第44.5話【幕間】変化
現代・日本
事故から二日経ち……。
「あら? ……この子ったら、表情が」
意識のない彼女だが、よく見ると顔は少しほころんでいる。
「幸せな夢でも見ているのかしら……。でも、生きようとしているのね」
母はスッと彼女の頭を撫でる。
その手に、ぽたりと涙がこぼれた。
私は廊下で母を待っていた。
「母さん、姉さんは今日も意識がない状態なの?」
「ええ……。でもね、一つ進展はあったわ。あの子、何か嬉しそうなことがあったかのような顔をしていたのよ」
「え?」
「いらっしゃい」
私は母と一緒に病室に入る。
「ほんとだ……。こっちの気も知らないで、姉さんったら……。」
私は泣きだしそうになるのをグッと抑える。
母の方が、辛いと思うから。
「由佳、泣いて良いのよ」
母さんは優しく背を撫でてくれた。
堰を切ったかのように、涙が止まらない。
「よく頑張っているわ、この子も」
母は優しく言う。
一しきり泣いて、ようやく気持ちが落ち着いた。
私は姉の手を握った。
「またいろんなところへ一緒に出掛けたいから、早く目を覚ましてね」
なぜだか、頷いてくれたような気がした。
きっと、近いうちに目を覚ましてくれる。
私の中で、なぜかそう確信できていた。
一応、姉の着替えを置いておく。
いつ目を覚ましてもいいように。
私は家に戻って、シーノに抱き着いた。
「ワンッ!」
びっくりした、と言わんばかりのシーノを撫でて落ち着かせる。
「姉さん、早く帰ってこられるようになると良いね」
シーノは尻尾を振って答えてくれた。
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