第47話 試験の後

「ただいま」

私はロニーの家に帰宅した。


「お帰り! マリ、待っていたよ!」

「どうだった? 自分の実力は出せた?」

レイチェルもロニーもぐいぐいと聞いてくる。


「う、うん、まあ、大丈夫だと思うよ……」

私は二人の圧に押されて、あいまいな感じで応えた。

「ちゃんと言われた通り、問題に答えを書き写してきたから、一緒に答え合わせしない?」

私は思い切って提案する。


「良いね……! ちゃんと頼んだことをしてくれたのは嬉しいよ」

「ロニー、近い!」

ロニーがぐいぐい寄ってくる。

目をらんらんと輝かせて。


「早速答え合わせをしましょう」

レイチェルがロニーを引っ張って先にキッチンにいく。

私は苦笑いしながら後に続いた。


キッチンでレイチェルが珈琲を淹れてくれていた。

「マリ、間に座って……、ロニー、近いわよ!」

レイチェルが厳しい声で注意する。

よほど結果が気になって仕方ないらしい。


「コーヒーでも飲みながら、ゆっくり始めましょう」

レイチェルが入れてくれた珈琲を口にしながら、三人でゆっくり答え合わせを始める。


ロニーは問題を食い入るように見つめる。

「さてと、どうだろうね……」

「自信は……、正直そんなにない」

「え!?」

「けど、頑張って来たよ。これだけは胸張って言うけども」


私はロニーにはっきりと言った。

レイチェルはうんうんと頷いた。


「そうじゃなかったら、答え合わせのために回答用紙に書いたことを書き写してくるなんてしないわよ」

「絶対大丈夫、そう言えないのはごめん……。でも、それは回答を見てからにしてほしい……かな?」

「もちろん、そのつもりだよ」


ロニーは問題を触る時に確かに鋭い表情をした。

合否によって、私だってやることが大幅に変わるし、立場上は事実上の師匠だから当然だろう。


ぺラリ、ペラリ……

ロニーが問題をめくっていく。

私とレイチェルは固唾を飲んで見守った。


ロニーの表情はどことなく明るい。

「うん、これなら申請の手続きの方も進めると良いね」

「え?」

「充分、合格圏内だよ。明日の朝、正式に書類が届くだろうしさ」

「そういえば、なんでそんなに早く結果が届くの!?」

「? 当たり前だろう?」

「そういう物なの!?」


私は戸惑うしかなかった。

「採点するのはあっという間なんだ。セラピストが一人でも欲しい、そう言ってるんだし。合否を早く知らせて、落ちた人に早く再チャレンジの期間を与える、理にかなっているだろう?」

「そ、それはまあ、確かに」


採点するスタッフはとても多いようだ。

そこまでセラピストが枯渇しているのかは疑問だが。


「それはそれとして。間違ってるところは復習しておこうね」

「え? 合格圏内って……」

「何言ってるの! 万が一ってこともあるからよ。私にも問題を見せて」

レイチェルがロニーから問題を受け取る。


「ちょっと弱いのは法律の問題ね……、まあ、これはほとんどの人が不得手だから仕方ないわね。けど、全体的には合格圏内よ」

「そうなんだね、ありがとう」

「一応、法律関係を重点的に復習しましょう。この問題を使って勉強すればいいから」

「やっぱりそうなのね……」

私は試験の日の夜に、もう一度試験勉強をすることとなったのである……。


翌朝。

ついに、封筒が届いた……!

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