第42話 私はどうする……?
翌日
シーナさんは約束通り午前中にやってきた。
「いらっしゃい、マダム」
やはり、ロニーは仕事の時はキリっとしている。
「今日はこの前と同じエアフレッシュナーをお願いしに来たの」
「そうでしたか。レシピも全く同じですか?」
「ええ。それでお願いしたいの」
「かしこまりました。でしたら、ゲストルームでお待ちください。すぐにご用意しましょう」
ロニーはそう言って、仕事の部屋へと入っていく。
シーナさんとゲストルームに行くと、シーナさんは真剣な顔で言った。
「マリ、祭典の時にまた後日話すと言っていたことがあったわよね?」
「はい」
「あの後、調べてみたの。いくつかの前例から推測するとね……、交通事故がきっかけで精神体、つまりは魂だけがアローニに来てしまった状態らしいのよ」
「そんなこと……、あるんですか?」
「滅多にないことね」
でも、どうしてアローニなんだろう?
私は他の疑問が浮かぶ。
「恐らくだけどね、アローニに着いたのは精神的な何かが結びついてここに来たんだと私は思うの」
「精神的な……、何か?」
「ええ。例えば、アロマに興味があった、とかでしょうね。アローニは比率的に、異世界からここに来るとなるとアロマに興味がある! とか、良いにおいが好き! とかそういう人が多い傾向があるわ」
もしかしたら……?
私はそう思って記憶を探ろうとする。
「思い当たる節がある?」
「実はまだ……、記憶があいまいで……」
「そう……。でも、その可能性はかなり高いと思うわ」
「お待たせしました」
ロニーがそう言って、ボトルを持ってくる。
「以前と同じ香りのエアフレッシュナーですよ」
「ありがとう、ロニー。」
「マリも今度、依頼があったら一緒に部屋においで。現場をまた見せてあげるから」
「あら? マリも勉強をしているの?」
「ええ、そうです。彼女は素質があると思いますよ。成績が良くて」
シーナさんの頭で、何かがつながったようだ。
「マリ、恐らくだけど……、セラピストのお勉強をしていると思うわ。あなたが元居た世界で。名前は違うかもしれないけれど」
「そうなのかな……?」
私にその記憶がないから、はっきりとは言えない。
「そうだね、可能性は高いと思う。いきなりセラピストの問題を満点でクリアする、これは相当難しいことだよ。覚えることも凄まじく多いから……」
「そうだったの?」
「うん、分厚い本を丸々暗記するくらいの感覚かな……。まあ、実際はその一部しかもちろん出題されないけど」
「そうだったんだ……」
私は、思わぬことに驚いていた。
あまり自信はなかったけど、少し自信をもっていいような気がしてきた。
「マリ、あなたがもし元の世界に戻りたいというのなら手伝うからいつでも言ってちょうだい」
「ありがとうございます、シーナさん」
シーナさんが帰った後。
私はこの後本当にどうしたいのか、と悩んだ。
「僕はマリが決めたことに従うよ。ここにずっといたいと言うならいてもらえたら嬉しいし、帰りたいと言うならもちろん、寂しくはなるけど引き留めることはできないし」
「そうね。ロニーの言う通りよ。私たちは何かするということはできない。けど、マリの気持ちを応援すること、それならできるから」
ロニーとレイチェルの言葉が背を押してくれる。
「私はね……」
一呼吸置く。
自分でもまだ悩んでいるのだから。
それでも、一つだけ決めたことがある!
「私は、セラピストの勉強を続けたいって事だけは決めてるの。ここにいるかどうか、それは試験の後に決めて良いかな?」
「もちろんさ」
ロニーもレイチェルも笑って頷いた。
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