第17話 徹夜した朝

夕方からも、ちらちらと粉雪が舞う。

「粉雪が舞ってるね……。また積もるかな? 」

「今日の雪の分を考えたら、もう少しは積もりそうね」

レイチェルは苦笑いする。

「でも、私は粉雪を見ているのは好きよ。キレイだし」

レイチェルは優しい表情をして言った。


「粉雪かー……。もっとドーンと降ってくれると良いんだけどさ」

「また雪遊びするつもり? 」

レイチェルの眼は怖い。

それもそのはずだ。

ロニーの服は雪遊びの影響で汚れていたので、洗濯物が増えたのだから。


「それにしても、ロニーって本当はすごいセラピスト……なんだよね? 」

「そうよ」

「ギャップってやつ? 僕は素の感性そのもので生きているんだけどな? 」

「ギャップは凄いからね……、私もたまに困るわ」

レイチェルも困り顔だ。


夜、眠る前にレイチェルがホットミルクを作ってくれた。

「これで少し温まった方が良いわ。今日もうんと冷えているから」

「ありがとう、レイチェル」

カップを受け取って、ホットミルクを少し飲む。

レイチェルはあれでもない、これでもないと言いながらペンを走らせていた。

「大変そうだね……、何か手伝える? 」

「ううん、大丈夫よ。ありがとう、マリ」


一体何のことを考えているんだろう?

私はレイチェルに聞こうとしても、真剣な表情に何も言えなくなった。


「飲み終わったら、カップはそこに置いててくれればいいわ。私も珈琲を飲むから、一緒に片づけておくから」

「いいの? でも、私の分はやっておこうかなって思ったけど……」

「ええ。いいから置いていって。」


私はレイチェルに珈琲を淹れた。

「ありがとう、助かるわ」

「あんまり無理し過ぎちゃダメだよ」

「ええ。ありがとう。今日の分、キリが付いたら寝るから」


私はキッチンを後にした。

レイチェルのあんな真剣な表情、初めて見たな、と改めて思った。


部屋のベッドに横たわると、私はすぐに眠っていた。

ミルクで暖まっていたから、寝つきが相当良かったようだ。


翌朝、起きてみるとレイチェルはキッチンで机に突っ伏したまま眠っていた。

「風邪引いちゃったら大変だ! 」

私は部屋からブランケットを持ってきて、レイチェルの肩にかける。

「うぅん……」

レイチェルは眠そうな声を上げて顔を起こした。

「おはよう、レイチェル」

「あ……、マリ、おはよう……」


眠たそうなレイチェルに、私は白湯を渡す。

「ありがとう、目が覚めたわ。朝食後、少し休むわね」

「うん。ちょっとは休んで。掃除くらいなら私だけでもなんとかなりそうだから! 」

「ありがとう、マリ。その言葉だけでも大分気が楽になるわ」

レイチェルは笑って言った。


ロニーもキッチンにやってくる。

「おはよう」

「あ、ロニーおはよう。すぐ朝ごはん作るわ」

「ああ、良いよ。レイチェル、昨日ずっとここにいただろう? 」

「え? あ、そういえば……うたた寝しちゃったみたい……」

「あまり無理はするべきじゃないよ。今は一番大事な時期だろう? だから、今日は僕が用意するから、ゆっくり休むこと! 」

「え? ロニーって、料理できるんだっけ……? 」

「さすがに、レトルトくらいは温められるよ」

「さすがにそれは大抵の人ができるからね? 」

レイチェルの一言に、私も苦笑いするしかない。


ロニーは、てきぱきとレトルト食品を温めて出してくれる。

「こんなとこかな」

「そうね、ありがとう」

「たまには僕だって、用意くらいするさ」

レイチェルがお礼を言って、ロニーは笑った。

「片付けは私がするから、レイチェルはゆっくり休んでね」

「ありがとう、マリ」

私は照れ臭くなって、笑ってごまかした。


***

新年あけましておめでとうございます。

本年も可能な限り毎日更新のスタイルを貫いていきたいと思います。

よろしくお願いいたします。

           2022.1.1 金森 怜香 

***

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