第44話 試験当日
ロニーは日に日に、熱意のある指導をしてくるようになった。
「ここの問題、気をつけないと間違いやすいよ!」
「なるほど……」
ロニーはテキストをぱらっとめくる。
「ユーカリとティーツリーは同じ科だった?」
「同じフトモモ科だよね?」
「正解。匂いも似ているから気を付けるように」
「はーい」
「ユーカリとティーツリーは同時に実技で出たことはないわよ。」
「そうだったの?」
「あまりにも匂いが似ているから、同じ設問の中で出ることはないわ」
実技は、匂いを嗅いで4つの選択肢から一つ答えを選ぶ形式だ。
そこに、同じような香りの名前は並ばない。
ただ、次の問題で出ることはあるらしい。
「落ち着いて回答すれば大丈夫よ」
「瓶には番号が振ってあるから、そこは見間違えないように」
「はーい」
覚えることは、まだたくさんある。
たまに、頭から煙が出てきそうな感覚に襲われる……。
「今日はこの問題で終わろうか」
「うん……」
「正直、正答率はかなり高いから、大抵は大丈夫かな?って僕は思うよ」
「ありがとう、ロニー」
私は今日最後の問題に取り掛かる。
少し時間はかかったけれども……。
「できた……。採点お願いします」
「うん、預かるよ」
ロニーは採点を終えて、顔を上げる。
「はい。今回も良い感じだよ」
「ありがとう」
問題用紙を見ると、デカデカと花丸が書かれている。
満点でした、という意味らしい。
いよいよ、試験当日。
私はいつもより朝早く目を覚ました。
「いよいよ試験かぁ……」
「マリ、起きてる?」
「うん、おはよう」
レイチェルは、朝食にサンドイッチを作ってくれていた。
サラダと珈琲もある。
「今日は落ち着いていってらっしゃい」
「ありがとう」
私は、時間になるまで復習をする。
ロニーも一緒になって、本をのぞき込む。
「こことこれは間違いやすいから、気を付けるんだよ」
「うん」
私は、予定の時間より少し早く家を出ることにした。
「行ってらっしゃい!」
「頑張っておいで」
「ありがとう、行ってきます!」
私はそう言って家を飛び出した。
試験会場までは遠くはない。
祭典の会場だったから、迷うこともなかった。
会場に着くと、妙なほど緊張してくる。
ざわざわとしているし、多くの人がいる。
やはり、セラピストを目指す人は多いようだ。
「き……緊張する……」
私は少し肩を縮こまらせていた。
「受験される方は、受験票をお持ちの上でこちらにお入りください」
スタッフさんが会場内に呼びかける。
「……よし、行こう!」
私は受験票を手に、会場内へ足を踏み入れた。
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