第49話 私を知る研究?

「え?」

私たちの前に現れたのは……。

意外な人だった。

「シーナさん!」


「どうしたんですか!?」

レイチェルも驚いている。

ロニーだけは、何か知っているようだ。


合否の連絡だって、まだ誰にも言ってないのに。

私はどうしていいかわからず、戸惑った。

「とりあえず、入り口を塞いじゃいけないから場所を変えようか」

ロニーが冷静に言う。


ロニーに連れられて、四人で朝から空いているカフェに来た。

「みんな、何を飲む?」

「珈琲が欲しいわ」

「私も珈琲をお願いします」

「じゃあ、私も」

「じゃあ、みんな珈琲だね」


ロニーが珈琲を4つ注文する。

しばらくすると、珈琲とともにちょっとした朝食もセットになって出てきた。

「モーニングサービスは久しぶりだね」

先にモーニングを食べて、珈琲を飲みながら話をすることにした。


「そういえば、話があると言っていましたね?」

「ええ、そうよ」

シーナさんは真剣な顔でマグカップを置く。


「マリ、あなたのことだけど……」

「私の事……?」

「ええ、元の場所へ戻る為には、何とかして名前と元居た場所の情報を知る必要があるわ」

「それは……、そうでしょうね」

「協力はできると思うのだけれど、どうかしら?」


私自身を、知る……。

「多少は辛いかもしれないけど……」

「マリに何をするつもりですか?」

「過去を探れないか、という研究があるの。もし、受けてもらえればマリは自分のことを知ることもできるし、元の場所へ帰ることができるわ」


レイチェルは私を見る。

「あなたは、どうしたいの?」

「私は……、私自身を知りたいけど……、どうすればいいのか分からない……!」

「答えは急かしたくないけど……、さすがに制限時間というものもあるの」


「それはどのくらい?」

ロニーははっきりと聞く。

「アローニの時間軸とマリのいた世界の時間軸、結構差があるみたいだけど……、アローニの時間で3日以内に結論が必要ね。研究の被験にもさすがに1日かかるし。前にも言ったけれど……、マリは体と魂が分離してしまった状態。恐らく、元の世界では意識がないって状態なのよ」


自分自身が、意識がない……?

身体もどこにあるんだろう?

私はそう思うとぞわっとした。


「そういうことなら、確かに急ぐ必要はある。けど、それはマリが決めることよね」

「もちろん、このままでいいなら何もしないし、この話も忘れてもらって構わないわ。けど、もし元の世界に帰りたいって気持ちが少しでもあるのなら、受けて欲しいの」

「……1日だけ、時間をください」


私は即答することができなかった。

確かに、自分自身を知りたい。

けれど、どこかで怖いという気持ちがある。


「わかったわ。明日の午前中、答えを聞きに行く。それまでに考えておいてちょうだい」

「わかりました。」

シーナさんはそう言って、いつもの優しい表情をする。


「そういえば、もう一つ言ってなかったわね」

「え?」

「セラピスト合格、おめでとう!」


私は頬が熱くなるのを感じた。

「ありがとうございます」

シーナさんは柔らかい笑みを浮かべた。


家に帰るなり、レイチェルはロニーに問いただす。

「ロニー、あなたは知っていたの?」

「……半分程度はね。だから、朝登録所で待ち合わせて話をしよう、確かにそれは言ったよ」

「……そう。でもね、マリの気持ちも考えてあげて!」

レイチェルはそれだけ言うと、洗濯に取り掛かった。

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