第46話 試験後半
一つだけ、思ったことがあった。
実技の終了と共に、回答用紙を集められたことだった。
あれはきっと、筆記に集中できるよう配慮をされたものなのだろうな。
私はひそかにそう思った。
「これより、休憩をはさんで筆記試験とさせていただきます。なお、筆記試験が始まり次第退出しますと再入室はできませんので、お手洗いなどは今のうちに済ませておきますよう、ご案内申し上げます」
私を含め、部屋を出た受験者は少なくない。
やはりお手洗いは混んでいた。
「ま、まあ、そうだろうな……」
苦笑いしながら並んで待つ。
試験再開までまだ少し余裕がある。
用を済ませて部屋に戻ると、私は再び本を読み返した。
部屋にチャイムが鳴り響く。
「これより、筆記の問題及び回答用紙を配布させていただきます。本やノートをお出しの方は速やかにおしまいください。」
私はすぐに本を鞄にしまった。
全員が座り、本やノートをしまったのを代表者が確認する。
すぐさま、スーツ姿の試験官が問題と解答用紙を机の上に置いていく。
「注意事項を先に申し上げます。注意事項の説明が終わるまで、問題及び回答用紙には手を付けないでください。試験の合否は翌朝配送予定となります。試験時間は120分といたしますが、回答終了後、希望者は退室していただいても構いません。先だって申し上げましたが、改めてご案内いたします。筆記試験が始まり次第、退出されますと再入室はできませんので、ご注意のほどよろしくお願い申しあげます。また、問題用紙は持ち帰りいただいて結構です。それでは、はじめ!」
バッ、と部屋中に音が響く。
全員が一斉に問題と解答用紙をひっくり返し、問題を読んで回答を始めていく。
筆記は、穴埋め問題が多い。
表になっている問題の中で、当てはまる言葉を語群から選ぶ形式。
〇×式問題ももちろんある。
そのほかにも、四択問題という形式がほとんどを占めていた。
そして、いくつか記述式の問題もある。
ただ、ジャンルは様々だから、勘だけで突破はとてつもなく難しいと私は思った。
それもそうだ、よく考えたらこれは国家試験だったというのを思い出す。
試験中だと言うのにそんなことを考えていた。
私は、思っていた以上にすらすらと問題が解けた。
特に、エッセンスの材料である植物のプロフィールに関しては。
ラベンダーは「〇〇〇科」である。
私の出した答えは「シソ」だった。
また、ローズマリーのエピソードは?という問題は記述式だった。
私は回答欄にこう書いた。
【とある国の女王がローズマリーを漬けた水で美を取り戻したため、若返りの象徴】と。
これは、ロニーが熱弁していたからよく覚えていた。
いったい何度口を酸っぱくして言われただろう。
横でレイチェルが苦笑いして困っていたことを不意に思い出した。
『ロニーはこの話だけは特に詳しいのよ』と言っていたことを思い出す。
私は一しきり問題を解き終える。
そして、見直しをした。
なぜだろうか?
サイプレスの科を間違えていた。
ヒノキ科なのに、なぜスギ科と書いていたのか……。
私はそこをしっかり訂正した。
一問でも多く点を取っておきたいからだ。
そして、ロニーに言われた通りのことをする。
それは、問題に解答を書き写すということだった。
丸を打ったり、罰を打ったり。
記号を書き写したり、記述も書き写したり。
すっかりと丸々転記した。
試験の時間は後1時間。
半分程度の時間で回答ができていた。
私はもう一度問題に転記した分と、見直しをした。
そして、試験会場を後にした。
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