第24話 束の間のお茶会

そうだ、あのふりかけ……! 

あれがきっと、ラベンダーを食べ物の香りと認識させるきっかけになったものだ! 

だが、そのふりかけの名前がなぜか思い出せない。


そして、なぜ双子という言葉で頭がチクチクと痛んだのか……。

もしかしたら、私自身か友人か、親か……、身近な人が双子だったのか? 

そんな風には思えてきた。

だが、私はまだなぜかは知らなかった。


「次のコンテストの準備の為、少しお時間をいただきます」

アナウンサーはそう言っていた。


「マリ、温かい飲み物でも飲みにいかない? 」

「ええ、ぜひ」

私は笑って答えた。


やはり、コンテストの合間で様々な香りを嗅いだ為だろうか? 

珈琲の香りで鼻を休ませたい人も多いらしい。

どこの珈琲の屋台もお店も混雑していた。


「毎年、珈琲の屋台やお店は混むのよ。良かったら、紅茶にする? 」

「ええ、そうしましょう」

私とミーシャは紅茶のお店に来た。

珈琲の方がやはり人気のようで、紅茶はさほど並ばず飲むことができた。


以前、ロニーが良いことを教えてくれた。

紅茶や緑茶のカテキンが、鼻を休ませるのにはとてもいいと言っていたのだ。

僕の場合はね、とも言ってはいたが。


「紅茶も、茶葉がいろんなものがあるのね……」

「飲みやすいのはどれだろう……? 」

「それでしたら、キャンディなどいかがでしょう? さっぱりとしていて飲みやすい紅茶になりますよ」

「じゃあ、私はそれで。ミーシャはどうする? 」

「ヌワラ・エリヤ、ってお茶も気になるわね……」

「ヌワラ・エリヤは上品な味わいが特徴の紅茶ですよ」

「だったら、私はそれにするわ」

「では、席で座ってお待ちください。お持ちしますので」

会計を先に置いて、お店の奥に進んだ。


ミーシャと私は、窓際の席に座った。

お茶菓子も頼んでおくべきだったかな? と少し悩んだ。


「お待たせいたしました。今日は祭典ですから、お茶菓子もサービスしておりますよ」

最初の一杯は、店員さんが注いでくれる。

その後、二つのポッドがテーブルに置かれた。

だが、二杯目からは自分でカップに注いで飲むスタイルだったようだ。


「良い香りがするわ」

ミーシャは紅茶の香りに微笑む。

サービスとして置いて行かれたお茶菓子は、シフォンケーキだった。

結構大きく切ってあり、クリームやフルーツも添えてある。


「祭典の日って、お茶菓子もサービスしてくれるものなの? 」

「お店によるわね。ここはすごくサービスが良いわ。ここまで良いサービスをしてくれたお店は初めてよ」

「そうだったのね……」


一口、シフォンケーキを口に運ぶ。

「美味しい……! これ、紅茶とよく合う! 」

「まあ、本当に! 今度、レイチェルにも教えてあげたいわね」

「きっと喜ぶよ、レイチェルも甘いもの好きだし」

私たちは、束の間のティータイムを楽しんだ。


二杯目を飲もうとした時。

「ねえ、ちょっとヌワラ・エリヤも飲んでみない? 」

「わぁ! ありがとう! じゃあ、お返しにキャンディも飲んでみて」

私はミーシャが注いでくれたヌワラ・エリヤを飲んだ。

ミーシャも私が注いだキャンディを飲んだ。


「上品な香り……! すごく美味しいね。」

「キャンディは本当にさっぱりしていて、さらにシフォンケーキにも合って、本当素敵ね! 」

レイチェルは、どんな紅茶を好むだろう? 

私は少し考えた。

きっと、良い香りの物を好むんだろうな……。

そんな気がして、招待するのが楽しみになった。

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