第15話 星と雪と
レイチェルが指さした方を見ると、シュンッと尾を引きながら星が流れていた。
それも、次から次にとめどなく。
「すごくキレイ! 」
「流れ星をじっくり見る、いつぶりだろうな……」
ロニーは楽しそうに目を細める。
空気が澄んでいるからだろうか、とても星が美しく見えた。
「寒いから、後で温かいお茶を飲んで体を温めようか」
「さんせーい……」
私は苦笑いしながらロニーの言葉に同意した。
風が吹きつけると、どうしても凍えるように寒いのだから。
レイチェルはブランケット片手に、凍えながらも無言でじっと星を眺め続けていた。
「集中して見ているね。レイチェルは天体観測が大好きなんだよ」
「みたいだね」
ロニーと私はその様子を見守った。
ようやく、レイチェルも腰を上げる。
「今日はすごかったわね」
「そうだね。すっかり冷えちゃったし……、温かいお茶を飲んで休もう、ってマリと話していたんだ。レイチェルも体を温めてから休んだ方が良いよ」
「そうね。温かいお茶を淹れましょう」
レイチェルは先にキッチンへ移動して、お茶を用意してくれた。
ロニーは思い出したように、空を見上げる。
「どうしたの? 」
「いや……、なんでもないよ」
「そう言われると、気になるなぁ」
「……本当に聞くのかい? 」
「え……、なにその言い方……。気になるから聞くけど」
ロニーは真剣な顔をした。
そして、口を開いた。
「明日、雪だわ」
「えっ!? 」
思わぬ言葉に、私は戸惑いを隠せない。
なぜに雪!?
「雪が降るだろう? 積もるとしたら……雪遊びしなきゃいけなくなるだろう? 」
「しなくてもいいんじゃないの? 」
「いやいや、それじゃあ、降り積もった雪に失礼だろう! 」
「どんな理屈よ……」
私はロニーの真剣な表情が瞬時に目を輝かせる子供のようになっていることに気付いた。
「雪遊びをすると、仕事が溜まるだろう……? だから大変なんだよ」
「いや、だから雪遊びしなかったら解決する話じゃない! あ……」
「降って来たね、雪が。今夜のうちにどんと降るだろうね。いつもアローニではそうだから」
「そうなんだ……」
ちらちら舞っている雪を見ても、懐かしいとかそういった気分にはならなかった。
なぜだろう?
私はただそれを考えてみるだけだった……。
「ちょっと! お茶が冷めちゃうわよ! 」
レイチェルの声に、私たちは慌ててキッチンに急ぐ。
お茶はぬるくなっていたけど、美味しかった。
私は楽しい気分でベッドに横になる。
明日は一体どうなっているのだろう?
そう考えてみると、とても楽しかった。
―――白い霧のようなものが脳裏をよぎる。
まただ、またいつものように。
見える物は、静かな町の中。
アローニとは全然違う、どこかの町。
そこでもちらちらと雪が舞う。
小さな二人の女の子が、それを見てはしゃいでいた。
『早く寝なさい』
女の人の声に、女の子たちが返事をしてベッドに潜る。
恐らく、何気ない日常……。
なぜ、いつも霞がかったり霧が覆うようになったりしているんだろう?
これは記憶に関わることなんだろうか?
私は不思議に思った。
どうして……。
声を出そうとしても、声が出ない。
私は、その様子を見守ることしかできなかった。
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