第54話 夢or記憶?
「もう!姉さんったら。何やってるの」
由佳はからかうような感じで笑う。
「ご、ごめん……」
私は急いでカードを拾い上げる。
「さ、行こうよ」
由佳がぐいぐいと腕を引く。
「うん。わかってるよ」
おっとりとしている楓香、活発な由佳。
二人の後ろ姿を母が見送る。
「……あの子たち、一緒に生まれたのに真逆な性格しているのよね」
そう、楓香は由佳と双子として生まれたのだ。
楓香の方が先に生まれて姉に、由佳の方が後に生まれて妹になった。
だが、二人はいつも一緒でとても仲が良かった。
由佳が何かしたい、というと楓香は笑顔で手伝う。
楓香がこれをやりたい、というと由佳も手伝う。
母はそんな関係の二人だからこそ、安心して見守っていられる。
どういうわけか、二人はケンカらしいケンカをしたことがなかった。
図書館
由佳はお目当ての本を見つけた。
「良かった、あったよ!」
「良かったね。借りて行く?」
「うん!」
母が頼んだ本が一冊。
由佳のお目当ては二冊。
私は悩んだ。
「あと何冊借りれたっけ?」
「私のカードだけならあと七冊まで借りれるわよ」
「そっか。じゃあ、もう一冊持ってこよう!」
「良いけど、私も借りたい本があるんだからね?」
「そうだよね」
私は気になっていた歴史小説を二冊。
そして少し変わったタイトルのファンタジー小説を一冊、手に取った。
「姉さんも三冊にする?」
「合計七冊、これなら大丈夫ね」
由佳は何か言いたそうだ。
「どうしたの?」
「……ごめん、もう一冊借りたい」
「合計八冊、まあ借りられるから良いわ。けど帰りは重たいよ?」
「うん、それは大丈夫」
結局、由佳が四冊、私は三冊、母の予約一冊の八冊借りた。
やはり、八冊ともなれば重たかった。
私は、部屋で借りてきたファンタジー小説を読む。
「面白い世界観だなぁ」
カリカリ、と音がする。
愛犬、シーノがドアを開けて欲しいと合図しているのだと私はすぐに分かった。
「シーノ、どうしたの?」
リードをくわえてぴょんぴょん跳ねてくる。
「あ、お散歩か! わかったわかった、行こうか」
私はシーノを散歩に連れ出す。
リードをしっかり握りつつ、誰もいないときはシーノの好きなように歩かせる。
前に出ても、ちゃんとすぐ立ち止まって振り返ってくる。
「どうしたの?」
シーノは尻尾をフリフリしながら、また私の前を歩いては立ち止まる。
そんな姿がやはり可愛らしい。
「いつもと違うところに行くのも面白いかな?」
「ワンッ!」
シーノも賛成のようだ。
私はいつも右に曲がるところを左に曲がった。
そして、そこで挑みたいものに出会うのであった……。
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