね!」


 オティリーはロールプレイの最中なので、やり方をを知らないと言って来ると思ったメイは、先回りしてフレンド申請を送る。オティリーもフルーツタルトの為に、メイの説明を聞きながら登録をしていた。


 それから別れの挨拶をしたオティリーは歩き出したのだが……


「何故ついて来るのだ?」


 メイが金魚のフンとなって離れてくれない。


「今日やることはやったので、暇なので……」

「暇なら狩りに行くとか、やることはあるだろうに」

「だって……ゲーム内で初めてできた友達なんですも~ん。一緒にお茶とかお喋りしたいんです~」


 何やらボッチが嫌なのか、メイはオティリーの傍から離れようとしてくれない。一瞬殺そうかと頭によぎったオティリーだが、お茶をすれば帰るかと考えて、目に映ったカフェを指差す。


「あそこでどうだ?」

「う~ん……あそこはNPCのお店ですし、他に行ったほうが美味しいと思いますよ」

「なるほど……ならば、案内するといい」

「はい!」


 メイはいい返事をしたものの、メイもバルドルは初めてだったので、どこがプレイヤーのやっているお店かいまいちわからない。

 なので二人でウロウロしていたら、大きな建物にメイの目がとまった。


「あそこ、冒険者ギルドみたいですよ。カフェに行く前にちょっと覗いてみませんか?」

「覗いてどうするのだ?」

「仕事を探すんですよ。普通に狩りをするより依頼を受けたほうが稼ぎがいいじゃないですか」

「ほう。そんな金策の仕方があったのか。教えてくれて感謝する」

「いえいえ……とんでもないです」


 素直に感謝するオティリーだが、誰でも知っている事なので謙遜するメイであった。



 冒険者ギルドの扉を潜った二人は、数十人のプレイヤーに一斉に睨まれた。

 その目にメイはおろおろしていたが、オティリーは気にせず冒険者ギルドの説明を要求し、依頼ボードの前に立つ。


「依頼内容と金額が書かれているのか。しかし、どれも安いのだな」

「第一の町ですからね。もっと難易度の高い町に行けば、金額が跳ね上がるはずです」

「なるほどな。それで、どうやって受けるのだ?」

「この紙をちぎって……あれ? ロックが掛かっています」


 デリングからバルドルに移住した者は、冒険者ギルドで登録をやり直さなくてはならない。その事を知らないメイは登録カウンターに行けばなんとかなるかと思い、後ろを振り向く。

 するとメイたちは、ガラの悪い男たちに囲まれていた。


「ようよう。お前たちはデリングだろ? ここはバルドル専用だ。どうしても依頼を受けたいと言うのなら、紹介料を払えば俺様が口を利いてやるぞ」


 如何にも人を騙しそうな男から情報を得たと思ったメイは質問する。


「ご親切にありがとうございます。いくら払えばいいのですか?」

「全財産だ」

「えっ……」

「それが嫌なら半額でもいいぞ。死に戻りになっちゃうけどな~」

「「「「「ぎゃはははは」」」」」


 どうやらオティリーとメイを囲んでいたのはPKだったようだ。その男達が下品に笑うとメイはオティリーの後ろに隠れ、オティリーは剣の柄に手を掛ける。

 しかしその時……


「あんた達何やってんだい! こんなかわいい子を狙うんじゃないよ。散れ!」


 けっしてガラがいいとは言えない露出の多い女、セグメトが助けに入った。すると男達は「セグ姉に言われたんじゃしかたねぇな」とか言いながら離れて行った。


「うちの者が悪かったね。前にデリングの奴が暴れまくって被害を受けたから、うちの奴らも怒っちゃってね。デリングのプレイヤーを見付けたら誰彼かまわずからんで行くんだよ」

「い、いえ……助けてくれてありがとうございます」

「いいのいいの。困った時はお互い様。それはそうと、あいつらがあんたらの事をデリング出身だと気付いた理由……知りたくない?」

「そういえば……みんなすぐに気付いていましたね。何か違いがあるのですか?」

「あるんだな~。でも、ここじゃ人が多いから、あっちでいいかい? あいつらに聞かれると面倒だからね」

「は、はい!」


 親切に教えてくれるセグメトのあとにメイが続くので、オティリーもなんとなくついて行く。そうして隣接された訓練場に入ったらセグメトは奥に進み、一番奥の高い壁の前で止まった。


「それじゃあここで……って、教えてあげないけどね~!」

「え? どういうことですか??」

「きゃはは。まだ気付かないのかい? 後ろを見てみなよ」


 メイとオティリーが振り返ると、さっきまでギルド内にいたプレイヤーがゾロゾロと訓練場に入って来ていた。


「な、なんで……」

「そりゃ、あんな所にいたら殺せないじゃない? ここでなら、いくらでも殺せるのさ」


 どうやらメイは、町中でのPK規制を忘れていたようだ。それを見越して、規制の掛かっていない訓練場の戦闘フィールドに、セグメトは言葉巧みに二人を連れ込んだのだ。


「つまりは、貴様はあいつらの仲間と言うことか?」

「やっと気付いたみたいね。わざわざ理不尽姫の装備をオーダーメイドしてるんだ。金は有り余っているだろ? さあ、あんたたち……痛めつけてやんな!」


 オティリーの質問に答えたセグメトが指示を出した瞬間、オティリーは素早く剣を振るう。


「へっ? うそ……」

「「「「「セグ姉!?」」」」」


 あっと言う間にセグメトは首を落とされて死に戻り。とぼけた声を出しながら光の粒子となった。

 すると、PKたちから口々に非難の声が発っせられるが、オティリーは首を傾げるしかできない。


「卑怯? 汚い?? 剣の届く場所にいたあの女が悪い。そもそも、罠に嵌めることは、卑怯で汚い行いではないのか?」

「うるせぇ! 正論なんて聞いてねぇ! セグ姉の金を返せ~~~!!」


 頭に血がのぼったPK達は、オティリーの反論を聞く耳持たず。一斉に襲い掛かり、オティリーVS100人のPKとの戦いが始まるのであった。

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