第51話 宿泊準備

シーナさんが準備で帰った後。

レイチェルは一晩宿泊するための準備を手伝ってくれた。


「マリ、あなたは強いわね」

「そんなことないよ……。本当は……怖いから」

「それは誰でも同じよ。でも、あなたは決意を変えずに貫き通そうとした、それだけでも本当に強いと思うの」

「……ありがとう、レイチェル」


レイチェルは小さくうなずくだけだった。

ヘタな慰めを言うようなことはしたくない、と言っていたのだから。


カーキ色のリュックいっぱいに、荷物が詰まる。

一度しょってみると、ずっしりと重い……!


「歩ける?」

「重たい……!」

「少し減らそうか」


レイチェルと私は、入れた物を一度すべて出した。

「ドライヤーは……、あるのかしら?」

「どうだろう?」


その様子を見ていたロニーは大笑いする。

「ドライヤーに枕はさすがに置いていきなよ」

「この枕、寝心地が良いんだけども……」

「というか、よくリュックに入ったね?」

そう思うのもごもっともだ。


レイチェルは平ぺったくなった枕を元の形に復元しながら言う。

「圧縮袋っていう便利なものがあるでしょう?」

レイチェルは圧縮袋をたたみながら言う。

ぽっこりとまた枕はふかふかになった。


ロニーはさらに笑った。

「いやいや、圧縮してまで持って行こうとする!?確かに、かさばりやすい服なら話も分かるけど」

「眠れないのはお肌の大敵だもの」

レイチェルがフォローを入れてくれる。


「歯磨きセットと洗顔セットは必須だし、シャンプーはトライアルセットにしてカサを減らしたけど……」

「あとはどれが削れるかな?」


ロニーは一緒になってみている。

「本、持ち込む量減らしたら?」

「え?」

「一晩泊るって話なのは知ってるけど、さすがに4冊もいるかい!?」

「マリは案外読むの早いのよ」

「速読というやつ?」

「せめて半分の二冊をゆっくり読むようにしなよ」


本を二冊にする。

あとは何が削れるか……?


「あとは、そのおやつの数々かな?」

「マリがお腹空いてたらかわいそうだと思って」

「遠足じゃないんだからね!?」


ようやく、試行錯誤して荷物を減らした。

それだけで、おおよそ半日が過ぎていた。


「あとは時間が来るのを待つだけ、か」

「そうだね……」

「不安かい? なら、少し落ち着くように何か作ろうか」

「良いの?」

「うん、少しは実習も必要だからね」


三人で、少しエッセンスを触る。

オレンジとカモミール、ラベンダーを混ぜたものが、私には一番合う気がした。


「これをさ、お茶パックに入れて……」

コットンの球に調合したエッセンスを少し垂らす。


そして、少しのドライハーブと一緒に布の小さな袋に入れる。

「マリ、これも持って行って。お守りよ」

「ありがとう」


夕方

「マリ、迎えに来たわ。行きましょう」

「じゃあ、ロニー、レイチェル……、行ってきます」

「ああ、いってらっしゃい!」

「帰ってくるのを待っているわ」

私はシーナさんと研究所へ向かった。

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