第43話 ティータイム

「そうだ、お茶しに行こう!」

ロニーは明るく言った。

そうだ、レイチェルのお祝いにカフェへ行こう、というのをこっそり打ち合わせていたのを今思い出した。


「そうだね。一昨日の祭典の時、良いお店見つけたんだ! 一緒に行きたいなぁ」

「え? 良いなぁ。私もそこ行きたいわ」

やはりレイチェルはそこに行きたがる。

私は笑顔で頷いた。


私たちは、祭典の時に言ったカフェに向かった。

「紅茶の方が専門って感じのカフェだけど……、良かった?」

「ええ、もちろんよ」

レイチェルは嬉しそうに言った。

「僕は珈琲も紅茶も大好きだからね。楽しみだよ」

ロニーも嬉しそうだ。


話している間に、カフェに着く。

「いらっしゃいませ……、おや、あなたは先日の」

「こんにちは。また来ちゃいました」

「ありがとうございます」

店員さんも笑顔で返してくれる。


「まあ、とってもおしゃれね」

「紅茶の専門店、そういうお店は初めて来たよ。店員さん、おすすめはありますか?」

「そうですね……、普段から紅茶を飲まれますか?」

「ええ、紅茶と珈琲半々って感じですから」


「でしたら、香りにこだわるのであればアールグレイやダージリンのセカンドフラッシュがおすすめです。」

「じゃあ、僕はアールグレイにしよう。レイチェルとマリはどうする?」

「私は……、そうねぇ……、ダージリンのセカンドフラッシュにしようかしら。」

「じゃあ、私はヌワラ・エリヤにします」


「かしこまりました。お好きな席で座ってお待ちください」

先にお会計を済ませて、三人でカウンター席に座る。

やはり、お店の中も紅茶の良い香りがする。


「とてもおしゃれなお店ね。」

「ミーシャが連れてきてくれたの」

「ミーシャは特にこういった情報には詳しいからね」

ロニーは笑って言った。


「お待たせいたしました。あと、こちら本日サービスしております」

「え?」

「実は今日、開店周年記念でして」

店員さんは笑って言った。

テーブルにポットが置かれる。

このお店は、紅茶はポットで提供されるのである。

最初の一杯は店員さんが注いでくれた。


とても美味しそうなケーキと共に、紅茶を味わう。

三人とも違う味の紅茶だから、一杯飲んで少しずつお互いのカップに注いでみる。

「マリが飲んでいるヌワラ・エリヤは上品な味がするわね。美味しいわ」

「ダージリンのセカンドフラッシュ、さすがに香りが芳醇で良いね……」

「アールグレイはやっぱり柑橘由来のいい香りがするね」


「そうそう、アールグレイに香りをつけているのは『ベルガモット』なんだよ」

「そうね。セラピーにも使うの。意外なところかもしれないわね」

「そういえば、どこかで聞いたかもしれない……。こんな日常にも繋がっているのは驚いたかも」


「あとね、レイチェル。セラピスト昇級おめでとう!」

「尊敬するなぁ。本当、おめでとう!」

「ロニー、マリ、ありがとう。これからも頑張るわ!」

レイチェルは幸せそうに笑う。

「ああ、期待しているよ」


紅茶のカフェで、ゆったりと。

私たちは楽しいひと時を過ごした。


夕方には、三人でロニーの家に戻る。

一晩、あれから考えてみた。

よく知っている人に会いたいか、とか、何をしていたか知りたくないか、とか。

やはり知りたいけど……、それでも私はしばらくアローニに滞在したいと結論付けた。

試験をやってみたい、と直感したのは、多分間違っていないからだ。

試験まではあとわずか……。

私は結論をその日まで封じることにした。

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